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日本漢方連盟 通販禁止97%が「困る」、医薬品通販規制の問題点浮き彫りに

2012年 6月 1日 16:22

 健康の維持に漢方薬の郵送販売は不可欠。全国の漢方薬局などで組織する日本漢方連盟が2012年1月から3月にかけて行った「漢方・和漢薬郵送購入1000人アンケート」調査でこんな結果が出た。同調査によると、郵送(通販)で漢方薬を購入している顧客の約3割が65才以上の高齢者。1、2人世帯が多く、身体的な理由などで来店が難しいことから通販を利用しているケースが多い。また、通販の禁止による健康維持への不安の回答が約7割、通販がなくなると困るとする回答が97%を占めるなど、漢方薬利用者にとって通販が不可欠な存在であることが浮き彫りとなった。

 日本漢方連盟は、約350の漢方薬局とメーカーなどで構成する社団法人で、2009年9月に設立(前身の団体は同年2月設立)した。今回の調査では、全国の漢方薬局を通じ、郵送で漢方薬を購入している顧客に約4000枚のアンケート用紙を配布。1414件(8~96歳)の有効回答を得た。

 まず、漢方利用者の世帯状況は、半数以上が1人ないしは2人暮らしで、このうち1人暮らしが18%。また、世帯全員が65才以上の割合が27%となっており、65歳以上の1、2人世帯の利用者が少なくない。

 漢方薬の大きな特徴は、専門家がそれぞれの顧客の症状などに応じたものを提供すること。このため1度は顧客が来店することが基本で、相談時間は30分以上が26%、10~30分を加えると67%に達し、かなり細かな対応をしていることが分かる。これは一般薬局やドラッグストアとの大きな違いだろう。

 一方、通販を利用する理由についてみると、遠方、歩いて行けるところに薬局がないなど地理的理由によるものが最も多く45%。これに多忙などの時間的理由の30%、歩行困難・足腰の痛みなどの身体的理由の25%が続く。また、通販の利用年数では、5年以上が49%で全体のほぼ半数。このうち10年以上の利用は30%を占め、長期間、継続的に利用される傾向が強く出た。

 自分の症状や体調に合わせて出される漢方薬は他の店舗では購入できないもの。体調などの変化があった場合に、薬歴や病歴などの記録を持つ専門家に電話で相談できる安心感などもあり、遠方の顧客や高齢顧客の通販ニーズは強い。

 同調査でも、電話と郵送による通販を満足とする回答は96%と極めて高く、逆に通販がなくなると困るという回答が97%。その理由としては、漢方薬の服用が途切れ、健康維持ができなくなる(68・5%)、必要な時に直接薬局まで行くことができない(65・3%)など。つまり、今回の医薬品通販規制は、安全性の確保をうたいながら、高齢者など漢方薬利用者の健康維持に不安を抱かせているわけだ。

 現場レベルでも、規制の影響が出ているようだ。日本漢方薬連盟の事務局を努める漢方平和堂薬局の大石雅子氏(連盟理事)によると、新規顧客の割以上は既存顧客の紹介。来店してもらうのが基本で、郵便等による通販は「サービスでやっているもの」(大石氏)だという。現状、全体の半数近くの顧客が通販を利用しているが、通販ができなくなった09年6月以降の新規顧客から、規制導入以前の既存顧客には郵送で届けているのに、なぜ自分には郵送してくれないのかと言われるほか、体調が悪くなった高齢の顧客が遠方からタクシーで来店することもあるなど、規制の矛盾に伴う混乱も生じているという。

 また、連盟に加盟する漢方薬局でも、通販規制により売り上げが減少。中には「薬局を閉めてしまうケースもある」(同)など、顧客にとって代替のきかない医薬品の入手手段が断ち切られるケースも出ているようだ。

 日本漢方連盟では今回の調査結果を厚労省にも提出している。同調査は、医薬品の特性に応じた情報提供や販売方法、利用実態などを十分に検討しないまま、一律に第1、2類医薬品の取り扱いを制限した医薬品通販・ネット販売規制の問題点を改めて浮き彫りにしたものと言えそうだ。

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