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富士フイルム、19年3月期の化粧品・健食売上高1000億円へ――「現実味ない」との声も

2012年 7月19日 11:55

2men.JPG 富士フイルムが化粧品・健康食品の売上高を、6年後の2019年3月期に1000億円とする計画を打ち出した。同社では両分野の商品を扱うライフサイエンス事業の2012年3月期売上高を開示していないが、「(1000億円は)現在の売上高の5倍にあたる」(ライフサイエンス事業部ヘルスケア国内営業グループ長の山下洋二郎氏=写真)としており、目標がかなり高い数字であることが分かる。果たして達成は可能なのだろうか。

 同社によれば、化粧品と健康食品の販売比率は「化粧品が2で健食が1」(山下氏)だという。2012年3月期のライフサイエンス事業売上高が約200億円とすれば、化粧品は135億円前後、健康食品は65億円前後ということになる。さらにこのうち、化粧品に関しては通販と店舗への卸の販売比率が2(通販)対1(卸)、健食は大半が通販での売り上げだという。

 同社自身も「チャレンジングな数字」(山下氏)と認める1000億円という売上高だが、柱の一つとなるのが海外展開だ。すでに中国などのアジア圏から販売を開始、ヨーロッパでもフランス・イギリス・ドイツに進出を果たしている。写真フィルム事業で培った知名度を生かしながら拡大し、海外比率を20~30%まで高める狙いだ。

 とはいえ、1000億円を達成するには、国内売上高も現在の3~4倍ほど伸ばさなければならないわけだ。現在、90億円前後とみられる通販での化粧品売上高も、300~400億円近くまで伸びることになる。同社では「独自性のある商品を投入することで売り上げを高めたい」(山下氏)と話す。

 6年間で通販だけでも数百億円を上積みするという計画に現実性はあるのだろうか。ある大手化粧品通販企業の幹部は「通販でそれだけ売るとなると、顧客リストはディーエイチシー並みの300万人は必要になる。6年間で今の3倍以上に増やすのは難しいだろう」と指摘する。その上で「卸販売に注力するというやり方もあるが、その場合は値崩れが問題になる」とする。

 別の大手化粧品企業幹部は「国内マーケットが縮小する中、大手メーカーからかなりシェアを奪わないと無理な売上高だが、現実味が感じられない」と話す。また、富士フイルムによれば、化粧品事業の売上高は2011年3月期に100億円を超えているため、前期も30億円ほど上積みした計算になるが、この幹部は「消費者のアスタリフトシリーズの購買率が落ちているという調査会社のデータもある。宣伝を以前より控えている状況で本当に伸びているのか」と疑問を示す。

 同社ではこれまで、有名タレントを起用したテレビCMを大々的に放映するなど、広告宣伝費を大量に投入してきた。収益面はすべて非開示としているが、「CMを大量に流していた時期は確実に赤字が出ていたはず」(先の大手化粧品会社幹部)との見方もある。

 短期間で売り上げを伸ばすとなれば、今後はさらなる投資が必要になると思われるが、果たして回収できる時期はいつになるのか。事業部の売上高が1000億円に到達した段階の収支状況についても、同社では「公表を差し控えたい」(山下氏)と口は重い。

 20~30代女性をターゲットとしたスキンケア化粧品のブランド「ルナメア」シリーズを新たに立ち上げるなど、ラインアップ拡充を進める同社だが、思惑通りに売り上げを拡大できるのか。道のりは険しそうだ。
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