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同社は、大地を守る会と組んで展開してきた「三越くらしの御用達便」を拡大し、「三越伊勢丹エムアイデリ」としてネットスーパー市場に参入。取り扱い品目を1・5倍に、配送エリアも一部地域を除く関東全域に広げて初年度(2012年3月期)から12億円の増収を狙ったものの、大幅な増収にはつながらなかった。
計画とかい離してしまった要因は、既存客の離脱と、想定よりも顧客の買い物頻度が低いことが影響している。
新サービスの開始時に電話がかかりにくいなど混乱したことで一部の既存客が離れたほか、大地を守る会の商品についてはネットスーパー型に舵を切ったことで、商品のウェブ掲載に合わせて大地の価格に統一。旧サービス利用者にとって大地の商品は実質10%の値上げとなったようだ。
また、旧サービスでは大地の自社便を利用していたが、新サービスでは日本郵便が配送を担い、送料も上がった。
さらに、従来は週1回、決まった曜日に配達員が商品を届けるのと同時に、マークシート方式で次回分の注文を受けていたが、新サービスではこれをやめ、注文するタイミングの自由度を高めたが、かえって購入のリズムを崩したようだ。
エムアイデリ会員はシニア層が多いため利用者の全体像を示しているわけではないが、メールでのアンケート調査では会員の約7割が他社の宅配サービスを併用していると回答。牛乳やパン、豆腐、卵といった白ものなど日配食品は価格の安い他社で購入し、「エムアイデリ」の日々の利用につながっていないという。
こうした状況を考慮し、三越伊勢丹通信販売では「エムアイデリ」のテコ入れに本格着手する。すでに今年5月からは、週刊カタログについて、顧客の期待が高い特集・企画物を強化する一方、定番の調味料や通年商品などは保存用カタログ「エムアイデリストック」(年4回発行)として別冊化。週刊カタログと色分けすることで利便性の向上や、ページ当たりの採算性を高める狙いだ。
サービス面では午後配送に加え、午前便や遅い時間帯、毎週、決まった商品を届ける定期便の導入も検討する。
また、重要顧客には百貨店グループとして御用聞き対応を強化。すでに一部の顧客には定期的に電話をしてニーズをくみ上げるとともに、購入頻度のアップに貢献しているようだ。
「エムアイデリ」は、電話受注が5割弱と高いのも特徴だが、事業採算の面からもネット受注の向上は課題で、今後はウェブ限定の商品やセールなども強化したい意向。
同社では今期(13年3月期)、7000人の新客獲得を目指しており、百貨店カードの請求書や中元・歳暮カタログにチラシを同送したり、百貨店店頭でも野菜セットなど一押し商品を実際に見せてPRする。