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経済産業省、子ども服の安全性に関するJIS規格策定へ

2013年 9月12日 10:10

経済産業省は、子ども服の安全性に関するJIS規格の具体的な策定作業に入った。子ども服に付された紐類などによる事故の未然防止を狙いとしたもので、9月4日に「子供服の安全に関する標準化委員会」の初会合を開催。前年度実施した「子ども服の安全性に関する国際標準化先導調査」(先導調査)で作成した規格素案をもとに表現や数値などの詳細を詰め、今年度中に引きひもおよびフードの規格原案を策定。来年度にはボタンとファスナーの規格原案を策定する計画だ。すでに安全性に配慮した子ども服の開発を行っている通販事業者もあるが、新たなJIS規格への適合が顧客の商品選択の材料となる可能性もあるだけに動向が注目されるところだ。

 検討のたたき台となる子ども服の安全性に関するJIS規格素案は、欧州のEN規格をベースに作成。前年度の先導調査では、子ども同士の引っ張り合いや、遊具などに引っ掛かりケガをする可能性が考えられるコード紐や引きひもなどひも類の規格化を優先的に検討。今回の検討作業では、さらに消費者団体側委員から要望のあったフードも附属書の形で盛り込んだ。

 ひも類の規格素案の概要としては、子どもを出生から7才未満までの年少、7才から13才までの年長に分け、頭部および頸部、胸部および腰部、でん部以下、背中、腕に付される紐類について素材や形状、長さ、加工方法などを規定しており、一般要求事項として、「何らかの立体感のある装飾があってはならない」とするほか、ほつれ防止のための結び目はないことが望ましいことなどを明記。各部位に付されるひもの種類によっては、「装着ひもおよび調整タブは75ミリメートルを超えてはならない」(年長者衣料の頭・頸部の要求事項)など具体的な数値も挙げている。

 JIS規格原案の検討作業は、標準化委員会とワーキンググループ(WG)で推進。標準化委員会でJIS規格原案の大きな方向性を示し、WGで規格案の細かな内容を議論する形になる。JIS規格の大まかな方向性としては、規格原案と規格の目的などを記載する解説書の構成を予定。このほかに個別の規格に合致するかなどを事業者側が判断するための解釈書や、規格の要件を満たした製品に"適合マーク"的な表示ができるようにするためのチェックリストの作成、消費者に対する規格の周知策などが検討事項になる。

 9月4日の標準化委員会では、JIS規格原案の方向性や今後の検討作業の進め方などの大枠の説明などが行われたが、素案に記載された"望ましい"表現を巡り、メーカー団体側の委員と消費者団体委員や行政側との間で意見が対立。

 素案では、ひものほつれを防止するための結び目について「ないことが望ましい」とするなど"望ましい"表現を使っているが、持丸正明委員長(産業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センター長)などから、他のJIS規格では"望ましい"表現をあまり使用していないと指摘。JISの性格上からも、"してはならない"など、"望ましい"表現よりもさらに踏み込んだ表現にすべきとの考えを示唆した。

 これに対し、メーカー側委員は、「作る側からすると全面的に"してはならない"とするのは非現実的」とし、"望ましい"表現を使いながら、メーカーのリスクマネジメントに委ねるという手法もあるとしたが、他の委員の間では、より厳格な内容とすべきとの見方が大勢で、"望ましい"表現では、メーカー側が対応しなくてもいいと解釈する可能性があるといった意見も出された。

 標準化委員会では、今後のWGでの検討結果を踏まえ、来年2月中にJIS規格原案をまとめる考え。正式にJIS規格となるには半年から1年程度かかるもようで、フードについてもJIS規格化される可能性があるという。

 同委員会の持丸委員長は、子ども服の安全性に関するJIS規格を消費者とメーカーの合意点とし、市場の中で機能させる考えを示すが、メーカー側からすれば、製品の安全性確保は最重要事案とは言え、規格に適合させようとした場合のデザイン的な制約、加工方法や原材料の見直しに伴うコストアップなど想定される負担は小さくない。

 その中でメーカー側の合意を得ようとするのであれば、JIS規格の適合が消費者の商品選択基準となるような流れを作り出す施策を明確にすることが必要と言えそうだ。

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