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消費者庁、健康食品規制で劇的変化?

2010年 2月25日 18:45

 健康食品の違法表示を取り締まる健康増進法(健増法)の運用強化が進む可能性がある。消費者庁が食品表示の監視を目的に各県に置く「食品表示監視協議会」(協議会)で、健食も対象とする意向を明らかにしたからだ。折りしも、消費者庁では健食表示をテーマに検討会が行われ、健増法の運用強化、罰則強化がさかんに叫ばれている。地方を巻き込んだ法執行強化策が展開されることになれば、市場環境はさらに厳しさを増すことになる。

 「健食表示も関連法規が多岐に渡るという食品と同様の問題を抱えている。"監視指導に協議会をうまく使うことができないか"という話は庁内にある」。消費者庁食品表示課では、協議会の今後の位置づけをこう話す。

 事の発端は2月に消費者庁が発表した「消費者行政の充実・強化のためのプラン」だ。この中で消費者庁は「消費生活相談体制の強化」「法執行強化」「相談員の処遇改善」を課題に挙げている。中でも気になるのが「法執行強化」の部分。食品表示の監視は、全県に置かれる「食品表示監視協議会」と、省庁間の連絡会議である「食品表示連絡会議」(連絡会議)を軸にすることが明記されており、これに健食も含む気配があるのだ。

 協議会は関係法令が多岐に渡る食品表示の問題で情報交換を密にし、執行力強化を図るもの。メンバーには地方厚生局と地方農政事務所などの出先機関、各県の表示関連法担当者が参加する。
 会合の開催数は自治体によりバラつきがあるが、月1回程度開く東京都では「偽装表示問題で立ち入り調査の日程調整や適用法令の相談を行い、業務の効率化を図っている」(食品監視課)としており、この協議会を経て処分に至る事例もあるという。

 一方の連絡会議は農林水産省、警察庁、消費者庁、オブザーバーとして厚生労働省が入っている。ただ、これまでは農水省が事務局を務めていたため、食品衛生法やJAS法関連の事案処理が大半を占めていた。

 だが、表示関連の法律が消費者庁に移管されたことで事務局も消費者庁に移動。前段で消費者庁が話すように、従来と様相を一変させそうなのが健食表示に対応する健増法なのだ。

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 すでに、協議会には消費生活相談センター(消セン)の所長を新たなメンバーとして迎え入れることが決定しており、相談分析と法執行の迅速な連携を図っていく方針を明らかにしている。グラフに示すように消センに寄せられる健食表示に関わる相談は高水準で推移しており、健食を対象に含むことになれば狙い打ちされるのは明らかだ。

 さらに消費者庁では「健康食品の表示に関する検討会」で健食表示の適正化に向けた審議をしており、健増法の運用強化によって表示適正化を図るシナリオが見え始めている。

 地方の08年の健増法指導実績は926件(事業者の事前相談約500件を含む)。少ない数字とは言えない。だが、地方が持つ健増法の執行範囲は拘束力を持たず、社名公表もない「指導」が限界。これに従わない場合、国が「勧告・命令」を行うことになるが、これまで至った件数はゼロ件。実効性のないことが度々指摘されてきた。今後、執行権限の委譲と合わせ、地方の運用強化が図られてもおかしくはない状況といえる。

 これについて消費者庁では「可能性はあるが、検討会の議論もあるので(協議会で健食を対象にするかの)判断はまだ早い」(食品表示課)としている。

 だが、地方に出先機関を持たず、監視人員が不足する消費者庁が協議会を使うのは当然の帰結といえる。今後、この協議会がどういった使命を帯びることになるか、その動静に注目が必要だ。
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