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【ブックオフのO2O戦略】 書籍の単品管理導入で単価増 オンラインのデータ活用

2014年 6月19日 13:39

 3-1.jpgブックオフコーポレーションの子会社でネット販売を手掛けるブックオフオンライン(BOO)は昨年から、直営店で書籍の単品管理を開始した。BOOのデータを元にして、店舗向けに商品価格を配信するというものだ。単品管理しているのはハードカバーの単行本で、実施店舗は100店舗超まで拡大。フランチャイズ店での導入も実験的に始まっており、販売単価の上昇など、徐々に成果が出始めているようだ。

 ブックオフではこれまで、書籍を一律定価の半額で販売、一定期間棚に残ったものを税別100円で販売するというビジネスモデルで売り上げを伸ばしてきた経緯がある。ところが、近年は店舗での書籍販売は苦戦。単品管理の導入は、ユーザーのニーズに合わせた価格設定の導入による単価アップが狙いだ。

 柳重光社長は「(最低価格となる)100円まで下げなくても売れることが多く、結果的に単価は100円以上上昇している」と成果を口にする。これまではほぼ2段階だった価格設定を、5段階程度まで細分化したためだ。すでにPOSが全店に導入済みということもあり、オペレーション上の混乱などは特になかったという。また、価格設定はBOOをベースとしているが、ニーズに合わせて店舗が変えられるようにしている。

 販売量の多いコミックについても単品管理を試験的に開始。ただ、ハードカバーに比べると単価が低いことから、「大きな成果は出ていない」(柳社長)という。そのため、「売れにくいタイトルを見極める」(同)ためにBOOのデータを使い、単品管理を進めていく方針だ。

 ブックオフではこれまで、基本的には買い取った商品をすべて棚に並べていた。一方でBOOでは、インターネット買い取りサービス「宅本便」で買い取っても、実際にはネット販売用の在庫にしないタイトルが2割程度あったという。店舗でも同様な仕組みを導入することで、棚の回転を早くし、生産性を上げるのが狙いだ。

 「『ブックオフの査定は本の状態だけで、本の良し悪しはまったく考慮していない』という批判が以前からあるが、書籍の価値に見合った値付けをするためのベースはできつつある。この部分を改善できればまだまだ伸びる」と語る柳社長。価格設定の変更は、ブックオフなどで買ってアマゾンマーケットプレイスやヤフオク!で転売する、いわゆる「せどり」ビジネスを営む個人にも影響を与えている。

 せどりで儲かるのは、ブックオフでの「仕入れ」額とネットでの売れる価格に差があったからだ。すでに、単品管理を導入した店舗では、せどり目当ての客が大幅に減少しているという。いずれ全店舗で単品管理を実施するようになれば、アマゾンマーケットプレイスやヤフオク!に流れている需要の取り込みも期待できる。

 ネットの中古本市場において、ブックオフは実質的に「卸売業者」となっていた。柳社長も「そうした立ち位置はあまり良くないという意識はある」と語る。せどりはブックオフにとって売り上げにつながる反面、値下げされた書籍を業者が根こそぎ買ってしまうことで、他の消費者が欲しい本が減り、結果的に店舗へ足が遠のくというスパイラルを生み出した面もある。単品管理は、店舗における適正な在庫確保という狙いもあるわけだ。

 「(単品管理が)すべての地域やロケーションでマッチするとは限らないが、ある程度道筋は見えてきた」と語る柳社長。BOOのノウハウやデータを有効的に活用することで、「店舗の価値」向上につなげる。
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