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"ライオン・ショック" 初勧告の衝撃⑥ 事業への影響は?

2016年 4月14日 16:11

021.jpg 「勧告」は"行政指導"である点で景品表示法の「措置命令(行政処分)」と異なる。勧告に従わない場合、「命令(同)」に移行するというワンステップ置いた運用だ。ただ、"社名公表"を伴う点で社会的な影響は大きい。健康増進法の勧告は企業の事業活動にどういった影響を及ぼすか。

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 ライオンに対する勧告の内容は、おおむね景表法の処分の際に事業者に求められる内容が踏襲されている。異なるのは、「媒体社名」が公表されていないこと。消費者庁は新聞14紙への広告掲載などを明かしたのみ。「何人も」を対象にし、"媒体責任"を問える健増法の特徴に配慮した判断とみられる。

 一方、事業者の関心が高いのは、「広告宣伝」への影響だろう。一つは、日本通信販売協会(JADMA)の会員社であるライオンの場合、テレビや新聞の考査に影響を及ぼす「JADMAマーク」の使用可否がある。ただ、JADMAは「『行政指導』であるため処分なし」との判断。措置命令の場合、1年の資格停止を言い渡されたケースもあり、措置命令とは大きな違いがある。

 新聞社との関係はどうか。措置命令を受けた企業の場合、新聞広告の出稿を1年止めたケースも存在する。ただ、この点、ブロック紙の考査担当者は「指導内容に基づき表示を改善し、適切なものにすると約束すれば(出稿を)受けざるを得ない」とする。出稿の可否は、個別ケースごとの判断になるものの、判断基準は悪質度。「特商法違反で業務停止を受けるなど、消費者をだましていたような事例であれば、商法自体を改善してもらうまでは保留」(同)とする。

 全国紙の関係者も「処分事実を公表し、不当な表示でなければ広告再開はすぐできる」と話す。「広告展開を制約するのは営業権の侵害になる。自粛期間は企業姿勢と反響の大きさで決まり、"暗黙のルール"は実は存在しない」(同)とする。

 ただ、新聞の場合は、記事で複数回に渡り取り上げられるケースがあり、「広告部門の担当者がこれを抑えることができないため、ほとぼりが冷める見極めを慎重にするのが実情」(同)という。

 2014年3月には、空間除菌剤「クレベリンゲル」を販売していた大幸薬品など17社が措置命令を受けた。当時、処分から数日後に大幸薬品は不当表示は改めた上で「『クレベリン』の主成分『二酸化塩素』はウイルス・菌を除去します」という成分に関する広告を掲載。消費者庁が懸念を表明する事態に発展している。ただ、こうした広告が可能なように「媒体からの自粛要請はない」(同)という。

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 ライオンはどう考えるか。今後の広告展開について尋ねると、トクホ広告の再開時期は明かさないものの「勧告を踏まえ問題ないものを展開していく。従来から個別の文言は注意してきたが、今回は全体の印象に対する指摘を受けた。今後は、全体の構成にも目を配る」と回答があった。

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 ライオン創業者の小林富次郎氏は、商品を知ってもらうため音楽隊を結成して商品を宣伝。これがCMソングの始まりとも言われる。その思いは、どんな素晴らしい商品も知ってもらわなければ意味がないというもの。「創業者も『広告は事業の肥やし』と言っている」(同社の担当者)と話し、キャッチコピーと商品を巧みに組み合わせた広告は創業から120年以上続く伝統でもある。

 同社のトクホ広告には行き過ぎた面があったかもしれない。ただ、通販業界で多くのメーカーが従来の事業構造のしがらみに囚われる中、新たな事業モデルの本質の理解に努めた姿勢は多くの企業の範となり、メーカーの通販参入を促した。このことが業界を活性化させ、社会的地位も向上させた。

 ライオンが再びメーカー通販をけん引する企業として復活することを期待したい。
(おわり、前回の⑤はこちら、本連載全①~⑥はこちら

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