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定期トラブルに包囲網、相談が4年で20倍に

2017年 6月15日 19:19

 複数回の定期購入を条件とする"定期縛り"に対する包囲網が狭まっている。消費者契約法の改正議論では槍玉に上がり、今年6月には経済産業省が消契法上、違反となる事例を示した。同月、政府が公表した「消費者白書」も定期購入トラブルが過去4年間で約20倍に急増したことに言及している。

 経産省は6月5日、ネット販売などの法的問題点に対する考え方を示す「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を改訂した。年1回改訂するもの。法的拘束力はないが、法律の執行方針の参考にするものにはなる。今年、そこに新たに盛り込まれたのが「自動継続条項と消費者契約法第10条」の関係性、いわゆる"定期縛り"に対する考え方だ。

 消契法第10条では、「消費者の利益を一方的に害する条項」があった場合、その契約を無効にできる。準則では、想定される"定期縛り"を例示し、消契法上の観点から解説した。

 健食の定期購入では、1年間の契約で消費者から申し出がない場合、さらに1年間、自動的に契約が更新される条項が利用規約に定められているケースがある。また、「お試し価格1カ月分100円」などと表示。実際は定期購入で2回目以降、1万円など通常価格が請求されるケースもある。

 これら契約条項を巡り、「申込み確認画面」における利用規約への同意や、規約の見やすい位置への配置で消契法上、契約が無効にならない可能性を示している。一方で「確認画面」等での表示が不十分である場合は無効になるとして、想定される事例を示してもいる。準則を背景に、行政による法執行や、景表法、消契法の差止請求権を持つ適格消費者団体の動きが活発化する可能性がある。

 実際、定期トラブルを巡る相談もここ数年で急増している。6月9日、政府が公表した「消費者白書」によると、「初回お試し価格○円」「送料のみ」などと1回のお試しのつもりが定期購入になっていたトラブルが昨年1年間で全国の消費生活センターに1万3129件寄せられていることが分かった。12年の同様のトラブルは658件。4年でじつに約20倍に急増している。

 定期トラブルの契約者の多くは女性。約8割を占める。また、10代、20代の若年層も約2割を占める。多くはSNSの広告などを見てスマートフォンで契約。「5カ月以上の購入が条件」といった表示がほかの情報より小さい文字で示されていたため認識できず、トラブルに発展している。

 商品で多いのは、酵素やダイエットサプリメントなどの「健康食品」(9678件)、青汁などの「飲料」(1258件)、ニキビケア等の「化粧品」(2193件)の3分野。それぞれ過去4年で10倍から30倍まで相談件数が増えているという。

 定期トラブルを巡る一連の動きは一本の線でつながれている。

 消契法の改正議論には、定期トラブルを問題視する適格消費者団体の関係者が確認できるだけで6人参加。検討委員の3分の1を占めている。準則の改訂を議論した経産省のワーキンググループの委員にも消契法の改正議論を行うメンバーが2人参加している。準則の改訂に関する議論が始まった当時、経産省は「影響はない」としていたが、問題意識が共有されていることは明らかだ。

 とはいえ、定期トラブルが急増しているのも事実。今年2月、埼玉県によるトラブル是正の要請に消費者庁は「(特商法で対応可能」との見方を示してもいる。いずれ法執行などで改善を迫られることになりそうだ。

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