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機能性表示「解禁」と「規制」 暗転する新市場① 打ち込まれた"楔" 「葛の花」販売企業を一斉聴取

2017年 8月17日 10:04

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安倍首相による健康食品の「表示解禁」宣言で導入された機能性表示食品制度は、届出の公表件数が1000件を超えた。トクホは導入から四半世紀を経て約1200件。導入から約2年でトクホを凌ぐ勢いだ。制度活用のすそ野が拡大した背景には、トクホにはないシステマティックレビュー(SR)による機能性評価を採用、中小企業の活用が進んだことがある。だが規制緩和から一転、今年5月、スギ薬局による「お詫び社告」騒動を機に新市場に楔が打ち込まれようとしている。

3社が「お詫び」

 規制改革の一環で導入された機能性表示食品をめぐる状況が変化したのは5月だ。ドラッグストアチェーンのスギ薬局が販売する機能性表示食品「葛の花プレミアム青汁」(=画像)など3商品について突如、広告が不適切であると自らの非を認める「社告」を掲載。以降、6月にテレビショッピング研究所、8月に日本第一製薬が同様の社告掲載に至ったためだ。

 3社に共通するのは、「葛の花由来イソフラボン」を含む機能性表示食品(以下、葛の花)を販売していたこと。東洋新薬の独自原料であり、機能性表示食品として26社(未発売、販売休止を含む)にOEM供給するものだ。

 「社告」掲載の経緯にスギ薬局は消費者庁からの指摘を「ございません」と否定。テレビショッピング研究所も「自主的に判断した」とする。ただ、複数の関係筋の話では消費者庁による「葛の花」の広告調査は十数社に上り、今年6月下旬には販売する企業への一斉聴取が行われている。

「任意」聴取の背景

 「通常の手続きと異なる雰囲気を感じた」。調査を受けた企業の関係筋は、その様子をこう話す。

 そもそも、スギ薬局の「お詫び社告」に始まった騒動は当初から釈然としない点があった。景品表示法に基づく措置命令を行う際の通常の手続きと異なるためだ。

 「いわゆる健康食品」を対象にした調査であれば、消費者庁は多くの場合、「合理的根拠の提出要求権限」を行使。提出された資料から「表示」との整合性を判断する。

 だが、今回、調査を受けた企業の中には「正式な書面」による根拠要求を否定している企業もある。"任意"で根拠を提出し、表示管理体制や出稿媒体に関する消費者庁の要請に応じた。

 手続きが異なる理由の一つは、対象が機能性表示食品であることが関係しているだろう。制度は企業の自己責任による届出制。企業はあらかじめ根拠資料を提出し、これに沿った届出表示を行う。要は、消費者庁は法的拘束力のある権限を行使せずとも一定レベルで「根拠」と「表示」の整合性を判断できるわけだ。

 調査段階での「社告」掲載は、「課徴金」への対策があるとみられている。処分を前に一定の要件を満たした上で自主的な返金措置を講じれば、課徴金対象期間の短縮や課徴金額が減額されるためだ(本紙1609号既報)。

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本丸は東洋新薬?

 「葛の花」で一つに結ばれた企業への一斉聴取もさまざまな憶測を呼んだ(消費者庁は、調査について「個別案件に答えられない」と回答)。

 景表法上、広告の一義的な責任はあくまで販売者だ。ただ、表示への関与が深い場合、処分の対象となる「表示主体者」が供給元に及ぶ可能性もゼロではない。また、健康増進法は「何人も」を規制対象にしている。

 根拠集めで販売企業に依るところが大きい健食に比べ、機能性表示食品はSRによる届出の場合、商品供給側と販売側が密接に関わる。加えて、「葛の花」は、東洋新薬が販促をサポートする"営業資料"を販売側に示してもいた。このため、調査当初、「本丸は東洋新薬ではないか」「任意聴取でもあり、自らに累が及ばないのでは」と考える販売事業者もいた。

 だが、7月下旬、複数社に「課徴金」の調査依頼がきたことで企業の望みはもろくも打ち砕かれることになる。「課徴金」は景表法の措置命令とセットの運用が決まり。その調査依頼がくることは、いわば"詰み"の状態であるためだ。消費者庁の狙いはどこにあるのか。そして、東洋新薬の関与はいかに判断されるのか。
(つづく)
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