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東京都の紛争解決 公表内容から〝企業特定〟も「特定の意図なく問題ない」

2017年 9月21日 16:40

 東京都の消費者被害救済委員会が行った健康食品の紛争解決あっせんが波紋を呼びそうだ。9月13日、定期購入トラブルの解決事例を公表。だが、公表内容から、紛争の相手方が健食通販を行うINKと特定できてしまうものであったためだ。本来、事例公表は事業者名を伏せ、特定されない公表が基本。公表のあり方が問われそうだ。

 公表されたのは、日焼け止めを目的にするサプリメントを扱っている事業者であること。初回500円のオファー設計で、6回(6カ月)の継続を条件にしている。また、他紙を含めた都の報道対応で明らかにされたのは、2回目以降の購入金額が「6480円(税抜)」であることだ。

 ウェブで同様の健食を販売する企業は複数ある。ただ、公表情報に完全に合致するのは「ビューティーマニア」の名称で通販を行うINKのみ。「雪肌ドロップ」という商品を展開していた。

 INKは、紛争を受け、定期の継続期間などの条件を変更。「当時の事実が公表されたのは仕方ない」とし、都の公表のあり方にも「今は意見をする段階にない」とする。

 一方の都は、「私どもとしては事業者名を特定して出していない。多くの会社は(初回購入を)『500円』に設定、定期の継続回数が『6回』も多い」(都消費生活総合センター活動推進課消費者被害救済担当)とする。特定にも「その意図はなく、分かっても業界の詳しい人限定では。一般の人は分からない」(同)と説明している。

 都では健食の定期トラブルの急増を受けて紛争解決をあっせんした。委員会が定期トラブルのあっせんを行うのは初めて。全国の消費生活センターに解決のモデル事例を示す目的で行った。

 従来、同様の問題は景品表示法や消費者契約法の観点から消費者団体が問題点を指摘してきた。今回は、ネット取引のトラブル解決を目的にした電子消費者契約法(電子契約法)に基づくもの。電子契約法による解決が行われたのも珍しい事例といえる。

 電子契約法では、確認画面に事業者が契約内容を適切に記載していない場合、消費者が契約の無効を主張できる。

 解決を受け、委員会では、事業者に「定期回数」や「購入総額」「中途解約条件」を広告で明示することを求めた。また、決済代行事業者にも適切な通販の加盟店管理を要請。消費者庁に対しても特定商取引法や景表法による行政指導を要請した。

あっせん解決の概要

「確認画面」の表示ポイントに、決済代行の責任も指摘

061.jpg 健康食品の定期購入をめぐる紛争は今年1月末、30~50代の女性4人の申し立てを受けて取り上げた。あっせん解決成立のポイントは、「購入確認画面」の表示だ。

 購入者は、は昨年6月から9月頃、「お試し」「モニター」「500円」といったスマートフォン広告を見て日焼け止め防止の差健食を購入した。2回目の商品が届き定期購入と認識。体調不良もあったため解約を申し出た。だが、電話はつながりにくく、解約しようとすると定期購入の総額とほぼ同額の違約金2万7000円を請求され、中途解約を妨げられた。

 事業は、注文時に後払いサービスを選択すると売買代金債権が販売者から決済代行事業者に譲渡される仕組み。決済代行事業者にもトラブルを伝え支払いを拒否したが、代行事業者からも再三に渡り支払請求があった。委任を受けた弁護士から支払督促まで受けた。

 消費者被害救済委員会によるあっせんでは、1個500円の商品購入の契約成立は認めた。一方、販売事業者は2回目以降に送付した商品の所有権を放棄。過誤払いした消費者にも過誤払い分を返還した。決済代行事業者も売買代金債権を販売事業者に戻し、購入者に請求しないことで解決した。

 解約に至ったポイントは、購入確認画面や注文確定後のメールの表示。「商品個数1」「代金500円」といった記載はあったが、「6回(6カ月)以上の継続購入条件」や「購入総額」「期間中は解約できない旨」の記載はなかった。

 ネット取引のトラブル解決を目的にした電子消費者契約法では、確認画面に事業者が契約内容を適切に記載していない場合、消費者が契約の無効を主張できる。このため委員会は、商品を1個500円で購入する売買契約とするのが妥当とした。

 2回目以降に送られた商品も契約に基づかないため、特定商取引法上の「送り付け(ネガティブオプション)」にあたる可能性があり、消費者側が商品の返還義務を負わないとした。

 決済代行事業者の割賦販売法上の責任も指摘された。

 今回の契約で消費者は、商品到着毎に代金の分割払いを求められていた。仮に6回分の定期購入契約が成立していたとすると、後払いは2カ月以上の分割払い。割販法上の「個別信用あっせん」にあたる。この場合、消費者は、販売事業者だけでなく、決済代行事業者に対しても契約の不成立、錯誤による無効、中途解約を主張でき、支払いを拒否できると判断した。




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