TSUHAN SHIMBUN ONLINE

インターネット・ビジネス・フロンティア株式会社
記事カテゴリ一覧

三井不動産 ファッションECモールを新設

2017年11月 9日 13:48

5-1.jpg
 三井不動産は11月1日、同社グループが運営する商業施設と連動させたファッションECモール「アンドモール」を開設した。今後10年後をめどに、年間商品取扱高で1000億円を目指す考え。同モールは同社が運営する「ららぽーと」や「ラゾーナ」といった大型ショッピングセンターに出店するファッションテナントの商品を取り扱うもの。約200ショップでスタートし、今後1年間で倍増の約400ショップまで拡大する予定。

 同モールではシステム連携により、店舗在庫もテナントが持つ倉庫在庫も同モールで販売することが可能で、テナントの実店舗の売り上げ向上にも寄与する仕組みを持っている。

 リアルとモールとの相互送客を促す仕組みとしては、テナントの実店舗にタブレットを配置して顧客が希望する商品の在庫がない場合はスタッフがタブレットから同モールへ誘導。購入商品は後日、自宅に配送する流れで、物流はテナント側の配送網を活用。基本送料は税込378円(ショップごとに3000円以上の購入は無料)となる。

 一方、モールで検索した商品の実物を確かめたい顧客に対しては、サイト上の「店頭在庫」チェックからリアルでの取り扱い店舗を表示して来店意欲を喚起させる。

 また、テナントの実店舗スタッフのモチベーション向上に向けた施策として、店内タブレット接客から販売した売り上げは実店舗の評価として集計。加えて、サイト内で掲載している実店舗スタッフのコーディネート提案ページから販売につながった商品は、どのスタッフの提案を見て決めたか閲覧ログが残るため、個人の販売評価の指標として取り入れることができる。

 なお、サイト内のコンテンツとしては、ウェブマガジンの「ハニカム」の元代表兼編集長を務めた鈴木哲也氏が監修する編集部を立上げて特集ページを運営。アパレルだけではなく小物や雑貨などを含めた幅広いライフスタイルを提案する読み物企画として、定番ファッションから最新トレンドまで、平日毎日の頻度で更新する。また、ファッションジャンルに特化したインフルエンサーを「&mallers(アンドモーラーズ)」として集め、彼らが選んだコーディネートやお勧めアイテム情報なども発信する。

 集客に関しては1000万人規模を有する「三井ショッピングパークポイント会員」の顧客基盤を活用していく考えで、リアルとモールのどちらでもポイントを貯めて使うことができるようにしている。今後はグループが運営するマンションやオフィス施設の利用者に対してのアプローチも行う計画。

 そのほか、コンビニ受け取りといった付帯サービスの拡充や、ファッション以外の商材を取り扱うことなども強化していく。

 11月1日に都内で開催した事業発表会では、広川義浩常務執行役員が「リアルでは物量に限りがあって機会損失が生じているという話がある中、解決するのがデベロッパーとしての責務という思いがあった」と開始の経緯を説明。

 次いで行われたパネルディスカッションでは主な出店者による同モールのメリットを紹介。ナノ・ユニバースの濱田博人社長は「我々のブランドのことを比較的理解されている顧客が1000万人もいるので、そうした人たちのトラフィックが期待できるのは非常に大きい」と語った。

 また、発表会には当日から放送されるテレビCMに出演するタレントの森星さんとバービーさんも登場。実際にタブレットを使って購入ページや特集コンテンツを確認するといったパフォーマンスを行った。

三井不動産・囲み顔写真.jpg
【森政治&mall事業室長が語る、アンドモールの差別化策とは?

リアルとEC双方の価値高める

 2年ほど前からリアル施設とECを融合させ、双方が価値を高めあえる仕組みを考えていた。「アンドモール」はリアル施設と同様に当社が事業主体となって仕組みを開発して投資を行い、実際のサイト運営はグループの三井不動産商業マネジメントが担っていく。

 200ショップが出店して始動したが、当社施設の主要テナントは約1000ショップあるため、まだ2割程度だ。今後1年で400ショップに参加してもらえるようにする。

 ささげと物流機能はテナント側のインフラを活用する。大半のテナントさんは自社ECを展開し、物流機能やささげデータを持っているため、当社がコストをかけて倉庫を構えたり、写真撮影をし直すというのは効率が悪い。ただ、ECに必要なフルフィル機能を持たないテナントさんにはオプションサービスとして外注先で商品を預かったり、写真を撮ったりする機能は用意している。

 収益モデルは他のファッションECモールと同様、売り上げに応じて販売手数料(システム利用料)をテナント側から受け取る。

 ファッションECモールでは後発のため、事業化構想初期の段階から店舗連動の仕組みを差別化ポイントに掲げてきた。

 店頭の欠品商品を「アンドモール」で購入できるタブレット接客の導入店舗はまだ100店舗と少ないが、ECがなければ発生していた機会損失をカバーできる。この機能はテナントさんからの声もあったし、色・サイズが欠品していて購入をあきらめたことのある施設利用者が多かったこともアンケートから判明していた。アパレルではとくに欠品しやすい商品や色・サイズが出てくる。

 また、「アンドモール」とシステム連携することで受注商品を店舗から出荷できる仕組みも用意した。こちらもまだ60店舗だが、空き時間に受注商品を箱に詰めて配送伝票を貼り、「アンドモール」のスタッフに手渡すというシンプルな設計だ。

 サイト上で実店舗の在庫を確認できるが、実際に手にとってみたい場合はウェブに表示される各店舗の連絡先に電話して取り置き依頼をしてもらうことになる。従来の電話取り寄せと同じだ。今後、取り寄せ機能の要望が多ければ検討するが、まずはテナントさんの業務負荷を考慮した。

 価格競争に陥らないためにも消費意欲を刺激し、旬の商品を買ってもらえる特集コンテンツやコーディネート提案を高頻度で発信していく。こうしたコンテンツは施設のウェブサイトにも使ったり、特集内容に対応して館内の売り場演出を展開することもでき、リソースの有効活用の側面や消費者への認知の面でも有効だ。

 今後はリアル施設での取引先を優先して出店交渉を行う。ネット専業企業もリアルに進出してきており、出店対象になり得るが、「アンドモール」全体の価値を下げないように、安心して購入してもらえるショップさんというのが前提になる。

 KPIは利益面というよりも、出店ショップ数やタブレット接客の導入店舗数、店頭出荷対応店舗数の拡大といったプラットフォームとしての普及・拡大を重視する。


楽天 通販売上高ランキングのデータ販売