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KC'sの「葛の花」返金要請 11社が全面的に対応、1社回答拒否で対応「検討中」

2018年 8月23日 10:55

 特定適格消費者団体の消費者支援機構関西(=KC's)が「葛の花由来イソフラボン」を含む機能性表示食品の販売企業15社に顧客への返金を求める申し入れを行っていた問題は8月9日、KC'sが経過を公表した。11社は、KC'sからの要請に全面的に応じる形で決着。残る4社のうち1社は一切の回答を行っておらず、「誠に残念」(KC's)としている。KC'sは今回の公表を「中間報告」(同)としており、さらなる対応に含みを持たせている。

 KC'sが求めていたのは、「葛の花」の購入者が商品の消費分を含め、返金を求めることができる旨を個別に通知すること。また、代金の返金を求められた場合はこれに応じるとともに、消費者に負担の少ない返金方法を提供することだ。KC'sに対しても返金の実施状況の定期報告を求めていた。

 「葛の花」をめぐっては昨年11月、商品を摂取するだけで誰でも容易に腹部の痩身効果が得られるような表示を行っていたとして、消費者庁が販売企業16社に景品表示法に基づく措置命令を下している。

 申し入れを行ったのは今年3月。1社を除く15社に行われた。ニッセンは、申し入れ以前に対象商品の購入者全員に対して返金する旨を個別に通知するとともに、返金を実施していたことから除外した。

 これまでに11社からは、個別の購入者からの返金要請に応じるほか、そのことを購入者に通知したとの回答を得た。また、団体への返金状況の定期報告にも応じるとしている。ただ、定期報告のスケジュールは「(求めている期間や、各社で異なるかなどは)公開していない」(KC's)としている。

 残る4社のうち、3社は、「返金要請があった場合は、要請通り返金に応じる」(協和)、「お問い合わせの連絡をいただいたお客様に対しては、個別の本商品代金の返金に対応している」(全日本通教)、「消契法第4条第1項第1号(不実告知)に基づく消費者からの正当な返金請求に対し、個別に返金を行う」(日本第一製薬)と回答。個別の購入者に対する通知には応じていないものの、返金の求めに応じる旨の回答はあった。また、協和は、返金状況の定期報告にも応じるとした。

 一方、残るNaleluからは一切の回答を得られておらず、「自社商品の表示によって生じた消費者被害について、その回復に真摯に取り組む姿勢が全くうかがえない」(KC's)としている。

 KC'sは、Naleluを含む4社に対する今後の対応に「検討中」としている。ただ、NaleluはKC'sへの回答は拒否しているものの、すでに顧客に通知し返金に応じるなどの対応を行っている。KC'sも「やみくもに(提訴など)より強い措置をとるのではなく、回答がなくても返金していることもある。そのあたりの確認を含め、慎重に検討する」としている。



   「不当表示=不実告知ではない」

    消費者庁「多少痩せるのなら個別判断」

         <消契法の問題は?>


 「葛の花」事件から約1年、消費者庁の行政処分、消費者団体による「返金要請」と続いた事件はようやく決着が見え始めた。返金の是非は、消費者支援機構関西(KC's)が申し入れにあたり、消費者契約法を持ち出している点がポイントになる。

 特定適格消費者団体(特定適格)は、景品表示法、特定商取引法、消契法などに基づく差止請求権を持つ。消費者の財産的被害の回復を求め、顧客に代わり集団訴訟も行える。

 「葛の花」の処分は、景表法に基づくもの。ただ、景表法に企業に「返金」を求める規定はない。16年に課徴金制度は導入されており、「葛の花」をめぐっても9社に総額約1億1000万円の課徴金納付命令が下されている。

 一方、消契法には「契約無効」の規定があり、特定適格が集団訴訟で「返金」を求めるには、その要件を満たす必要がある。同法の「不実告知」(第4条第1項第1号)も要件の一つ。つまり、景表法で「不当表示」と判断された表示が、消契法の「不実告知」にもあたることを証明しなければならない。このため、KC'sも申し入れにあたり、今回の不当表示が「不実告知」にあたることを認めるよう、企業側に求めていた。

 申し入れを行った大半の企業は返金に応じた。ただ、消契法上の「不実告知」にあたるかは言及していないとみられる。「要請を受けたため、企業のあるべき姿勢として対応した」といったものだ。

 一方、確認できるもので日本第一製薬だけは「『不実告知』に基づき返金を行う」と、返金の前提が消契法であるとしている。ただ、これも裁判外のことで「不当表示=不実告知」と判断されたわけではない。

 「不実告知」は、「事実と異なることを告げること」。ただ、主観的評価で客観的に真実か判断できない内容は対象にならない。例えば店員が「この靴のヒールは硬い」「この魚は新鮮」といったのに、さほど硬い、新鮮と思えなかった場合がこれにあたる。

 両法の関係に内閣法制局は「(政府、行政として)判断が必要でないものは、各省庁が解釈は説明する」としている。

 消契法を所管する消費者庁消費者制度課は、景表法と消契法の解釈に「不当表示とされた表示が必ずしも不実告知にはならない」とする。ただ、「(ある問題のある表示が)各法の要件を重複して満たしうることはある」とも話す。「容易に痩せられる」といった表示には「まったく痩せないのであれば不実告知の認定はしやすいが、多少なりとも痩せるのであれば個別ケースで異なる」としている。

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