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出版社の通販戦略① アシェット婦人画報社、旬のコーデで"即買い"を誘導

2010年 6月17日 16:34

 3-1.jpg部数減や広告収入の落ち込みなどから著名雑誌の休・廃刊が相次ぐ出版業界。そうした中、「通販」を収益の新しい柱として強化する動きが顕著だ。とくにファッション分野では、商品の選別眼やコンテンツの編集力など出版社の強みを生かし、通販サイトや雑誌媒体へのブックインブックを展開することで既存のファション通販とは一線を画すケースが多いようだ。今号から出版社の通販事業の取り組みを見ていく。





  「エル・ジャポン」や「婦人画報」などのファッション誌を手がけるアシェット婦人画報社は、2009年1月に住友商事グループの一員となったのを機に、同年9月に通販サイト「エル・ショップ」を開設した。
 
 住商が日本で展開する「バーニーズ」や「マークジェイコブス」などファッションブランドの販売窓口として、グループのジュピターショップチャンネルを軸に、ネット販売や紙媒体などを複合的に活用した"マルチチャネル戦略"を推進しており、一環として、アシェット婦人画報社も新たな事業モデルの構築に取り組んでいる。
 
 「エル・ショップ」開設当初はグループのブランドなどラグジュアリー路線が目立ったが、現在はコンセプト通り、新進ブランドなど「エル」の世界観でセレクトした商品を扱うサイトとして商材の幅を広げている。
 
 集客面では、ウェブ雑誌「エル・オンライン」から誘導し、同サイトの会員を中心に顧客化に成功している。また、雑誌「エル・ジャポン」のブックインブック(12ページ)で毎号、通販サイトを紹介。小冊子で紹介する商品は電話でのオーダーも受け付ける。

 「エル・ショップ」は、ファッション感度の高い消費者が利用しているのが特徴。セールを待たず、ジャストシーズンでプロパー(正価)商品を購入する顧客が多いという。
 
 このため、旬のオリジナルコーディネートで商品を提案したり、パリやニューヨークなどで見かけた、おしゃれな女性のスナップを掲載し、身に着けている商品と同じテイストの商品を購入できるようにするなど、「エディターならではの提案力を強みに、その場で買いたくなる工夫をしている」(大勝裕子コマース本部副本部長)という。
 
 また、カスタマーサービスの視点が高いリピート率につながっているようで、例えば、昨年12月には顧客全員にクリスマスカードを送るなど、アナログな手法で顧客の心を掴んでいる。
 
 さらに、優良顧客を中心に人気のスイーツを手書きのサンクスレターを添えてプレゼントするなど、「手間を惜しまないサプライズが顧客から支持され、想定以上に高いリピート率につながっている」(出浦直子コマース本部ECマーケティング部)とする。
 
 時には、他社サイトで見かけた商品が欲しいというリクエストがあり、顧客が地方在住の場合などはメーカーに問い合わせ、その顧客のために買い付けたこともある。
 
 今期は、「エル・オンライン」からの誘導をさらに強化する。約16万人のオンライン会員へのメルマガで通販サイトを紹介したり、商品受注会のレポートを掲載することで、ファッション感度の高い消費者を囲い込む。
 
 また、一定金額以上の購入でボーナスポイントやプレゼントなどを付与するキャンペーンを実施し、客単価向上を目指す。
 
 今年2月からは2カ月に1回、ウェブ上で先行受注会を開催。在庫リスクを軽減できる施策として回数や商品カテゴリーを増やして実施する。


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