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【アスクルが挑む「宅配クライシス」㊥】 新小口配送モデルに成果、作業負荷軽減とコスト削減で

2019年 1月10日 13:15

 「配送クライシス」に対抗すべく、矢継ぎ早に様々な施策を繰り出しているアスクル。中でも特に注目すべき取り組みがある。昨夏から同社が展開する法人向けオフィス用品通販で実証実験を開始した”新たな小口配送モデル”だ。

 同モデルはオフィスビルの空きスペースに需要予測をした上で一定数の商品をあらかじめ輸送、一時保管し、実注文に応じて都度、当該スペースから近隣の顧客事業所のもとに台車で商品を配達する新しい小口配送モデルだ。この取り組みの利点の1つは受注から1時間以内など商品を迅速に顧客に配送できるという配送サービスレベルの向上。そしてもう1つは物流コスト軽減だ。このモデルの考案者でサービス設計に当初から携わってきた同社ECR本部配送ネットワーク配送イノベーションの東田圭介マネージャーは「従来、小口配送では当社の物流拠点から出荷した時点で1個いくらで(配送料が)発生していた。ここにきて物流コストが急激に上がってきた。もっとラストワンマイルを短縮できないかと考えた」と実証実験に踏み切ったきっかけについて話す。

 具体的な実証実験は昨年7月12日から、東京・六本木の商業ビル「東京ミッドタウン」で開始した。通常、アスクルでは顧客からの注文に応じて都度、全国9つの物流拠点で顧客ごとにピッキング・梱包した荷物を出荷して輸送・配送を行うが、この実証実験では過去の購買・配送のビックデータを解析するなどし、あらかじめミッドタウンに入居する顧客事業所の需要予測を行い、一定数の商品を通常の都度出荷品とともに物流拠点から事前出荷し、これをミッドタウンの館内に届く荷物をすべて集積する地下の荷捌き所の一角にラックを2つ置き、そこに一時保管し、ミッドタウン入館企業からの実注文に応じて館内配送業務を担う佐川急便が台車で納品する仕組み(=写真)。なお、対象商品は売れ筋の同社のオリジナルコピー用紙(A4)に限定して実施した。

 実証実験のスタートから半年弱が経過した現在の状況について、東田マネージャーは「まずはこのモデルのオペレーションに問題がないかを確認することが最初の段階だったが、これは確認できた」とする。東田マネージャーによると、この半年間は現場でのオペレーションの確認のため、特に”1時間以内で”など即配を行うことなく、アスクルの配送レベルの中で、例えば同社の法人向けオフィス用品通販では都内を含む都市圏などでは当日の午前11時までの受注分は夕方までに配送するという当日配送を実施しているが、これに合わせてミッドタウン入居の顧客事業所にも配送を行ってきた。ただ、この中でもすでに成果として現れてきたのが現場の作業負荷の軽減と物流コスト削減効果だ。

 実証実験前は住居企業がアスクルに例えば、コピー用紙を注文すると、この荷捌き所に都度、運ばれ、そのたびに荷卸し作業が発生していたが、需要予測に伴い、一週間に1度などまとめてコピー用紙が運ばれてくるようになったため、ほぼ毎日あった荷卸しが週1回に済むようになった。また、館内配送の配達スケジュールも組みやすくなった。従来は当日配送の商品が夕方に多く荷捌き所に届くことがあり、苦慮することもあったようだが、実証実験開始後は午前11時の当日配送受付終了後に「今日の配送は○社に○個」などミッドタウン入居者の注文情報をすぐに現場に伝えることができるため、空きのある時間に、一時保管ラックからコピー用紙を配送できるようになった。館内配送に担う佐川急便の担当者も「工数的にも時間的にもだいぶ楽になった」と話す。

 コスト面でも「出荷時点から小口配送とするよりも、まとめて輸送し、短距離の小口配送にした方が当然、圧倒的にコストメリットが出る」(東田マネージャー)と成果が見えているとし、加えて一時保管スペースに商品を物流拠点から事前出荷する際も、通常の都度出荷品を積載する車両の空きスペースを活用して輸送するため、コスト削減効果があり、また、車両の積載効率も高まり、全体的にも生産性が向上するメリットもあるようだ。

 こうした結果を踏まえ、実証実験は次の段階に移行し、「(2019年からは)さらに踏み込んでいく」(同)という。(つづく)

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