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配送料値上げで続く苦境、食品通販にシワ寄せ、値上げの煽り繁忙期ある企業に

2019年 5月20日 12:00

 宅配大手による配送料値上げが止まらない。大手3社はここ数年、適正運賃収受の取り組みを推進。値上げ交渉の進捗を受け、直近となる前期は大幅に収益改善が進んだ。一方、そのしわ寄せを受けるのが、年末など繁忙期に出荷が集中する季節商材を扱う食品通販だ。中には、収益圧迫から事業の終了を決断した企業もある。ネット販売の市場拡大など市場環境の変化を受けて起こった値上げのトレンドはいつまで続くのか。
 


クール便「おいしい商売じゃない」

 ヤマト運輸は17年10月、基本運賃の値上げを実施した。佐川急便、日本郵便の2社もこれに追随。以降、「適正運賃収受」を名目に配送料値上げの傾向は続いている。そもそも「適正運賃」とは何か。

 「『適正運賃』といってもその水準がどこにあるか、市場環境や景気動向で変わる。原価やエリア別に効率も異なる、宅配業者も掴みきれず、どこまでいってもどんぶり勘定」(倉庫業者)と話すように、妥当な水準を掴みがたいのが実情だ。

 その取り組みの中でも、宅配大手が扱いに苦慮しているのが冷凍配送、いわゆるクール便とされる。「1件あたりの単価でいえば当然、採算が取れない。配送業者も嫌がっている」(前出の事業者)、「昔は”クール便と言えばヤマト”と自負していたが、今は対処できない、と自ら言う営業マンもいる。クール便があるから荷物を受けたくないと言ってくる」(通販事業者)。

 繁忙期、閑散期の落差が大きいものであればなおさらだ。「季節変動があるものはやりたくない。おせちなどは、裏にもできず、中身が寄ってしまってもダメ。おいしい商売じゃない」。こうした中、昨今の配送料値上げの煽りを受けるのが食品通販業界だ。

値上げが影響通販から撤退

 「5月31日を最後に通販から撤退します。会社も8月中旬の解散を決定しました」。宅配大手による配送料値上げが続く中、食品ネット販売中堅のドゥマンは今年5月、通販事業からの撤退を決めた。

 1995年の設立。当初、生鮮品の通販を行っていたが、シュークリーム「濃厚ミルクシュー」のヒットを受け、以降、冷凍スイーツを主力に展開してきた。

 「濃厚ミルクシュー」は、ヤフーの仮想モールで04年から16年にかけて「ヤフーショッピングベストストア」を毎年受賞、楽天の「楽天ショップオブザイヤー」も06年、07年に受賞するなどロングセラーに成長した。その矢先の事業撤退だった。

 事業を圧迫したのは、配送料の値上げ。17年10月、ヤマトの通常配送で200円、昨春に佐川急便で200円の値上げに応じたが、以降も値上げ要請が継続。収益性が悪化する中、今年2月、さらなる値上げ要請を受け、「応じれば東京から関西の送料が1000円になる」と、事業存続が困難と判断した。

 直近の送料は、890円(北海道、沖縄を除く)。北海道が1180円、沖縄が1600円。購入金額5400円以上で送料無料としてきたが、「買い控える顧客が増え、『濃厚ミルクシュー』の売り上げも伸び悩んだ」(同社)と話す。

チーズケーキをメール便で…

 ドゥマンは、売り上げの多くを年末商戦や母の日商戦など季節商材で稼ぎ出していた。通常月の出荷は2万個ほどだが、年末はケーキで月3~4万件、母の日には花を同4~5万件(常温)出荷。「17年の値上げのコスト増をようやく吸収できたタイミングでの要請だった」(同)。

 手をこまねいていたわけではない。値上げの影響を吸収するため、1個あたりの内容量を減らし原価を抑制。当初は、大半を冷凍商品が占めていたが、約2割をメール便に変更した。常温管理が可能なチーズケーキも開発。問題なく配送できるかテストを行い、顧客の了解を得た上で、メール便で届けていた。

 配送を委託するヤマトからは、人手不足を理由に配送方面別の荷物の仕分けなど庫内作業の負担の要請も受けた。

 「協力が得られないならば値上げするほかないとバーターのような提案だった。ただ、持っていけないとなるとビジネスが成立しない。クール便は、クオリティの面からヤマトに頼る以外の選択肢はなく一生懸命やった」。だが、収益改善は図れず撤退。会社は、8月中旬に解散を決定しており、今後は、「社員の再就職を支援していく」(同)としている。

 
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