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【揺れる景表法⑥ 二刀流の是非を問う】 ちぐはぐな「一体的運用」、景表法と健増法、処分に天地の差

2019年 5月20日 13:00

 消費者庁が発足し、表示規制の各法が集まった弊害が「重畳」、規制の重複だ。各法律で規制対象や罰則が異なり、同じ違反行為でも処分の軽重が発生など法の下の平等に反する事例も起こる。規制サイドは複数の法律を巧妙に使い分け、「規制のための規制」が進行する危険性も高まる。特に健康食品の表示では、これがすでに現実だ。

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 「右手に景品表示法、左手に健康増進法。表示対策課は二本の刀を都合良く使い分けている」。公取委OBは食品の表示規制が二刀流となっていることに警鐘を鳴らす。

 景表法は、「優良・有利誤認」、健増法は食品について「著しく事実に相違する表示」、「著しく人を誤認させる表示」を規制するが、対象や罰則は異なる。

 なぜ、二つの法律で同じような規制が行われているのか。景表法の成立過程はこれまでの連載で触れた。健増法は当時、誇大広告の氾濫や、個人輸入したダイエット健食による死亡事故が発生していたことから、2003年に広告規制が盛り込まれた。当時の管轄は厚生労働省。特徴は禁止が「何人も」と規定され、新聞社やテレビなどの媒体も含め、広範な表示規制であることだ。

 実はこの成立過程で極めて重要な論議が行われている。連載のテーマである、法規制と日本国憲法が保障する「表現の自由」の相克だ。

 03年の参議院厚生労働委員会では、健増法による誇大広告の規制対象を質す森ゆうこ議員の質問に、厚労省は政府答弁で「憲法上の表現の自由にも配慮しながら判断する必要がある。一定のガイドラインを示し、違法と判断された事例は積極的に公開して分かりやすくしたい」と回答し、「表現の自由」への十分な配慮を明言。一般への予見可能性の必要性にも言及している。当然のことではあるが、極めて真っ当な感覚であろう。

 森ゆうこ議員もこれに応えて「表現の自由という点で大変難しい問題」と、健増法の慎重な運用の必要性を念入りに再確認している。法規制と「表現の自由」の問題は、極めて慎重に扱うべき問題であると強く認識している訳だ。

 「健増法の誇大広告規制は伝家の宝刀。表現の自由を鑑み、簡単には抜けないように内閣法制局とも慎重に議論した」。立法に関わった厚労省OBもこう明かす。

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 この精神は消費者庁に健増法が移管され、景表法とともに並行して表示規制が行われるようになっても続き、16年まで、1件の執行実績もなかった。

 運用が変化したのが13年、消費者委員会による建議だ。ここでは消費者庁に健食の表示適正化を要求。消費者庁が示したのが、健食に対する景表法と健増法の「一体的運用」だった。

 消費者庁は、表示対策課と食品表示課(現・食品表示企画課)に分かれていた景表法と健増法の執行を一本化。対策課内に設置した「食品表示対策室」が、両法の観点から健食の表示に対する取締りを担うことになる。

 「一体的運用」のメリットを当時の対策課長は、「2つの法律で同時に調査を進め、明らかになった事実に照らして、どちらの法律で対応するか、各法の違いを活かせる」と話していた。だが、これは取締りの理屈だ。

 取り締まる側は規制効果を最大化するため、なるべく強力な法律を適用したい。であれば健増法より景表法だ。

 しかし、事業者側であれば当然、逆を望む。しかし、その裁量は当局に委ねられており、基準はブラックボックスの中だ。「死刑か、執行猶予か。処分内容に天地の差があり、あまりにも不平等」(大手食品メーカー)。「大前提としていかなる法が適用されるか明確に示すべき」と企業法務に精通した弁護士も指摘する。「二刀流」は憲法上、極めて危うい取締り手法と言えよう。

 「一体的運用」は、ちぐはぐな運用も招く。消費者庁表示対策課が行う健食のネット広告監視事業では「ガン」や「糖尿病」など、疾病の治癒や予防に関する効果表現を行っていた、381社の425商品に対して健増法で指導を行った(17年度)。しかし、これは「指導」で済ませる案件ではなかろう。むしろ景表法で厳しい処分が必要ではないか。消費者庁には説明責任が求められよう。

 さらに問題は健増法を媒体へのけん制に用いていることだ。これこそ、立法過程で国会でも懸念された表現の自由への露骨な介入である。しかし、これに対しマスコミは沈黙を続ける。(つづく)
 
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