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【大手仮想モールの夏商戦の現状と展望】 5月猛暑で夏物前倒し、首掛け扇風機や清涼寝具好調

2019年 6月13日 14:00

 広い範囲で記録的な猛暑となった5月が終わり、関東など東日本では梅雨入りとなった。しかしながら、九州や近畿では梅雨入りにやや遅れが見られるなど今年もまた何か例年とは違った気象状況が予想されている。振り返ると昨年は全国的な酷暑となり、季節商品を取り扱う小売業界は大きな影響を受けた。今年はどういった傾向が表れているのか、気温の急上昇があった5月からの夏商戦の立ち上がりや今後の展望・対策などについて各大手仮想モールの取り組みをまとめた。

夏物家電が好調熱中症対策品も

 楽天の「楽天市場」では、Tシャツが好調となっている。今年は人気商品を早めに購入するニーズがあり、昨年以上に伸びている。そのほかにも商品ごとに5月単月で見ると、家電でもエアコンを早期に準備する顧客が多くなり、前年比46・8%増。扇風機は同48・8%増。持ち運びできるハンディファンは同1070・8%増、首掛け扇風機は同22731・3%増と大幅に伸長した。また、今年は環境省から「メンズ日傘」利用の呼びかけがあったこともあり、日傘が同45・7%増。特に完全遮光が売れ筋となっている。空調服は同157・6%増、アームカバーは同32・3%増、水筒は同13・8%増、日焼け止めは同32・7%増となった。そのほか、10連休の関係で水着やラッシュガードの売れ出すタイミングが早くなっている。ほかにも夏の暑さで疲れた体のメンテナンス需要として「リカバリーサンダル」が同124・0%増と好調。同商品については、本来、スポーツ後のリカバリー用として作られた商品だが、夏の外回りからオフィスに戻って足の疲れを癒す用途などでも注目されているという。

 傾向として、小型で持ち運べる”自分だけの”クールグッズに人気の兆しが見られている。

 秋商品の投入についてはファッションの秋冬新作の立ち上がりが例年よりも早くなることを予想。猛暑だけでなく、秋の消費増税をにらんで、比較的高単価な重衣料などが早期に投入されることを見込んでいる。同社によると、近年は例年と気温が違う傾向を示すようになっていることから、場所や時期を問わず急なニーズにも対応できる体制を整えて、顧客の「欲しい」機会を逃さないことを重視する考え。

 ヤフーの「ヤフーショッピング」では5月15日より「夏の暑さ&雨の日対策特集」を開始し、機能性寝具をメインに展開している。5月の猛暑を受けて好調だったのはアイスクリームのギフト券、エアコンクリーニング、冷却スプレー、涼感マスク、冷えタオル、トクホ飲料、ミニ扇風機など。

 今年ならではの商品としては首掛け式の扇風機がある。昨年ごろから持ち運べるミニ扇風機がトレンドとなっており、今年はそれを更に進化させた商品として、モール内での取り扱いが多くなった。

 なお、30度を超える日が続いて5月猛暑のピークとなった22日~28日に関しては売上高が前年比20%増と伸長。気温が高い中、なるべく外に出ずに家の中で買い物を済ませたいというニーズが多かったことで売り上げを伸ばした。

 また、検索キーワードとしては、「猛暑de塩飴」といった熱中症予防の商品名そのものでの検索や、「お弁当」など、5月に開催されることの多かった「運動会」に関連した組み合わせで検索するケースも多く見られている。

 auコマース&ライフが運営する「Wowma!」では各auの企画や集客チャネルにおいて、暑さ対策グッズや毎年実施している「ひんやり特集」の露出を例年より1カ月早めており、GW明けから好調に推移している。5月猛暑では半袖Yシャツ、夏スイーツ、冷感タオル、サングラス、アウトドア用品などが例年よりも早いタイミングで売れていた。

 一方で、今後、猛暑による雨不足が続くことで果物や野菜といった農作物の不作・価格高騰が起きることを懸念している。

 また、今期よりルクサと合併したため、自社物販の強化も実施。中でも清涼飲料水や酒販は自社物販の中でも最注力領域と位置付けており、それらをフックに新規ユーザー購入の拡大を図り定常的な利用につなげていく。加えて、30代~40代の主婦層の利用が多いことから、子供向けの熱中症対策商品も例年以上に強化していく。

 なお、秋商品の投入タイミングについて、現状では例年と同時期を計画しているものの、残暑が長引く可能性も考慮して夏商品と秋商品のどちらも買い物しやすい売り場づくりを行う考え。

消費増税も控え”駆け込み”期待

 イーベイジャパンが運営する「Qoo10」では5月猛暑前後で、夏物家電が例年より早期に売れている傾向にあり、エアコンは前年比70%増、扇風機・サーキュレーターは同35%増で推移。また、アームカバーや日傘、夏向け機能性寝具、UV・ひんやり関連グッズも全般的に好調となっている。今年の夏商品の動きは明らかに早いようで、5月に父の日向け商材のプロモーションを行った結果、例年よりもタンブラーなどの夏商材ギフトの動きが目立っていた。

 6月前半からは夏物アイテム特集を開始し、夏物家電や虫除け・日焼けグッズ、機能性寝具、飲料、水着、夏向けキッチンアイテム(かき氷器、流しそうめん器)などを取り扱っていく。今後も長いスパンでの夏物需要を見込んでいるが、一方で消費増税のタイミングもあるため、夏商品だけでなく秋商品も共に商機が集中する可能性を予想している。

 なお、リクルートライフスタイルの「ポンパレモール」では、現状、ポイント利用先としての活用が進んでいることから、5月猛暑に関しての売れ筋商品に大きな変化はなく、今後の需要予測としても例年との変化は見込んでいないもよう。季節トレンドよりも、今期は10月の増税前後で購買の傾向が大きく変わると見ているようだ。

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 各モールとも今年は暑さが早く到来したことで夏商材の売れ行きが先行して伸長した。天候による売り上げ急増は予想しにくいため、在庫確保の難しさや在庫切れといった問題が生じるものの、おおむねこの状況を好意的に捉えている。加えて、今年は秋に消費増税が予定されていることから、夏の本格化を前にエアコンなどの高額商品の駆け込み需要を期待する声も多く聞かれている。
 
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