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楽天の「送料無料」 公取委が東京地裁に緊急停止命令申し立て、楽天は施策実施へ

2020年 3月 5日 13:45

 公正取引委員会は2月28日、楽天が仮想モール「楽天市場」に導入を予定している、送料無料となる購入額を税込み3980円で全店舗統一する施策が出店者に不利益をもたらすとして、東京地方裁判所に緊急停止命令を申し立てた。公取委が緊急停止命令を申し立てるのは16年ぶり8回目。一方、楽天では3月18日から同施策を実施する方針を変えていない。
 
 公取委では、同施策は楽天が出店者に優越していることを利用し、不当に不利益になるよう取引条件を変更しているもので、独禁法(優越的地位の乱用)に違反する疑いがあるとみており、3月18日から楽天が同施策を実施すると、相当数の出店者の自由な判断による取り引きを阻害するほか、競合との競争に影響を及ぼすなど、公正かつ自由な競争秩序が著しく侵害されると指摘。排除措置命令を出すには期間が必要なことから、緊急停止命令の申し立てに踏み切ったとしている。

 公取委の稲熊克紀第二審査長は「楽天は昨年10月31日に『送料設定に関するガイドライン』を店舗に通知しており、(独禁法違反の疑いがある)行為自体はすでに始まっている」と説明。楽天は「店舗が(送料を加味して)価格調整をしてくれればいいと考えている」(2月13日の決算説明会における三木谷浩史社長の発言)とし、同施策が独禁法には抵触しないと解釈しているが「ガイドライン改正で3980円以上の注文からは送料が取れなくなり、不利益が発生する。また、送料を価格に上乗せすると競争力低下につながるし、単品なら今までと消費者が支払う金額が変わらないにしても、『4000円の商品を2個買う』場合などは、送料込み価格にすれば以前より払う金額が増える。『クーポンなどで対応すればいい』という意見もあるが、事業者まかせだし消費者にそれが伝わらない可能性もある」(稲熊第二審査長)と指摘。また、「施策を実施すれば店舗の売り上げが伸びるのでメリットが生まれる」という楽天の主張については「値上げもあり、伸びる保証はない」(同)と断じた。

 一方、楽天では「事実を厳格かつ真摯に受け止め、裁判所の手続きに適切に対応するが、本施策は法令上の問題はないものと考えている。公取委の調査には、理解を得るべく全面的に協力する」とコメント。その上で「本施策により退店を検討する店舗には特別措置を講じた。さらにセーフティーネットとしての新たな支援施策を店舗へ案内し、売り上げや利益について、不安や懸念を解消するとともに、今後も店舗、ユーザーの声に真摯に耳を傾け、本施策の改善に役立てる」と強調した。現状では予定通り施策を実行する方針だが、緊急停止命令が認められた場合の対応については「仮定の質問には答えられないが、裁判所にも当社の立場を理解してもらえるよう、努力していく」(EC広報課)としている。

 今後は地裁が命令を出すかどうかを決めることになるが、独禁法に詳しい弁護士は「公取委が『優越的地位の乱用』の解釈を固めてきたので、裁判所も認めるだろう。あとはどれだけ早く命令が出るかだ」とみる。命令が下された場合でも、地裁が認めれば、楽天は保証金を供託することで執行が免除される。ただ「制度の存在意義がなくなるので、これまで免除されたことはない」(先の弁護士)という。命令に不服なら東京高裁への即時抗告もできる。

 停止命令違反に対しては30万円以下の過料が科せられるが、これまでの7件で過料が決定したのは1件のみ。また、2004年の有線ブロードネットワークスへの緊急停止命令では、申し立てから2カ月半後に公取委が勧告を下したことで取り下げている。排除措置命令を出すには、調査から半年以上かかるのが普通だが「サンプル調査のようなやりかたで、不利益を被る対象として10店舗程度選び、処分を下す形ならさほど時間がかからないのではないか」(同)。

 制度上は楽天が過料を払って施策を続けることも可能。ただ、先の弁護士は「仮に楽天が緊急停止命令を無視したとしても、数カ月以内に排除措置命令が下ることになるだろう」とみる。また、楽天に劣位し、不利益を被る店舗が多くないという可能性もあるが、「公取委は仮想モール全体がどうなるかについては証明する必要がないので、そこは問題にはならない」(同)という。
 
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