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「ポンタ」流入で成長へ<「au PAYマーケット」始動> “50%増量”に大きな成果

2020年 6月 4日 07:57

 KDDIとauコマース&ライフ(aCL)は5月21日、仮想モールの名称を「au Wowma!(ワウマ)」から「au PAY(ペイ)マーケット」に変更した。ポイントサービスも共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)ポイント」に統合。オープン戦略に舵を切ったKDDIが、ポイントの最大の消費先と位置づける仮想モールの成長戦略とは。
 













 KDDIでは昨年12月、ローソンと資本業務提携を締結。これに伴い、モールの名称を変更したタイミングで同社の独自ポイント「au WALLET(ウォレット)ポイント」をポンタに統合した。既存のポンタカードとの紐付けも可能となり、auPAYマーケットとしてもポンタ利用者の取り込みが本格的に始まることになる。aCLの八津川博史社長は「リアルでの接点が拡大し、コンビニエンスストアのような実店舗も経済圏に含まれたのが大きい。従来のau経済圏と合わせれば、ユーザーは延べ1億人を超えたことになる」と胸を張る。

 KDDIでは2014年に「auウォレットカード(auPAYプリペイドカードに改称)」を発行。マスターカード加盟店での買い物に利用できるプリペイドカードとして利便性は高く、auユーザー向けにばらまいてきたものの、存在感を発揮できていない。また、「auウォレットクレジットカード(auPAYカードに改称)」は仮想モールでの決済に利用すると、ポイント付与で優遇されるなどのメリットはあるものの、やはり存在感は薄い。

 楽天が「楽天市場」と「楽天カード」を軸に、巨大なポイント経済圏を築いていることを考えると、au経済圏は大きく遅れを取っている。また、仮想モールの競合でもあるソフトバンクはスマートフォン決済「PayPay」が一昨年からのキャンペーンで利用者を急拡大、オンライン・リアルによらず、さまざまなサービスを提供する「スーパーアプリ」を目指して機能を強化している。

 KDDIでも、ポンタの取り込みでようやく他社に見劣りしない経済圏ができたといえる。ただ、「1億人のユーザー」といっても額面通りには受け取れない。複数アカウントが多数存在するだろうし、「登録しただけで使っていない」というユーザーも多いからだ。

 ネットエイジアが今年1月に行ったインターネット調査によれば、「利用しているポイントサービス」で、ポンタは46・6%で、Tポイント(65・7%)、楽天スーパーポイント(60・2%)の後塵を拝する3位。特に、楽天ポイントは前年調査の同じ質問では54・4%、ポンタが47・9%であり、差を広げられる結果に。また、ポイントの「貯めやすさ満足度」では、ポンタは30・4%で6位。首位の楽天ポイント(70・9%)に大きく水を開けられた。

 auPAYマーケットの流通額を飛躍的に伸ばすには、まずはポンタポイントを貯めてもらった上で「ポイントの消費先」としてモールへ流入してもらう必要がある。ポンタはユーザーが離れつつあるだけに、「貯めやすさ」の改善は喫緊の課題。そこでKDDIのスマホ決済「auPAY」では、統合直前となる2月10日~3月29日、利用することで最大7万円分のポイントを還元するキャンペーンを開催した。還元総額は毎週10億円で、10億円に達した時点でその週のキャンペーンは終了となるルールだったが、家電量販店などにユーザーが殺到し、開始から1日で10億円に達するなど話題を呼んだ。

 仮想モールでもこれにあわせる形でのキャンペーンを実施。目玉となったのが「お得なポイント交換所」における50%割増だ。交換所はポイントを割増レートでauPAYマーケット限定ポイントに交換できるサービスだが、スマホ決済のキャンペーンで貯めたポイントが付与されるタイミングで50%増量できるようにしたのが大きい。

 八津川社長は「ポイントを手にしたユーザーがさらに得をして、仮想モールでポイントが利用できるという太い流れを作れた。他キャリアユーザーも含めて利用者が伸びたし、auユーザーにとっても、これまで仮想モールを利用したことがない人が買い物をきっかけとなり、既存ユーザーはもっと買い物をするようになった」とうなずく。2月、3月の流通は「力強く伸びた」(八津川社長)という。

 50%増量キャンペーンは、交換できるポイントを絞る形で5月、6月も継続。月一度の「還元祭」や毎月3日・13日・23日の「三太郎の日」に実施するキャンペーンも行っており、「複数のキャンペーンを利用するユーザーの数が積み上がっている。キャンペーンの設計も工夫しており、同時に複数のキャンペーンを走らせ、トップページでアピールしており、ユーザーへの訴求効果も加速しているのではないか」(同)。仮想モール限定ポイントを付与し、利用期限が切れる前に次のキャンペーンを実施して使ってもらい、新たなポイントを付与する、という流れが生まれているようだ。

 もう一つ、auPAYマーケットならではの特徴となるのが、有料の優待サービス「auスマートパスプレミアム(スマパスプレミアム)」会員向けに実施している「送料無料特典」だ。同モールで購入した一部商品の送料が無料になるというもので、原資はauPAYマーケットが負担している。八津川社長は「ユーザー還元という位置づけなので、仮想モール単体でどうこうという話ではなく、収益はビジネス全体で組み立てを図っている。もちろん、単価の低い商品ばかり何度も買われると問題が出てくるが、全体最適を考えて対象商品の入れ替えをしている」と話す。

 送料無料となる対象商品は100万品を大きく超えた。KDDIではスマパスプレミアムもオープン化する方針で、「auエブリデイ」として提供している、主に実店舗を対象としたクーポンのみならず、ネット販売においても、ポイント優遇や送料無料といった特典を、ドコモやソフトバンクなどのユーザーも享受できる。

 八津川社長は「auの戦略サービスである『auPAY』のブランドを冠することになり、いよいよ”お買い物といえばauPAYマーケット”という立ち位置を、名実ともに実現するための準備がようやく整った。店舗には”KDDIが本気でECに取り組む”ことにご期待いただき、一緒にビジネスを伸長していきたい」と胸を張る。とはいえ「最近伸びてはいるが、広告を出してまで強化しようという規模にはまだなっていない」(ある出店店舗)との声もあるように、楽天市場、アマゾンマーケットプレイス、ヤフーショッピングの後塵を拝する状況は変わっていない。

 そうなると、リアルからのポイント流入は今後の成長に欠かせない。KDDIでは、auPAYカードの利用をauユーザー以外でも可能とし、auPAYにチャージした際に付与されるポイントを0・5%から1%にするなど、インセンティブの強化を進めている。PayPayが大きく先行している感のあるスマホ決済だが、各社が販促費を絞る中でどれだけ存在感を高められるかがカギになる。2~3月の大規模キャンペーン後はコロナ禍が直撃するというアクシデントもあったが、最後発となるauPAYが利用を伸ばすには継続したキャンペーンは欠かせないはずだ。その上で「ポイント交換所」や「送料無料特典」など、auPAYマーケットならではの強みをアピールしていく必要があろう。


「分かりやすさ」が好評、2~3月流通額は大きな伸び

<aCLの八津川博史社長に聞く>


 aCLの八津川博史社長(=写真)に今後の仮想モールの方向性などを聞いた。

 ――仮想モールの名称を変更した。

 「auPAYマーケットに変えたことで、”au”や”auPAY”と運営が一体であるという点が、ユーザーへの分かりやすさにつながっている。同時にポンタポイントにポイントサービスを統合したので、オープン接点でのユーザーへの認知拡大も始まっている」

 ――auPAYでは「毎週10億円」キャンペーンが話題を呼んだ。仮想モールへの影響は。

 「auのオープン戦略の一環なので、他キャリアユーザーも含めてスマホ決済を利用していただき、仮想モールにも来訪してもらう、という流れが一段引き上がった。また、auユーザーにもポジティブな影響があった」

 ――キャンペーンでどの程度流通額が伸びたのか。

 「数字は公開していないが、コロナ禍によるネット販売の利用増も重なり、2~3月はマーケットの平均的な伸長率と比べると非常に強く伸びている」

 ――名称変更に対する店舗からの声は。

 「KDDIの本気を感じ取ってもらっているようだ。また、新規顧客を獲得するには”分かりやすさ”が求められる部分があるので、”シンプルで分かりやすくなった”という好意的な声が多い」

 ――auではオープン化を進めているが、仮想モールとして他キャリアユーザーを取り込んでいくための施策は。

 「ローソンとの資本業務提携とポンタポイントへの統合が効果的だ。ローソンというリアル接点の拡大と、ポンタポイントという認知が高く、利用者数が多いサービスが経済圏そのものになったことが大きい。キャリアを問わず、au経済圏を利用するユーザーが一気に増えたわけだ」

 ――auユーザーへの優遇策は。

 「3月にポイントプログラムを刷新し、ステージ制を導入した。通信サービスのau利用者や、『auでんき』の利用者などは高いステージとなるため、お得な形でポイントが利用できる。これまでは仮想モールの利用度合いによるランク制だったが、それ以外のauサービス利用も含めているため、auユーザーなら最初からお得に仮想モールで買い物ができる」

 ――4月に楽天が携帯キャリアに本格参入した。ドコモとソフトバンクも含めて、全キャリアがネット販売に注力することになるが、競合の動きをどう見る。

 「キャリアで取り合いをするというよりも、切磋琢磨していきたい。日本のEC化率はまだまだ低いので、ユーザーがもっとネット販売を利用するきっかけになるのではないか。新しく利用してもらうだけではなく、ネット販売をもっと使ってもらう方向に向かっていけば」(次号につづく)




 
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