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ディノス・セシール  「セシール」を売却へ、来年3月にも、ノジマ傘下のニフティに

2020年12月 3日 07:30

 ディノス・セシールがセシール事業を売却する。来年3月1日付けで家電量販店大手のノジマ傘下でネット接続事業などを展開するニフティにセシール事業を継承させた子会社「セシール」の全株式を譲渡するもの。日本を代表する大手通販事業者同士の初の合併として注目される中、2013年に誕生した大型総合通販は再び別々の道を歩むことになる。

 ディノス・セシールとニフティは11月26日、セシール事業の譲渡に合意した。ディノス・セシールは12月1日付で設立したセシール事業を継承する完全子会社の「株式会社セシール」および子会社でコールセンター事業などを行なうディノス・セシールコミュニケーションズ(DCC)、人材派遣事業などを展開するセシールビジネス&スタッフィング、中国・上海の子会社の賽詩麗商貿(上海)有限公司の全株式を来年3月1日付で、ニフティが総合通販事業を統括する持ち株会社として12月16日に新設する予定の同社の完全子会社「ニフティ・セシール株式会社」に譲渡する。セシール事業売却に伴い、ディノス・セシールは今後、商号を変更する予定。

 なお、DCCについてはセシール事業のコールセンター部門のみを事業売却するため、ディノス・セシールが12月1日付で新設した「株式会社ディノスコールセンター」にDCCが手掛けているディノスのコールセンター事業および化粧品・健康食品のリピート通販などを行なうリテンション事業を継承させ、引き続きディノス・セシールの子会社として運営する。

 セシール事業譲渡後もセシール事業に携わる従業員などの雇用は維持される模様だが、譲渡後に異動する社員数などは未定で今後、詰めるという。

 セシール事業の買収額については30億円程度とみる一部報道もあるが「公表しておらずコメントできない」(ニフティ)としている。

 セシール事業の売却についてディノス・セシールでは「今後も競争力の強化やブランド価値向上を図り、持続的にお客様によりよい商品・サービスを提供していくため、総合的に検討した結果、ニフティによる新たな経営環境下で事業を展開することが最善の選択肢であると判断した」(同社)とした上で、ニフティが展開するインターネットプロバイダー事業で培ったノウハウでウェブへのシフトを加速させ、また、ニフティの会員組織やノジマグループのリソースを活用することでセシールの事業価値を高めることができるとした。

 一方、セシール事業を買収する理由についてニフティは主力事業のネット接続事業と親和性のあるネット販売事業への進出などが狙いとする。セシール事業について「40代以上のシニア女性層を中心に全国規模の顧客を保有する認知度も高い大手総合通販ブランドでカタログ通販を主軸とする事業展開の中、これまで蓄積してきたノウハウを生かしたEC領域の強化を推進している」(同社)と評価。そこに、ニフティが培ってきたインターネット領域のノウハウを活用することでEC事業をさらに強化し、セシール事業のネット販売の事業規模を拡大させていくほか、「セシール事業をグループに取り込むことでニフティが抱える40代以上の男性層を中心としたネット接続サービスの顧客層に通販を展開したり、『セシール』の顧客にニフティのネット接続事業などを広げていくなど相互に顧客を紹介していく」(同社)という狙いもあるようだ。

 なお、ECを強化する一方で、「セシール」の主力であるカタログ通販事業については「今後、継続していくかも含め、これから決めていく」(ニフティ)としている。

 09年にフジ・メディア・ホールディングスが通販事業の拡大などを狙い、グループ会社を通じてセシール株式の公開買い付けを実施。当時、セシールの親会社だったLDH(旧ライブドア)らから株式を取得し子会社化後、両社のスムーズな合併などを図るため、10年4月にグループの通販子会社であるディノスとセシールで持ち株会社、フジ・ダイレクト・マーケティングを新設し、その後、13年7月にセシール、ディノス、フジ・ダイレクト・マーケティングの3社が合併して、年商1000億円超の総合通販企業である「ディノス・セシール」が誕生した。合併後は相乗効果や効率化などを含め両事業の成長策を推進してきたが、セシール事業については通販カタログの見直しなどテコ入れを図りつつも近年は苦戦が続いており、関係筋によれば複数の事業者に水面下で売却を打診していたようで、ネット販売事業を強化していきたいノジマグループが応じた模様だ。

 再び別の道を行くことになった日本を代表する総合通販であるディノスとセシール。特にかつて通販業界のトップに君臨していたセシールがノジマグループの傘下でどう通販事業を展開していくのか。ノジマおよびニフティの手腕を含めて行方が注目されそうだ。



 
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