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「ライブの重要性高まる」【伊勢公一氏に聞く アリババの日本戦略とは?】 サプライチェーン強化も奏功

2021年 2月12日 12:30

 アリババグループでは、越境ECプラットフォーム「天猫国際(Tモールグローバル)」に出店する企業向けの支援を強化している。新型コロナウイルスの感染拡大により、訪日中国人が激減する中で、日本企業にとって越境ECは、これまで以上に重要な販売チャネルとなった。Tモールグローバル日本マーケット新規事業開発担当の伊勢公一氏に中国EC市場の現状などを聞いた。







 ――コロナ禍で中国のネット販売市場はどう変わったか。

 「全体的にネット販売が伸びた。ただ、中国はもともとデジタル化が進んでいた中国をわけで、コロナ禍はそれを鮮明にするとともに、デジタル化やEC化をさらに加速することになった。商材でいえば、健康を意識した商品や、”巣ごもり”に対応した商品が伸びた。越境ECに関していえば、コロナ禍以前の中国は海外旅行へのニーズが非常に高かったが、それができなくなってしまった。そのため『越境ECで海外の商品を購入する』消費者が増えた」

 ――日本からの中国向け越境ECに関しては。

 「昨年11月11日の『天猫ダブルイレブン』では、中国向け越境ECにおける国・地域別流通総額ランキングで、日本が5年連続で1位となっている。中国人が海外商品を購入する際のファーストチョイスであり、以前から継続して需要があるわけだが、さらに伸びているわけだ。化粧品や美顔器が牽引するとともに、ライフスタイルの変化にあわせる形で、健康関連商品やサプリメント、ドリップコーヒーなども伸びた」

 「ホームセンター大手のコーナン商事では、昨年のダブルイレブンにおいて、ライブコマースも活用し、前年比150%(単日ベース)を売り上げた。商材でいえば、トイレ掃除やフローリング掃除のためのクリーナー、衣料用洗剤などが非常に売れている。ただ、日本と中国では消費者の好みが違っており、トイレの芳香剤であれば、タンクに直接入れるタイプが良く売れているという。どんな商品が中国で売れるかというのは、やってみなければ分からない部分がある」


 ――今年の中国における越境EC需要をどう見ているか。

 「『海外旅行に行けない』ことの代替は、引き続き内需に置き換えられるだろう。その一つの選択肢として越境ECがある。現時点での売れ筋やトレンドについては、昨年後半からあまり変わっていない」

 ――コロナ禍を受けて、日本企業に対してどんな支援策を展開したのか。

 「アリババグループとしては、天猫に出店している全てのマーチャントに対して、昨年上半期の出店料を免除した。間接的な支援としては、サプライチェーンを強化している。昨年9月末には、当社の物流関連企業である『菜鳥網絡(ツァイニャオネットワーク)』が日本市場に参入した。BtoCの倉庫は東京と大阪に、BtoBの倉庫は横浜と神戸に構えている」

 ――サプライチェーン強化はコロナ禍以前から取り組んでいたのか。

 「結果的にコロナ禍と重なる形となったが、ダブルイレブンの物流量が年々伸びており、グループとして物流網を整備する必要性が高まっていた。昨年のダブルイレブンに向けての出荷は、菜鳥側で費用を一部負担する取り組みも行った。菜鳥の物流サービスを利用し、配送効率を40%引き上げるとともに、輸送におけるリードタイムを18~22日から11~13日に短縮できた企業もある」

 「例えばコーナン商事では、中国の港まで航路で運んでから通関を受け、物流業者が中国の消費者まで届けていたが、日本国内から菜鳥のサプライチェーンに切り替えることで、コスト削減とリードタイム短縮につながった」

 ――中国ではコロナ禍でライブコマースの利用が大きく拡大している。

 「巣ごもりを余儀なくされ、多くの消費者がスマートフォンに触れる時間が増えたことが後押ししている。マーチャントにとっては『ライブコマースにどう取り組むか』は大きな課題であり、どんなライバー(配信者)と組めるかが重要になっている」

 「当社ではライブコマースのプラットフォームとして『タオバオライブ』を設けている。当社がKOL(インフルエンサー)をブッキングして展開する形もあれば、ライバーがプラットフォーム外も含めて独自のライブをするという形もある。当社としてもできる限りこうした機会を増やしたいと思っており、昨年は柔軟にライブコマースができる環境を整えることができた」(つづく)
 
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