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【消費者安全法 381 ジョーカー規制の行方④】

2021年 4月 1日 12:00

使い手を選ぶ「宝刀」

 変幻自在のジョーカーとして、消費者に注意喚起できる消費者安全法38条1項(=381)。これまでの事例では、問題あるケースに適用されており「鉱山のカナリア」として機能している。しかし、運用にあたっては問題点もある。

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 「処分ではない。法律上の規定はない。消費者安全法をよく読んで」。虚偽誇大なアフィリエイト広告へ381を適用した消費者政策課の担当者は、事業者への弁明の機会の付与についてこう話す。

 この点に381の問題点が現れている。

 381は、法律上「公表」という位置づけだ。これは「天気予報」「地震速報」などと同じで国民に情報を伝えるもの。

 ところがその内容は「健康被害」「虚偽誇大広告」などであり、これに接した消費者は、当然のことながら、その製品を買わなくなるだろう。会社の信用も棄損する。

 行政手続法では、行政が事業者に不利益な「処分」を行う際には、「弁明の機会」を与える(付与)するように定めている。

 景品表示法では、この弁明の機会を付与して、事業者の言い分を聞いたことで、処分が行われなかったこともあるようだ。

 しかし、381は「処分」ではなく「公表」のため、これが必要ない。このため、被害件数が多いことを理由にいきなり公表することも可能だ。

 現状は運用上、調査や事業者への事前通告を行っているが、処分を前提とした慎重な調査と比べてどうかは不明だ。

 予見可能性も異なる。処分の場合は、「具体的な基準(処分基準)を設定し、かつこれを公にしておくように努めなければならない。

 しかし、381にはそうした制約はない。このため、注意喚起を行う基準について「公表は差し控えたい」(消費者安全課)、「ございません」(消費者政策課)とする。

 公表とはいえ、前述の通り、強い制裁効果を持つことから考えれば、基準がブラックボックスであることには疑問があろう。

 さらに事実に反した公表=誤爆の危険だ。公表という制度は、速報性と制裁効果のバランスが難しく、常に誤爆の危険性をはらむ。

 例えば、新型コロナウイルスのまん延でも、当初はパチンコ屋が問題視され、大阪府は営業自粛に従わないと店名が公表された。今は東京都と一部の飲食店が対立して、裁判に発展している。

 仮に381で誤爆が発生したら、当該事業者は国家賠償法での損害賠償請求となる。特に中小企業には、現実的にハードルが高い。特に健康被害は、因果関係の立証が難しく誤爆の危険性が高い。ケトジェンヌのケースでも「消費者は解約を目的に連絡。健康被害を理由にしたので件数が急増したのでは」(大手通販企業)という指摘もある。

 消費者被害をもたらす悪質なケースには381を積極的に使うべきだろう。特に定期コースへの誘導詐欺のような事例は「バンバンやればいい」(同)。悪質なケースに381を使っていることが、真っ当な事業者にメッセージとして伝われば、消費者庁への理解と支持も広がるはずだ。

 「本来であれば、ジャパンライフなど預託商法にも使うべきだった。そうすれば被害を未然防止できた」(同)との指摘もある。381は使い手を選ぶ宝刀であるともいえよう。消費者庁担当者の力量もまた問われる。(おわり)
 
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