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【トクホ 終わりの始まり 6.しらける業界㊦】

2021年 5月20日 12:30

魅力ない表示でオリゴだらけ

 初の許可が疾病者を対象にし、疾病名が明記された製品となった「特定保健用食品(トクホ)」。製品数は伸び悩み、早くも制度普及に黄信号が灯る。理由はさまざまだが、企業とマーケットニーズとの乖離が要因だ。

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 トクホは当初、半年に一回のペースで許可が公表されていた。このこと自体がお役所仕事の典型だ。市場ニーズが刻々と変わるなかで、常に新製品を出し、CM等で店頭に活気を与えねばならない企業からすれば、浮世離れした対応だろう。

 さらにこの頃はトクホの表示について、敢えて「標示」と別の言葉を用いていた。これも古臭いイメージを印象づける。

 初のトクホが2品目誕生した後、93年度に新たに11品、94年度には10品が許可される。

 制度制定から3年で計23品目。社会実装にはほど遠い。許可を得ても、実際に販売されるまでには、タイムラグがある。企業の戦略上、許可を得ても販売はせず「お蔵入り」とする可能性もある。

 食品の機能性を用いて、健康の保持増進を進めるというトクホが、狙い通りに社会実装されたとは、とても言えない。お寒い状況だ。

 繰り返しになるが、機能性食品の熱狂が覚め、トクホになって、大幅に範囲も表示も制限されたことで、業界には「しらけムード」が漂っていた。

 業界や各社の取組みが、徒労に終わった負の影響は小さくはなかった。担当者が社内で狼少年扱いされたことも想像に難くない。

 企業は「トクホ」の表示が消費者のニーズに合致、喚起するならば、制度を利用する。見込めなければ、利用しない。製品が登場しなければ、消費者には認知が広がらず、購入もしない。このスパイラルにはまれば、制度は床の間の飾り物だ。

 実際、新たに登場した当時のトクホ表示は、まったく魅力が感じられない。

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 3番目にトクホの許可を得たのはサントリーの「ヨーグリーナ」。関与成分は「キシロオリゴ糖」。表示は「腸内のビフィズス菌を適正に増やし、おなかの調子を良好に保つ飲料である」。

 オリゴ糖を取って、ビフィズス菌が増えて、おなかの調子がよくなる。

 教科書レベルの、当たり前の話であろう。ところが、この内容を表示するために、わざわざ企業側で臨床試験を行い、機能性や安全性の審査を受け、数年かけて許可を得る訳だ。一方で、売れなければ、やがて廃番。こうなれば社内で、責任問題も浮上しよう。

 4番目は宝酒造の「カルシウムパーラー」。関与成分は「クエン酸リンゴ酸カルシウム」。表示は「カルシウムの人への吸収性が高く、食生活で不足しがちなカルシウムを摂取するのに適する」。

 カルシウム不足には牛乳や小魚というのは小学校の家庭科で習う内容だ。この表示で製品を選択するとは考えにくい。

 しかもこの製品には注意事項が義務付けられていた。内容は「本品100mlには70mgのカルシウムが含まれている。食生活における成人のカルシウム所要量は、1日600mgであり、他の食品からの摂取量を考慮の上、適量摂取すること」。

 トクホが対象とする健康な人で、一日にどれだけカルシウムを摂取しているか測っている人は、給食の栄養士か、よほどの健康マニアであろう。

 このネガティブ表示を読めば、多くの消費者はわざわざお金を払って、製品を購入することを控えるだろう。購入させないように仕向けている嫌がらせのような義務表示で本末転倒である。

 表示の弱さや厳しい義務表示に加え、バラエティの少なさもネックとなった。

 施行3年を経た23品目のうち、13品目の関与成分は「オリゴ糖」だった。

 製品だけでなく関与成分の安全性等をスクリーニングするため、知見の集まった成分しか、許可とならないからだ。

 同じ成分で許可表示もほぼ同じ。企業側とすればようやくに許可を受けたトクホの競争優位性も弱まる。このサイクルで、トクホ利用はさらに遠のく。

 「当初はあまりにトクホ数が少なく、厚生省の担当者が、企業に利用をお願いして回っていた」(厚労省OB)

 「しらけないで しらけないで しらけたけれど」。前回紹介した「しらけ鳥音頭」はこう結ばれる。企業を回る担当者の胸にこの歌詞が去来したかは知る由がない。(つづく)

 
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