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ザ・スーツカンパニー 新宿にOMO店舗開設、4ブランドが集結、ECと相互送客を

2021年10月 7日 13:00

 青山商事は10月1日、若年層向けブランドの「ザ・スーツカンパニー(TSC)」業態が展開する4つのブランドを集めた新店舗「TSC SQUARE(ティーエスシー スクエア)」を、都内・新宿に開設した。OMO型の新業態店舗として運営していき、デジタルツールも活用することでECとの相互送客も促していく。
 






 元々、TSCは新宿、渋谷といった都心部で展開する店舗が多く、コロナ禍に伴う緊急事態宣言下での集客に大きな影響を受けていた。加えて、スーツ市場全体としても冠婚葬祭イベントの縮小やオフィスでのテレワーク導入などが進み、スーツに対する価値観も変化していったという。

 一方で、若者を中心に低価格帯からでも購入できるようになったオーダースーツの市場は伸びているようで、購入経路としてもECが年々拡大。EC事業は2015年度と比較して、現在は約3~5倍のペースで伸びているという。同社でもそういったニーズに応える新たな事業モデルとして、今回の新店舗を開設した。

 同店の売り場面積が約462平方メートルで、ビジネスアイテムがメインのTSCに加え、レディースの「ホワイトザ・スーツカンパニー」や、オフィスカジュアルの「ユニバーサルランゲージ」、オーダースーツの「ユニバーサルランゲージ メジャーズ」も展開。各ブランドの異なる顧客層を一手に集客しながら、オフィスとカジュアルのブランドの垣根を超えた組み合わせのコーディネートも提案し、それぞれの良さを訴求していく。

 EC連動としての施策では「洋服の青山」でも取り入れている、店頭のデジタルサイネージを使ってECや全国の各店舗の在庫と連動させる「デジタル・ラボ」を導入。店舗在庫をゲージ見本として、試着や採寸が可能となるため、実際の商品の色柄や着心地などを確認した上で接客を受けながら購入でき、商品も自宅配送が選べる。直しがない商品の場合はおおむね2~3日で配送する。

 また、サイネージ上には全国の店舗スタッフ自身がモデルとなって、お勧めのコーディネートを投稿しているスナップ写真の一覧も見ることができる。スタッフの身長も明記されているため、来店者が自身の体形に近いスタッフの気に入ったコーディネートなどをクリックすると、着ている商品の詳細とともにQRコードが表示される仕組み。当該商品の店舗取り置きも依頼できるほか、その場でスマホを使ってQRコードからECで購入することも可能だ。

 そのほか、需要が伸びているオーダースーツ商品に関しては専用売り場も設けており、初回の店頭での採寸データなどをもとに、2回目以降の購入はECからでもできるような仕組みを取り入れていく。

 「スーツだからこそすべてネットというわけにはいかない。あえて、店舗をショールーミングとして展開して触ってもらい、着ていただく」(河野克彦TSC事業本部長)とし、その中で商品のディティールや風合いを感じることで、ECでの購入につなげていくようなビジネスモデルを構築していく。

 OMOの一番の狙いとしてはネットとリアルでの「相互送客」を挙げており、これによりファン化や購入金額の向上につながると説明。EC購入者に実店舗で使えるクーポンを発行したり、EC限定商品を実店舗でも置くなどの施策も検討している。

 さらに、OMO型店舗では売り場の縮小や在庫の低減といった効果も見込めるため、経費の圧縮にも貢献できるとした。

 なお、EC注文を受けた商品については、在庫のある該当店舗からか、通販センター(横浜)からの2種類の発送パターンがある。受注先とのリードタイムも見ながら最適な物流を選択していく。





河野TSC事業本部長「各店の在庫を縮小できる」

<記者会見での一問一答>

 9月30日に開催した記者説明会における河野克彦TSC事業本部長と、報道陣との主な一問一答は以下の通り。

 ――OMOの経営戦略的な意味について。

 「今までは一等立地戦略の中で大きい店を作っていたが、あえて半分程度の売り場にすることでまず家賃が軽減でき、(新店舗では)ECで買うこともできるため、各店内に商品を並べることなく在庫を縮小できる」

 ――完全なショールーミング店舗なのか。

 「そのまま購入して持ち帰れるが、たくさんの荷物になる場合は送ることもできる。また、例えば黒色はあるが(色違いの)グレーが欲しい場合は、まず、黒で採寸してもらいその後、ECで購入してもらうということが考えられる。ショールーミングというよりかはリアルとECの融合ということ」

 ――今後の実店舗展開について。

 「コロナの状況もあって一旦は、不採算店舗を閉めており、今残っている店舗は利益が十分見込める店舗。そのため、今の店舗を少しずつ『TSC SQUARE』に変えていく作業と、新店舗にもチャレンジしたい。ショッピングモールなど、まだ出店余地はある」

 ――新店舗に先駆けて試験的に開設した2店舗で見えたOMOのメリットとは。

 「デジラボの稼働率であったり、オーダースーツの比率は既存のレギュラー店舗より上昇している。また、店舗効率の面で在庫を持たなくて済むことが一番大きいメリット。紳士服はスーツもスラックスもサイズが豊富なことが特徴。そこであまりサイズを持たずに済んで、デジラボを通じてセンターで出荷することで、人員の稼働率も抑制しながら効率よく運営できる」

 
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