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楽天 「価格・在庫最適化」に効果、「PIOP」高い精度で自動値付け

2022年 1月20日 12:50

 楽天グループの提供する、「楽天市場」出店事業者向け価格と在庫の最適化プラットフォーム「Price and Inventory Optimization Platform(PIOP)」が、企業情報化協会(IT協会)の主催する、2021年度「IT賞」において、「顧客・事業機能領域 IT賞」を受賞した(1826号で既報)。

 PIOPには楽天のビッグデータを活用した需要予測の技術が組み込まれており、価格設定や適正在庫のシミュレーションを通じて、仮想モール「楽天市場」の出店店舗に価格設定や在庫最適化の提案を行うほか、事業者の運営戦略に基づいた予測やシミュレーションを行うことを可能にしている。

 同社では2012年から価格最適化への取り組みを開始。まずは書籍通販「楽天ブックス」へのサービス提供を開始し、日用雑貨、ペット用品、ネットスーパー、ファッションとグループ内の直販サービスへと広げていった。十分な効果を得られることが分かったため、2019年には楽天市場店舗向けサービスとしてリリース。近年は在庫最適化を開始したほか、店舗が指定した上限ポイント変倍率に対して、楽天のAIが商品ごとに最適化した倍率を算出し、日々自動更新する「運用型ポイント変倍」サービスもリリースしている。

 PIOPには2つの値付け戦略があり、「売り上げ・利益最大化モデル」と「在庫削減モデル」の2種類から選択が可能。「売り上げ・利益最大化モデルの場合、価格に対する売り上げの反応を分析、値上げと値下げを行いながら売り上げと利益の最大化を図るというもの。価格競争で収益が悪化している店舗や、経験則で値付けをしている店舗などの利用を想定している。売り上げ・利益のバランスは5段階での調整が可能だ。一方の「在庫削減モデル」は、滞留在庫に悩んでいる店舗が、期限までに在庫削減できるよう、適切なタイミングで価格の値下げを行うことで、不要な値引きをせずに商品をさばいていくというモデルとなっている。

 PIOPを導入した「野球用品ベースボールタウン」の場合、薄利に悩んでいたものの、商品の適正価格が把握できておらず、約9500商品を扱っていることから、価格改定作業そのものが大きな負担になっていたという。導入後は商品価格を適正に維持することで販売個数が伸び、売上高は107・2%増、利益額は73・7%増になった。
 価格調整は競合店舗にあわせるわけではなく、「何円の時にどれだけ売れたか」という自店舗における過去の販売実績をもとに需要を予測した上で行っている。

 「商品の持つシーズナリティーやトレンドを考慮した価格の提案もしている」(テクノロジープラットフォームディビジョンビッグデータ部の平松怜子氏=写真㊤)。例えば花を扱う店舗であれば、母の日が近くなると需要が急増するため、無理な値下げをしなくても商品は売れる。母の日にあわせて大きな値引きをしていた店舗が、PIOPを導入したことで例年よりも高い価格で販売したにも関わらず、販売個数は落ちなかった、という事例もあるという。
 PIOPは型番・オリジナルを問わず活用できるが、新商品の場合は、最適な価格を割り出すために、ある程度販売データを蓄積する必要がある。

 利用店舗は増加傾向にあり、特に「日用品を扱う店舗や家電を扱う店舗など、取り扱い商品の多い店舗が導入するケースが目立つ。全体の10%程度の売れる商品の価格は定期的に変更しても、残りの90%は発売からずっと変えていないようなことも多く、ツールを導入する動機になっているようだ」(コマースカンパニー楽天市場企画部の森田尚規氏=写真㊦)。

 今後はホテル・施設や、スーパーマーケットへのPIOP導入を目指す。スーパーマーケットの場合は、POSデータを活用して需要予測を行い、最適な価格を電子タグを通して反映させる仕組みを考えているという。また、楽天の直販サービスにおいてPIOPを使ってロジスティクスの最適化を進めており、将来的には楽天市場の店舗向けにサービスを展開していく。価格だけではなく、さまざまなオペレーションについて、AIで予測することで最適化していく考えだ。

 
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