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仕入の見直しや検品を強化【下川英士社長に聞く 全国通販のカタログ立て直し策㊤】 普段使いの低価格な服を拡充

2022年 8月18日 12:30

 ハルメクホールディングスのグループ会社でシニア向けのカタログ通販が主力の全国通販は、この2年間で商品力の強化や顧客の離脱防止などに努めたことで業績が回復している。2期連続で黒字化を達成したほか、顧客数やカタログのレスポンスも大きく改善しているようだ。「カタログ通販の難易度はそこまで高くない」と語る下川英士社長(=顔写真)に、カタログ通販の立て直し策などについて聞いた。

 







 ーー厳しい財務状況だった全国通販の社長を引き受けた。

 「ハルメクホールディングスが2年ほど前にノーリツ鋼機からMBOで独立したのとほぼ同時期に副社長という立場で全国通販に入社し、翌年には社長として会社の再生を任された」

 「カタログ通販は、ビジネスとしての難易度は高くないと思っている。シンプルに小売業なので、お客様の数が増えれば売り上げは拡大するし、顧客獲得にかける経費をコントロールすれば利益も出せる。文字通り『小さく売る』という範疇で物事を考える限り、カタログもECも店舗も同じで、カタログだけが特別難しいビジネスだとは思わない」


 ーー社長就任後、黒字化に向けて何から手をつけたのか。

 「小売業というビジネス形態を前提にすると、顧客の数は大事だ。無駄なコストを削減するのと同時に、事業を再生し拡大させるには顧客数を増やす必要がある。まずは減り続けていた顧客数を反転させるためにも、お客様の離脱を防止することに力を注いだ」

 ーー具体的には。

 「ハルメクホールディングスの宮澤社長が、私の社長就任前に品質の向上を掲げていて、その方針はそのまま引き継いで強化した。具体的には、仕入れを見直した。商品の品質向上に対する当社の考え方に賛同し協力して頂けるサプライヤーさんとの取り引きを拡大し、それ以外は縮小した」

 「もうひとつは、海外の指定検品所制度を導入した。従来はそうした制度を導入していなかったので、当社が設定した基準に基づく第三者機関を通した検品を徹底することで、基準外の商品が入荷されることを防いだ。基準を明確にすることでサプライヤーの目線統一を図った」


 ーー仕入れの見直しや検品強化の成果は。

 「この2年間で品質に関するクレームは約6割減少し、一定の成果が得られた。品質面の支持が得られたことでお客様の離脱防止に一役買っている」

 ーー顧客の離脱防止に向けたそのほかの取り組みは。

 「カタログのレスポンスの向上を図ってきた。離脱するということは、再購入をしてくれていないということ。魅力的な商品やサービスがあるかないかが、顧客の離脱と密接に関係している。まずは再購入してもらえるようにレスポンスを高めることに注力した」

 ーーカタログのレスポンス向上に向けて取り組んだことは。

 「品質の向上を図りながら、より良い品ぞろえにすることでレスポンスを高めてきた。当社はアパレル商材の構成比が高いため、まずはアパレルカテゴリーにメスを入れた。具体的に言うと、普段使いできる低価格商品を拡充した。元々、当社のアパレルカテゴリーはデザイン性のあるお出かけ着で、中高価格帯の品ぞろえが大半だった。そこで、少しデザイン性を抑えて普段使いしやすい服を3割程度まで増やした」

 ーー普段使いの服を増やす上で大事にしていることは。

 「普段使いの服にはトレンドが大事になる。デザイン性が強く、価格が高めなお出かけ着にトレンド感を持たせると思われがちだが、一番着用する機会の多い普段使いの服にこそ今のトレンドをとり入れることが重要だと思っている。よく着用する普段使いの服は短サイクルで買い替えるので、トレンド感を持たせるのが効果的だ。色使いやシルエット、スタイリングのトレンドは毎年変わるので、そうした流行りを普段着に取り入れている」

 ーートレンドをとり入れるために行っていることは。

 「トレンド感のある服を作るには情報力が大事になるので、MD担当者がマーケットリサーチと取引先からのマーケット情報の収集にあてる時間を増やした」

 ーー商品力は上がっているのか。

 「上がっている。これまでの取り組みは、ともすると品ぞろえのバリエーションを増やすことに終始してしまう場合もあるが、お客様は品ぞろえを買うのではなく単品を買うので、その本質が抜け落ちないよう、単品で価値がある商品の開発に重点を置いてきた」

 「また、カタログ1ページ当たりの掲載型数を従来カタログの半数以下にした。そうすると、1型で獲得しないといけない売り上げが大きくなるので、品ぞろえのバリエーションで売り上げを確保するという発想にはならず、単品の商品力を高めようと考えるようになる。商品力は最終的には、いかにお客様が求める価格で提供できるかという勝負になるので、どこで生産するか、どんな素材を使うかという部分まで吟味した商品開発の工程に切り替えた」


 ーーレスポンス面の成果は。

 「2年間の取り組みはシニア層向けのマスマーケットである普段着の単品開発に限定していて、中高価格帯のお出かけ着の部分は変えていないが、カタログのレスポンスは2年間で約30%上がった。商品へのクレームも減ったことで、顧客の離脱を大きく減らすことができた」(つづく)


 
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