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プライバシー保護の重要性増す<「楽天オプティミズム」から> グーグル・Metaが広告の未来語る 

2022年10月13日 12:00

 楽天グループは9月28日と29日の2日間、「楽天オプティミズム2022」をオンラインで開催した(前号で既報)。今回は、グーグルマネジングディレクターの川合純一氏(=画像中央)、Meta(Facebook Japan)執行役員営業本部長の鈴木大海氏(=画像(右))、楽天グループ執行役員アド&マーケティングカンパニーヴァイスプレジデント広告事業事業長の紺野俊介氏(=画像(左))によるセッション「データがもたらす広告の未来」を紹介する。

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 紺野俊介氏(以下、紺野)「どのような考え方でユーザー体験を作っているのか」

 川合純一氏(以下、川合)「テクノロジーが進化する中で、昔よりもデータが簡単に手に入るようになった。特に、スマートフォンの普及で、個人により近い情報が手に入るようになってきた。このデータを使い、自分のプロダクトやサービスを磨くことが可能になった。一方で、個人情報、プライバシーに対する懸念が大きくなっている。グーグルとしては、高度なセキュリティー技術やデータの厳格な取り扱い、ユーザー自身がプライバシーをコントロールできる仕組みで個人情報を守っている。スマートフォンで明日の天気を検索すると、位置情報を使って自分の今いる場所の天気が表示される。ユーチューブでは過去の動画の視聴履歴から他の動画を推奨している。また、検索履歴等から『近い将来引っ越しを考えているのでは』ということが推測できる場合は、関連した広告を表示している」

 鈴木大海氏(以下、鈴木)「当社では、2億を超えるビジネス関連の人たちにサービスを使ってもらっている。最も大事なのは、利用者に関連性の高い広告などを届けること。フェイスブックなどの『フィード』は時系列ごとに並んでいるわけではなく、動画の閲覧データなどを元にその人に最も関連性の高いコンテンツを届けている。こうしたパーソナライゼーションとデータのプライバシーは両立できると思っている。ユーザーが広告の表示の仕方を管理できるようにしたり、当該ユーザーがどういったトピックに興味があるかを説明したりしている。興味・関心は変遷するので、行動データやシグナルを最大限活用する一方、プライバシーを重視し、最適なコンテンツを届けるようにしている」

 紺野「プライバシーに配慮した広告の実例は」

 川合「NTTドコモとの取り組みでは、ドコモが個人情報を除いたユーザーデータを当社に渡し、当社ではAIを活用して該当しそうなユーザーに広告を配信するという手法を使っている。この事例では、個人情報のやりとりは全くないし、広告は『条件に当てはまりそうな人』に配信している。個人情報に関心が高まる中で、こういった手法の広告が主流になってきている」

 鈴木「データは非常に大事だが、プライバシーの重要性が叫ばれて、法令順守もより厳しく求められている。ブラウザーや端末に依存しない形で、データを広告主から当社に送ってもらうことが重要だ。例えば、新規顧客なのか既存顧客なのかが分かる形でデータをもらう必要がある。興味・関心は変遷するので、昨日まではカメラが好きだった人がオーディオに関心を移すこともある。当社の『コンバージョンAPI』という、ブラウザーとは別にそういったシグナルを送ってもらうやり方がある。また、広告主とプラットフォームが、安心・安全な環境を構築し、個人が分からない形でやり取りする『データクリーンルーム』という手法もある」

 紺野「ユーザーの体験価値はどう変わる」

 鈴木「例えば『メタバース内の店舗で商品を手に取ったが購買しなかった』場合、『買わなかった』だけではなく『手に取った』ところまで分かるかもしれない。データそのものがますます増大していくので、AIの活用などで、本当に有用なデータを選定していくことが大事になる」

 川合「少し前は『二子玉川に住んでいる人』とか『20代男性』というターゲティングしかできなかったが、今は『ちょうど二子玉川を歩いていて、2週間前にアディダスのスニーカーを購入し、冬休みにスキー旅行を検討していて、40代男性で子供は2人、近い将来に引っ越しを検討している』ということもデータとしては推測できる世界に入った。ただ、ここまで来るとユーザーが気持ち悪さや不安を感じる。秘密を打ち明けた人が信頼できて、他の人に秘密を漏らさないのであれば安心できるはずで、ユーザーはそれを見極めることが大事だ。当社でも『広告センター』というサービスを始める。これは、『広告に自分のこういったデータは使われたくない』など、ユーザーが広告表示を一元管理できる機能だ」

 紺野「楽天でもさまざまなサービスを提供している。楽天と広告データをどう捉えているか」

 鈴木「利用者が何に関心を持っているかが重要なので、安心・安全を第一とした上で、楽天市場と連携しながらデータを集めている。例えばSK―Ⅱに興味・関心がありそうな利用者を当社と楽天とで分析し、当該利用者にはフェイスブック・インスタグラム上で広告を表示するという取り組みを開始した」

 川合「楽天経済圏を持つ楽天のポテンシャルは大きい。楽天がオリジナルで持っている購買データや旅行データ、金融データに関して、個人に嫌な思いをさせない形であれば、消費者にとって有益な広告や情報を提供できるプラットフォームになるはずだ」
 
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