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自意識と規制にかい離【山田養蜂場 措置命令の背景④】 元社員「疑問の声あげにくい構造」

2022年11月14日 13:00

 山田養蜂場は、少なくとも2度に渡り表示違反リスクに直面した。変化する規制と自意識のかい離に気づく確かな機会はあったが、表示管理の体制が抜本的に変わることはなかった。「コロナ対策」の広告は、どう作られたのか。

 「これはまずい」。処分を受けた広告表現をめぐり「社内でも疑問を持つ者はいた」と、同社関係者は明かす。

 関係者によると、表示管理のおおまかなプロセス(=)は、販促部門が作成した広告を、商品企画、顧客対応窓口など各部署が確認。内容を集約した上で、「最終的に社長が確認していた」という。一方、販売関連部署から独立して表示の妥当性を指摘する品質保証・薬事管理関連の部門は「ない」。

 同社元社員も「大半の広告、DM、会報誌に目を通していたはず」とする。問題となったコロナ対策関連の表示も商品企画部門の担当者は「赤(修正)を入れていた」。だが、結果的に修正されることなく顧客の目に触れることになる。社長報告で販促部門と調整が進められたが「なぜ書けないのか、という鶴の一声で表示規制の観点と顧客に採用が決まったと聞いている」(同)と話す。

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 この元社員は、ガバナンスが効かなかった背景に、トップダウン型の組織構造があったとする。「代表自ら健康効果を実感して信念を持っている。本来踏んではいけないレッドラインがあり、使命感との相克が生じるが、法律起点ではなく顧客視点を突き詰めた結果」。強力なカリスマ性を持つ創業者や経営者のキャラが事業に反映されるのは通販でよくみられる構造だが、各部門が縦割りで、責任を自分事化できていないという。

 少なくとも元社員が在籍した当時は、月1回、窓口対応の一部従業員を除く全社集会で、社員表彰や企業理念を定期的に共有する機会が設けられていた。一部の幹部、従業員は就業時間以外の休日も顔を合わせる機会があり、連帯を深めていたとする。

 社外と接する機会の多い商品企画部門は、規制とのかい離を意識する機会もあり、「一度となく、NGを出していた」というが、「使命感の共有があり、疑問を持ってもそれを強く言えない組織構造になっていた」とする。処分対象のプレスリリース、DMを含め、会報誌など顧客向け媒体で繰り返し”レッドライン”を踏む中で「感覚が麻痺していたのでは」とみる。

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 同社関係者は、今回の処分を受けて販促部門の責任者が降格されたと話す。ただ、今後の管理体制の見直しには、「これまで以上に気をつけようという共有はされ、”そうだね”という雰囲気はあるが、そこまで。賞罰はトカゲの尻尾切りで構造を変えなければ本質的な問題は解決に至らない」とみる。

 山田養蜂場は、コロナ対策関連の表示に社内で指摘の声があったかについて、「気をつけていたが結果として出てしまった」と、肯定も否定もしない。

 表示管理のプロセスで、山田社長が主要な表示物を確認するプロセスがあるかは、「媒体により行うものもある」としたが、処分対象の広告は「確認していない」と回答した。品質保証部門、薬事管理部門の設置は「今後の課題として検討する」としており、従前はなかったとみられる。

 処分を受けた責任者の賞罰・異動は、「従業員への評価は答えていない」と明らかにしなかった。


 
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