インシップ広告差止訴訟 適格団体が控訴、社会一般の“消費者像”問う裁判に
2022年12月 8日 11:00
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裁判は、インシップが販売する広告が医薬品と誤認され、景品表示法の優良誤認にあたるとして是正を求めたもの。今年9月、岡山地裁が消費者ネットおかやまの請求を棄却した。
判決は、広告について「頻尿の男性に向けた商品との印象を受ける」と判断する。ただ、疾病名や具体的な治療効果の言及はなく、体験談も抽象的内容にとどまると評価。医薬品との誤認は生じないと判示した。「個人の感想です」、「健康食品のインシップ」といった記載から打消し表示の有効性も認めた。
ただ、消費者ネットおかやまはこれが「裁判官レベルの認識」で、一般消費者の認識を誤って考慮していると控訴状で指摘する。控訴審の初回期日は来年1月26日。
控訴状では、「カプセルタイプ」であり、「1日の摂取量目安2粒」など医薬品に類似した形状や使用法となっていると指摘。「健康食品のインシップ」との表示や体験談の打消し表示も目立たず、消費者が認識できないとしている。一審はノコギリヤシエキスの頻尿改善効果も「否定できない」と評価したが、「効果を裏づける論文は存在するが、広告は両論併記を行っていない」とする。
適格団体の主張の前提には、健食に対する根強い不信感があるようだ。ただ、控訴状で示した主張が認められる可能性は低いのではないか。
錠剤・カプセルなど形状規制は、医薬品との区分を示す通称「46通知」でかつて判断基準の一つに示されていた。ただ、規制撤廃からすでに約20年が経過。「目安量表示」も同通知で摂取のタイミングを明確に定める医薬品の「用法用量」規制に配慮したものだ。
この主張が容れられれば、大半の健食は医薬品との誤認が生じることになる。健食が2兆円規模の市場を形成する中、その商品が「カプセル」というだけで、医薬品と誤認する消費者がどれほどいるか。打消し表示が「目立たない」との主張も、団体の主観を強く反映している。
それでもなお、一審判決の誤りを指摘。自らの認識が「社会総体としての一般的消費者の認識」(控訴状)と主張する。適格団体がイメージする”消費者像”が社会総体としての「一般消費者」と判断されるか。裁判の行方が注目される。