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花由 高校生と“廃棄花”解決へ、生徒が商品開発、既製品をアレンジ

2024年 5月31日 12:00

 フラワーギフトの花由では、徳島市立高校の生徒と共同で、規格外として廃棄される生花、「ロスフラワー」を減らすため商品を開発した。生徒たちが生花産業におけるロスフラワーの実態や問題点などを調べた上でアイデアを出し、商品化につなげたもの。同社の楽天市場店で販売しており、想定以上の売れ行きという(画像㊤「ボックスフラワー」と開発した徳島市立高校の生徒たち(左から石川美優さん、品川いろはさん、藤井菜胡さん、東條祐愛さん))


 今回の取り組みは、徳島市と楽天グループによる包括連携協定からスタートしたもの。同高には「総合的な探求の時間」と位置づける「市高レインボウプラン(IRP)」という授業があり、同校2年生は2023年度の1年間、週1回のペースで楽天との取り組みを行ってきた。楽天からの提案で、徳島市の地元企業である花由と連携、ロスフラワーをテーマとした課題解決学習を実施した。

 生徒たちは、ロスフラワーに関して全く知識の無い状態だったという。そこで、まずロスフラワーの実態や、何が問題なのかをインターネットで調べることから始めた。農林水産省「花いっぱいプロジェクト」におけるロスフラワー対策を参考にしたほか、「実際に花由を訪れ、『こんなことに困っている』ということを聞き、『こういった商品なら対応可能だ』と、ロスフラワー解決商品に関する案のすり合わせを行った」(同校の品川いろはさん)。

 昨年12月には、チームに分かれた生徒たちが花由の担当者に対し、ロスフラワーを解決する商品のプレゼンテーションを、パワーポイントを用いて行った。各チームから案が出されたが、選ばれたのは品川さんのチームが提案した商品だ。

 開発した「徳島市立高校の生徒さんと考えたボックスフラワー」(価格は4180円)は、同社がフラワーギフトを制作する際に、丈が足りなかったり、小さかったり、咲きすぎていたりといった理由で発生するロスフラワーを活用したもの。「花由で売っているボックスフラワー『hana cube』を参考にした。箱に詰めるのであれば、咲きすぎた花でも、小さい花でも、丈が短い花でも映えるのではないかと考えた」(同)。また、ロスフラワーは季節によって色が偏ってしまうことがあるが、内容を「おまかせ」にすることで解決できる。

 他にも、ガラス製ドームの中に花を詰めたものや、芸能人やアニメのキャラクターなど、「推し」を連想させるカラーの花を使ってブーケを作る、といった案も出たという。ボックスフラワーが選ばれる決め手となったのは、「ロスフラワーを解決するためには、商品として形にした上で、売れるものでなければいけない」という点だ。

 花由の小林拓哉氏は「『hana cube』の場合、花が箱に入るように加工しているわけだが、その工程を省いてロスフラワーを使うというアイデアだったので、製作コストもかからないし、商品の完成形が予想しやすいのが大きかった」と振り返る。

 また、同社の高橋菜穂子氏は「他の生徒たちのアイデアも面白かったが、商品化のハードルがかなり高く、1年間で販売にこぎつけるのは難しかった。ボックスフラワーなら比較的容易に実現可能だった」と話す。

 生徒たちが同社を訪れた際に「丈が短かったり花が小さかったりするだけで捨てられてしまう」ことに着目して生まれたものだ。品川さんは「実際にある商品の中身をロスフラワーに差し替えることで、別シリーズの商品にしたら面白いのでは、と考えた」と着想のきっかけを説明する。消費者にとっては、全く新しい商品よりも購入のハードルは低く、さらにはロスフラワー削減にもつながる。また、紙の箱を利用することで、コストを抑える狙いもある。

 花由でも「ロスフラワーを使ってギフトを作ろうという発想自体が無かった。当社は実店舗や業務用販路もあるが、丈の短い花はどの部門でも使いづらいので、着眼点が素晴らしい」(高橋氏)、「ロスフラワーをいかに出さないか、という方向に舵を切っていたので、ロスが出てしまった後のことはあまり考えていなかった」(小林氏)と、生徒たちに賛辞を贈る。

 3月1日より楽天市場で販売を開始。4月半ばまでの実績は「いちから販売ページを作った新商品としては、かなり良いペースで売れている」(小林氏)。特に、楽天市場の大型セールのタイミングでの売れ行きが好調という。カジュアルギフトとして開発した商品のため、20~30代の購入を想定していたが、今のところ50代が多く買っている。今後も定番商品として販売していく予定だ。

 IRPは「生徒が自らの将来に向け主体的に進路設計をしていく」ことが目的の授業だ。生徒は今回の取り組みを通じて何を学んだのか。品川さんは「『苦労して開発した商品が実際に販売された』という感動が大きかったので、大学は経営学部か経済学部に進みたい。また、似たような取り組みをしている大学があることも分かったので、そういった大学に進学できれば」と目を輝かせる。

 担当の田中美紀先生は「週1回の活動ではあったが、生徒たちは1時間を大事にしていたし、授業時間以外でも放課後に活動するなど、チームとして目標に向かって動くことができたというのは、とても大きな成果だと思う」と生徒たちの成長に目を細める。

 一方、企業側にも大きな刺激があったようだ。花由の小林氏は「『こんなことはできない』という固定観念から、考えが狭まっている部分があったので、生徒たちからそういったことを度外視したアイデアがたくさん出てきたことに驚いた。『固定観念にとらわれてはいけない』という自戒も込めて、今後はもっと自由な発想を大事にしていきたい」と述懐する。

 
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