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楽天 奈良で空き家をリノベ、大和郡山市らとイベント、DIY需要を喚起

2024年 6月27日 11:00

 楽天グループは6月15日、奈良県大和郡山市において、空き家をリノベーションする「DIYワークショップ」を開催した。小学生から70代まで、DIYに関心がある12名が参加。プロのアドバイザーが指導し、壁の塗装や仕切りの設置などを体験した。

 ワークショップは、2022~23年にかけて開催された、DIY業界の関連企業や有識者、楽天の3者で、ECを中心としたテーマで議論する会合「DIYサミット」がきっかけとなり開催されたもの。会合では、国内DIY市場を引き上げるための課題として「DX化」「オムニチャネル化」「人材育成」の3点が指摘された。その上で課題解決のための施策の一つとして出てきたのが「古民家改修プロジェクトなど、DIY需要を喚起するためにイベントを開催する」というものだ。

 ワークショップでは、大和郡山市の古民家「オカマチ荘」を改修。リノベーション後は、ハンドメイド作家等のクリエイターを誘致し、シェアアトリエとして使う計画で、年内の稼働を予定している。

 オカマチ荘は、20年ほど前まで化粧品店として使われていたが、現在は空き家。築100年以上で、「間口が狭く奥行きは長い」という、いわゆる「うなぎの寝床」と呼ばれる、典型的な日本の古い町家だ。ただ、たくさんのクリエイターの販売スペースを作るにあたって、新たに仕切りなどを設ける必要があった。

 楽天ECコンサルティング部ホームライフ事業課カテゴリ戦略グループの足立有紀氏は「DIYサミットで『空き家改修をイベント化してDIY需要喚起につなげたらどうか』という提案が出たが、どうやってDIYできる空き家を探せばいいのか、見当もつかなかった。そこで、DIYサミットのアドバイザーである、大都の山田岳人社長に『大和郡山まちづくり』という会社を紹介してもらい、イベントを開催することができた」と説明する。

 大和郡山まちづくりは、不動産オーナーから物件を借り受け、大和郡山市で開業したい人をマッチングするという事業を手掛けている。同市では、市内の空き家や空き店舗、空き地など活用し、リノベーションすることで街作りへと発展させる教室「リノベーションスクール」を開催しており、同社は第1回目の教室後に生まれた企業という。イベントは楽天と大和郡山まちづくりが主催、大和郡山市が共催する形となった。

 空き家改修イベントを、どのようにDIY需要の喚起へとつなげていくのだろうか。足立氏は「今回の取り組みはあくまで第1段階。イベントのレポートを楽天市場内に掲載し、アクセス数やページ内で募集するアンケートといったユーザーの反応を勘案し、『空き家改修などのイベント情報を発信することで、DIYをやってみたいという人が増えるのか』を指標化していきたい」とする。

 DIYに興味があっても「難しいのではないか」と尻込みしてしまう人は少なくない。もちろん「実際にやってみる」のが一番だが、記事や動画などで「自分たちと同じような技量のユーザーがDIYを体験する」場面を見てもらうことで「やってみたい」「自分にもできるかも」という需要を喚起し、楽天市場でのDIY関連商品の購入にもつなげていくのが理想的な流れだ。足立氏は「一度の開催で成果が出るとは考えにくいので、取り組みを継続していきたい」と意欲を示す。

 イベントには、電動工具大手のボッシュと、突っ張り棒メーカーの平安伸銅工業、通販サイト「DIY FACTORY」の大都が協賛。このうち、平安伸銅工業では「空き家問題といった社会課題の解決を手助けできるほか、リノベーション後の商業施設で多くの人たちに視認されることは、当社プロダクトをPRするメリットもあるため」(広報の勝山美鈴氏)と協賛した理由を説明する。同社は「ラブリコ」というブランドでDIYパーツを展開。中でも突っ張り棒は、賃貸物件でも利用できるほか、ネイルサロンや接骨院といった店舗を出店する際、工事せずに個室を作るための「間仕切り」として使われることも多い。同社は楽天市場にも出店しており、「賃貸でも傷つけずに個室や収納を作れることを知ってもらえれば」(同)。

 一方、大和郡山市でも今回のイベントを町おこしにつなげていく。同市の上田清市長は、「共感を介してたくさんの人が集まってくれたことに意義がある。古民家の再生も勢いづくのではないか」と喜ぶ。空き家の活用は同市に限らず、日本全国で課題となっている。上田市長は「リノベーションは『古いものは壊してまっさらなものを建てる』という日本の文化を変えていく運動でもある。『古い建物を利活用する』ことはヨーロッパでは行われてきたが、日本ではいつの間にか『スクラップ&ビルド』ばかりになってしまった。文化や歴史を大事にすることが今後の自治体には求められている」と指摘する。

 リノベ後はシェアアトリエとなるオカマチ荘。ハンドメイド作家などの利用を想定している。大和郡山まちづくり企画広報の富谷美咲氏は「シェアアトリエとしてだけではなく、近所の人たちが休憩できる場や、帰宅途中の小学生が遊べる場にもしていきたい。大和郡山市の人たちにとって、仕事ができるだけではなく、ゆっくりお茶も楽しめる、というコミュニティーを作ることができれば」と意気込む。

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 イベントでは、午前10時から休憩を挟んで午後6時近くまで、プロの指導のもと、ペンキ塗りや壁紙張りなどに取り組んだ。

 参加者からは「これを機に楽天市場で工具や材料を購入し、自宅でもDIYをやってみたい」といった声も。DIYサミットからずっと関わってきた、大都の山田岳人社長は「楽天と大和郡山市がタッグを組み、『古き良き建物を残す』という国の課題を解決するためのイベントが開けて良かった。今回は第1弾となるがが、大和郡山市には良い物件がたくさんあるので、リノベをすることでもっと良い街にしていきたい」と述べた。

 
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