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ベルーナが事業再編、ホテル・専門通販で成長、「紙」は事業継続性重視

2024年 8月29日 12:00

 ベルーナでは、不動産やホテルの「プロパティ・ホテル事業」と、化粧品・健康食品事業やグルメ事業、ナース関連事業などの「専門通販事業」に関して、収益性拡大を目指す「グロース領域」に分類。一方で、主力の「アパレル・雑貨事業」のほか、「呉服関連事業」などは、収益性の効率化を第一とした「サステナブル領域」とした。カタログやチラシなど、紙を使った通販の社内における位置づけが大きく変わるわけだ。再編の狙いはどこにあるのか。

 









 「『社会価値』寄りの事業を『サステナブル領域』とし、『経済価値』に寄った事業を『グロース領域』と区分けることにした」。6月7日の決算説明会で、同社の安野雄一朗取締役専務執行役員はこう宣言した。

 カタログやチラシなど、紙を使った通販事業については「売り上げ規模は国内ではトップだが、高齢化・過疎化を支える消費インフラといえる」(安野取締役)。そのため、継続性と収益効率の最大化を主眼に、安定した収益を上げられる事業としていく方針だ。一方で、プロパティ・ホテル事業と専門通販事業という、営業利益率の高い2事業については、規模拡大とともに利益を追求していく。

 アパレル・雑貨事業の2024年3月期業績は、売上高が前期比15・9%減の742億5100万円、セグメント損益は29億9200万円の赤字と不振だった。安野清社長は「用紙代と印刷費の上昇、さらには急激な円安による仕入れ価格上上昇の影響を受けた。一方で最終価格への転嫁は難度が高い。結局のところ、値上げを我慢したアパレル小売り企業が勝っているわけで、そういう意味では、構造的に収益が上がらない事業になってしまっている」と渋面を作る。

 不調の理由は、商品値上げに伴うレスポンス率の低下だ。カタログ発行部数も前年から約20%減らしている。「当社だけではなく、紙媒体を中心とした通販企業はどこも厳しい。『それならネット通販に注力すればいい』という声もあるが、ネット専業は余分な人員を抱えずにローコストオペレーションを行っている。歴史のある総合通販企業はそういうわけにはいかない。紙の延長線上で商売をしたら失敗する」(安野社長)。

 今後は売り上げ拡大ではなく、利益を重視した施策を展開する。印刷用紙や印刷費の高騰、急激な円安に対応した取り組みを進めているほか、マーケティング面では顧客リストの収集・活用・掘り起こしなどを見直しており、結果が出はじめているという。

 ただ、用紙代は今後も値上がりを続ける可能性は高く、そうなれば「紙を使ったビジネス」自体が成り立たなくなる恐れもある。安野社長は「紙とネットの融合に可能性を見出したい。紙とネットの間にどれだけシナジー効果を生み出すか、これを模索するしか道はないだろう」と話す。

 具体的には、どういった形を想定しているのか。「ネット通販のみで勝ち抜くのは難しいが、『カタログを見てネットで注文する』といった、紙とネットで相乗効果を生み出すようなビジネスモデルがベルーナの持ち味でもある」(安野社長)。かつて安野社長は「総合通販各社がカタログ通販を縮小する中で、残存者利益を取りに行きたい」と公言していた。「振り返ってみると、(取れる余地は)ほとんど無かった」と苦笑いする安野社長だが、「それでも中高年層を中心にカタログファンがいるのは確かだし、社会的な意義も踏まえて期待に応えていきたい。そのためにも黒字にしなければいけない」と気を引き締める。

 同社が展開するさまざまな通販の中でも、成長事業と位置づけられたのが、化粧品や健康食品、グルメといった「専門通販事業」だ。化粧品事業に関しては、海外市場の開拓を推進。現在は台湾・香港・シンガポール・マレーシアで展開しているが、中国・ベトナム・タイへ進出することで売り上げを拡大する。国内については卸販売を拡充する。

 成長が続いてきたグルメ通販については、前期売上高は微増にとどまった。安野社長は「競合と比較してLTVが弱いが、逆に言えば伸びしろでもある。ブランディングとCRMの両輪を強化することで成長を実現したい」とプランを明かす。

 もう一つは製造小売業の強化だ。同社は昨年6月、谷櫻酒造(山梨県北杜市)の全株式を取得し子会社化した。「酒蔵は非常に面白いが、大々的に展開するには製造能力の問題もある。今後は海外への輸出も考慮し、もう1社くらい買収してもいいかもしれない」(安野社長)。さらには、減塩など昨今の健康志向に合致した惣菜のラインアップを拡充、ニーズを取り込むことで再び成長軌道に乗せる。

 ワイン通販は、急激な円安の影響を受けているものの、今後は高級ワインのラインアップを強化。現在、高級ワインの売上高は3億円程度だが、これを10億円まで増やす狙いだ。

 コロナ禍以降のインバウンド需要を取り込み急拡大しているホテル事業と、専門通販の両輪で、前期営業利益97億円を、将来的に200~300億円規模まで増やすというベルーナ。安野社長は「外部環境に左右される部分はあるが、ベストは売上高2900億円、営業利益300億円。普通のシナリオでは売上高2500億円、営業利益200億円というイメージだ」と目標を語る。ただ、そのためにもまずは「紙とネットの融合」モデルを確立し、早期に黒字が出る体制へと変えていく必要がある。

 もう一つ、成長領域と位置づける専門通販についても、2025年3月期第1四半期の売上高は、前期比4・8%減になるなど、まだ成長軌道には乗っていないのが実情。化粧品通販のオージオ、健康食品通販のリフレについては、両社合算で200億円(前期は147億円)という目標を立てているものの、4~6月は2桁減収だった。特に、リフレはここ数年減収が続いていることもあり、テコ入れが必要になりそうだ。



「価格転嫁、抵抗大きく」、EC・紙の延長線では失敗

<ベルーナの安野清社長に聞く①>

 ーー前期を振り返って。

 「アパレル・雑貨事業における総合通販事業については、コロナ禍が終わったことで、消費者の通販での購入ハードルが高くなった上に、用紙代・印刷費の値上がり、急激な円安による仕入れ価格の上昇という逆風があった。一方で、商品価格への転嫁は顧客の抵抗があるので、難度が高い。結局のところ値上げを我慢したアパレル小売りが勝っている。値上げを我慢する商品と、値上げをする商品の比率が問題なわけで、恐らく我慢すべき商品が6~7割、値上げす る商品が2~3割が正解ではないか。ただ、こうなると構造的に赤字体質となってしまう」

 「原価が上がっているので、本当は全商品値上げしなければいけないが、ある程度は我慢しなければいけない。他社が1000円で売っているものを1100円で売ったら買ってくれない。結局のところ、消費者の所得が増えていないのが全てだろう。値上げをしたいのはやまやまだが、値上げするとレスポンスが落ちてしまう。また、結局のところ売れるのも値上げを我慢した商品だ。とにかく、できるだけ我慢して値上げをすべきではないというのが教訓だ」

 ーーホテルを中心としたプロパティ事業は好調だった。

 「ホテル関係はインバウンドの関係で、東京・京都・北海道が非常に好調だった。ホテル関係は、総合通販と違って値上げできる点が大きい。他の事業については、おおむね横ばいなので、不調の総合通販と好調のホテル事業ということになる」

 ーー紙を中心とした通販事業は思った以上に悪かったということか。

 「総合通販だけでも 29億円ほどの赤字となったわけだが、結局レスポンスが悪化したことが全てだろう。通販は広告宣伝費がコントロールできれば儲かるし、できなければ赤字が出る。カタログの発行部数が2割減なので、どうしても効率が悪化してしまうわけで、非常に厳しい状況だ。稼働顧客数が減っているのと同時に、用紙代・印刷費の上昇で思うようにカタログが出せなくなっている」

 ーー用紙代の値上がりでネット通販の比重は高まっているのか。

 「『紙が値上がりするならネット通販に注力すればいい』という声が出てくるわけだが、ネット専業は余分な人員を抱えずにローコストオペレーションを行っている。しかし、カタログを作っているような通販企業は、どうしても人員が必要になってくる。紙の延長線上で商売をしたら失敗するというのは、競合他社の例をみれば分かる。ネット通販で成功するなら、ゼロからスタートし、少数精鋭で熱量をもって取り組まなければいけないのではないか、ということに2年ほど前に気づいた」(つづく)



 
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