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「地場産業」の強み活かす【好調ECサイトの研究 三好漆器㊤】 「曲げわっぱ」が人気商品に

2024年 5月 9日 12:00

 漆器販売の三好漆器では今年1月、仮想モール「楽天市場」の優秀店舗を表彰する「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー(SOY)2023」において、「キッチン用品・食器・調理器具ジャンル賞」を受賞した。同社は海南市の地場産業「紀州漆器」のメーカーから漆器を仕入れて販売。中でも「曲げわっぱ」が人気商品だ。ECの世界で成功できた理由はどこにあるのか。

 三好佑紀社長が、家業である同社に入社したのは2003年のこと。就職氷河期ということもあって勤め先探しが難しく、三好社長によれば「やむなく働きはじめた」のだという。当時の同社は漆器の製造卸業を営んでおり、地元の問屋に漆器を卸売りしていた。

 ちょうど海外製の安い漆器が出回りはじめ、伝統的な漆器は、どんどん小売り店に並ばなくなってきた頃だ。三好社長は「受注がなくて暇な時期が続いたこともあり、『この先うちはどうなってしまうのだろう』という恐怖心があった」と振り返る。

 そこでECへの参入を決意した。「ネット競売は経験があったので、とりあえず出店してみようか」(三好社長)と、楽天市場に店を開いたのが2006年のこと。まずは、自社の余剰在庫を販売することからスタートした。家族経営だったこともあり、EC事業は三好社長1人でスタート。小売りは初めてだったこともあり、顧客対応など慣れないことも多く、売れるようになるまでは数年かかったという。

 まず、取り組んだのは商材の拡大だ。漆器が地場産業ということもあり、メーカーや小売りがたくさんあったので、商品の仕入れには困らなかった。これまでとは逆に、問屋から商品を仕入れるようになった。そんな中で販売を始めたのが、「曲げわっぱの弁当箱」だ。

 曲げわっぱとは、スギやヒノキなどの薄い木の板を、筒状に丸めて継ぎ目をサクラの皮で縫い接着したもの。秋田県の曲げわっぱが有名だが、紀州漆器の名産品ではない。

 「当初曲げわっぱは商品ラインナップの一つに過ぎなかったが、曲げわっぱのファンが低価格で販売する当社で買ってくれた」(同)。当時は曲げわっぱの弁当箱を扱う競合が楽天市場内に少なかったことや、同社がメーカーと問屋に近く、仕入れ面で有利だったために低価格で販売できたことが人気につながったようだ。

 現在は、曲げわっぱだけで200種類ほど販売している。購入しているのは、30~40代の女性が中心、商品写真、特に「弁当の中身を詰めたときにどんな見栄えになるか」や、商品のサイズを分かりやすく示すことにこだわっている。また、非常に軽いため、通勤通学時の負担軽減になるほか、見た目のかわいらしさ、さらには周囲の湿度が高いときは水分を吸収し、湿度が低くなったら水分を放出する「調湿作用」があるため、冷えても米飯の味が落ちにくい点などが、曲げわっぱ弁当箱のメリットだ。「曲げわっぱを扱いはじめた当初は、こうした特徴は全く意識していなかった」というが、もちろん現在は曲げわっぱの強みを商品ページでアピールしている。

 曲げわっぱを主力商品として売り上げを伸ばしてきた三好漆器。ただ、SOYを意識できるようになってきたのは、楽天市場有名店舗が講師となり、他の出店店舗にネット販売に関するノウハウを伝授する企画「ネーションズ」に参加してから。効率化・仕組み化・組織づくりを学んだという。仕入れから撮影、ウェブサイト制作、情報発信、店舗運営、顧客対応、ロジスティクスを和歌山県の本社で対応ができるワンストップ体制を構築した。さらにはコロナ禍が追い風となり、「外食から弁当に切り替える」需要を取り込んだことで急成長を遂げた。(つづく)


 
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