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JICDAQ、広告品質認証へ<アドフラウドとブランドセーフティ> 広告内容適正化の取組みも視野

2021年 6月10日 12:30

 デジタル広告業界が、市場の健全化に乗り出す。関連の3団体は今年4月、デジタル広告の品質確保に向けた第三者機関を設立。7月から、アドフラウドやブランドセーフティに向けた対策を行う関連事業者の認証を始める。将来的に、広告内容の適正化に向けた取り組みも視野に入れる。
 










 第三者機関は、デジタル広告品質認証機構(=JICDAQ)。日本アドバタイザーズ協会(=JAA)、日本広告業協会(=JAAA)、日本インタラクティブ広告協会(=JIAA)の3団体が共同で立ち上げた。

 理事には3団体の専務理事が就任。JAAの鈴木信二氏が代表理事に、JAAAの橋爪恒二郎氏、JIAAの橋本浩則氏が業務執行理事に就いた。デジタル広告の品質確保に向けた取り組みを認証し、品質の向上・改善、公正な広告活動を支援する。

 デジタル広告市場で問題となっているのが、ボットなどの自動プログラムを悪用して不正にインプレッションを増やしたり、クリック数の水増しする「アドフラウド(広告詐欺)」。また、広告の掲載先に違法・不当なサイトが紛れ込むことによるブランドの毀損リスクから守る「ブランドセーフティ」なども課題になっている。

 JICDAQは、これら2分野に関する広告関連事業者の認証(有料)を行う。

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 認証の対象事業者は、広告枠の買いつけやプランニングを行う広告代理店、広告配信を仲介するアドネットワーク事業者、広告枠の取引システムを提供するアドエクスチェンジの関連事業者、媒体社など、広告の商流に関わる企業。代理店を経由せず、直接、広告取引を行う広告主(販売企業)も対象にする。3団体非加盟企業の認証も受けつける。

 認証するのは、「アドフラウドを含む無効トラフィックの除外(人に届いていない広告配信の排除)」と、「広告掲載先品質に伴うブランドセーフティの確保」。無効トラフィック対策は、対外的に示すポリシーや、特定可能な取引先と取引しているかなど取引先審査、不正検知に関するプロセスの評価など6項目の対策を審査する。

 ブランドセーフティは、「犯罪助長」「詐欺」「差別・人権侵害」「商標権・著作権侵害」など違法・不当なサイト8分野を例示。掲載を防ぐための取引先審査、内部プロセス等の整備、技術的対策の導入など7項目を審査する。認証は、「第三者検証」、チェックシートに基づく「自己宣言」、「海外認証に基づく自己宣言」の3通りから選べる。

 第三者検証は、公正な広告取引を目的に、新聞等の部数調査などを行う日本ABC協会に委託する。海外でデジタル広告の認証を行う機関とも提携。海外の認証を受けた企業がJICDAQ認証を受けやすい環境も整備する。認証結果は、毎年更新。認証マークを付与する。

 認証企業に問題があった場合は、必要に応じて協議を行い、助言や文書による改善指導、認証の一時停止・取り消し、登録の一時停止・抹消などを判断。処分概要も公表していく。

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 現在、認証対象ではないものの趣旨に賛同する広告主79社(6月4日時点)が登録する。認証申請する広告関連事業者は74社(5月末時点)。10月をめどに認証企業を公開する。認証は、あくまで業務プロセス。「すべての広告配信結果のゼロリスクを保証できるものではない」(事務局)とする。

 今後、必要に応じて、品質認証の領域の追加も検討する。不適切な広告主や広告内容・表現も「(他社広告との)同時掲載によるブランド毀損リスクを正当なブランドにもたらしかねない」(同)として、将来的に認証対象にする可能性がある。

官民で進む広告健全化、アドフラウド等で不利益4割超

<デジタル広告規制の現状>

 デジタル広告市場の健全化に向けた取り組みが官民で進み始めている。国内のウェブ広告費は2019年、20%増の約2兆円に到達し、テレビの広告費を初めて抜いた。一方で、市場のルール整備は遅れている。アドフラウドやブランドセーフティをめぐる問題もその一つ。政府は、取引の透明性を高めるため規制を強化する。

 デジタル競争会議は今年4月、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(取引透明化法)の対象として、オンラインモール、アプリストアに加え、デジタル広告のプラットフォームを対象化する方針を固めた。グーグルやヤフー、一部のSNSが対象になるとみられる。

 ウェブメディアに掲載される広告は、あらかじめ設定されたアルゴリズムに従い、売り手の媒体社と買い手の広告主を入札システムでマッチングする。ただ、ルールの設計はプラットフォーマーに委ねられ、ブラックボックス化している。

 公正取引委員会がグーグル、ヤフー、フェイスブック、ツイッター、LINEの5社の実名を挙げて行った実態調査では、広告主、代理店を対象にプラットフォームの開示情報を聞いた設問(複数回答)で、「アドフラウドに関する情報が不十分」との回答が18~25%、「配信先媒体の情報開示が不十分で、ブランドセーフティに支障が生じる」との回答が6~27%あった。これら情報開示の不透明性に対し、「大いに不利益がある」「ある程度不利益がある」との回答は、40~50%に上った。

 取引透明化法では、広告主と媒体社を仲介するプラットフォームを「特定プラットフォーム」に指定。一方的なルール変更で、広告主や媒体社に不利益が生じないよう事前の通知、変更理由の開示を義務づける。取り組み状況の報告も求め、政府はこれを評価する。

 リスクに対する説明責任の観点では、アドフラウドについて、取得可能な情報の開示、第三者による表示回数の測定等に対応しない場合の理由の開示を求める。

 システムやルール変更に伴う内容と理由の事前の開示、苦情等に関する体制整備も求める。広告主や媒体社から取得・使用するデータの内容や、取得・使用条件の開示など管理方法について、「利益相反・自社優遇管理方針」の策定、公表など内部統制も規定する。

 検索エンジンでもサイトの表示順位に使う主要事項の開示、変更の際の内容・理由の事前開示を検討する。

 
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