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「2024年問題」の影響色濃く<上半期の通販業界を振り返る> 物流効率化へ取り組み着々

2023年 6月29日 12:00

 2023年も半年が経過し、早くも折り返し地点を迎えた。今年は新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、季節性インフルエンザなどと同様の「5類」へと引き下げられた。また、通販周辺では生命線でもある物流費の値上げなど「2024年問題」を見据えた動きが急速に広まっている。昨年度とは大きな変化が見られるようになった今上半期において、通販業界で起きた主な出来事を振り返ってみる。
 





















 まず、この上半期を印象付ける最も大きな出来事となったのが物流費の値上げだ。4月には佐川急便が平均8%程度の運賃値上げを行い、同じくヤマト運輸も宅急便などの届出運賃を平均で約10%引き上げ。日本郵便については10月1日から宅配便の基本運賃などを改定し、平均で約10%の引き上げを行うことを発表している。すべては物流業界の「2024年問題」が契機となっているもの。上限規制によりドライバーが荷物を運べる距離が短くなるために賃金減によるドライバーの離職増に伴う人手不足問題の解消や、離職抑制に向けた賃金アップを行うための対応が背景にある。

 これに伴って、6月19日には日本郵政グループとヤマトグループが協業を行っていくことで基本合意。まずはヤマトのポスト投函型商品であるメール便や小型荷物商品について、日本郵便の配送網での配達に取り組んでいくという。

 こうした動き受けて、通販業界でも物流周りの強化に向けた施策がいくつか始まっている。2月にはオルビスが物流センターに自律走行搬送ロボットを導入し、省人化と効率化に着手。アマゾンでは三井不動産のグループ会社と連携して、不在時でも「置き配」を行えるよう配送員がオートロックを一時解除できる取り組みを拡充。さらには、配送会社を起業したい事業主に対して、通常より安価な保険料で加入できる自動車保険の案内や安価に給油できるカードの付与、アマゾンが定期的に一定の荷物の配送委託を行うなど支援を拡大している。

モールでは航空会社が新規参入

 新サービスという観点ではコロナ禍以降、成長著しい食品通販業界において、イオングループが4月にネットスーパーの新サービスとして「Green Beans(グリーンビーンズ)」を立ち上げることを発表し、今夏より始動。5月には大丸松坂屋百貨店が、食通のバイヤーが厳選した冷凍グルメ宅配のサブスクサービスを開始している。

 またECの主戦場でもある仮想モールを巡る動きも活発化している。主だったところでは、航空事業会社であるANAとJALの参入がある。まず、ANAグループが1月31日に初の仮想モールとして「ANA Mall」を開設し、初年度100億円の流通額を計画。JALグループは5月30日に「JAL Mall」を開設し、まずは流通総額約120億円を目指す。

 その一方で、2月にはヤフー親会社であるZホールディングスが、これまで標榜してきた「国内最大のEC取扱高を目指す」という目標を撤回。EC事業で戦略転換を図る動きを見せたことも話題となった。

 そのほか、近年注目されている地方創生に関しては、楽天グループが2月に兵庫県加西市と包括連携協定を締結。3月にはZOZOが茨城県つくば市と、4月にはテレビ東京ダイレクトが岩手県八幡平市と包括連携を締結するなど、それぞれ地域経済の発展に関わるような内容で相互協力を図っていくという。

6月には改正特商法が施行

 法規制に関わるものでは、改正景品表示法が、5月の参議院本会議において可決・成立。違反行為に対する抑止力強化を目的に”繰返し違反”に対して課徴金を加算する制度を導入。また、6月には改正特定商取引法が施行。関連する政令改正では、「広告商品以外」の商品提案を行う場合、電話勧誘販売として規制する媒体の対象範囲を拡大。規制は通販での一般的なクロスセル、アップセル提案に影響すると見られる。

 そして、行政処分関係でも動きがあった。3月には健康食品通販を行うツインガーデンや、化粧品通販を行うエムアンドエムに対し、東京都がそれぞれ景品表示法に基づく措置命令。また、6月には消費者庁がペット用サプリを通販するバウムクーヘンに景品表示法に基づく措置命令を下している。

 企業の不祥事という点では、今年度もまた個人情報の流出が起きている。1月には冷凍宅配食サービスのナッシュが不正アクセスにより保有する個人・法人の情報約6000件が流出した可能性があると発表したほか、アダストリアでも不正アクセスにより約104万件の情報流出の可能性が判明。2月以降も、ソフトウェア販売のソースネクストで約11万件、三京商会では約5万件がそれぞれ通販サイトに不正アクセスを受けて情報漏洩した可能性があると明らかにしている。

従業員の働き方整備も着々

 働き方改革については、以前よりも踏み込んだ内容の施策が大手企業を中心に始まっている。ジャパネットホールディングスは4月から、社員を定年後に再雇用する際、週休を段階的に増やしながら急な収入減にならないような給与設計とする取り組み「セカンドライフサポート制度」を開始。小売り大手ではファーストリテイリングが報酬を改定して各従業員に付与している報酬水準を最大で約40%アップ。ニトリホールディングスでも、転勤のない新たな勤務制度として「マイエリア制度」を導入するなど、働き方の整備を進めており、優秀な人材の確保や離職の防止を図っている。

 
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