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「自社物流の効率化」が最多<通販各社に聞く 物流2024年問題への対応> 今後の負担増を見据え

2024年 1月18日 12:00

 通販新聞社は昨年12月、主な通販実施企業約600社を対象に物流業界の2024年問題」に関するアンケート調査を実施した。今年4月からトラックドライバーの時間外労働時間に上限が設けられる。これを前に、各社では自社物流や配送の効率化、再配達削減や配送会社の変更などの対策が行われている。配送コストの値上げなど今後の負担増加を見据えた対応が広がっているようだ。
 






「物流の効率化」が約4割

 アンケートは2024年問題に向けて実施済みの対策や、自社サービスへの影響、今後の課題について聞き、有効回答の内容を分類した。その結果、実施済み(実施予定)の対策について「自社物流の効率化」が最多で39%を占めた。次いで「再配達削減」が23%、「情報収集」が16%、「配送会社の変更」が6%、資材などの「コスト削減」が6%だった。

 各社の主なコメントを見ていく。自社物流の効率化が最多となった背景には、通販各社の危機意識がある。「配送料金の値上げは交渉の余地があるとしても避けることはできない」(白鳩)、「通販が中核事業のため、24年問題は重要な経営リスクとして危機意識を持っている」(ハーバー研究所)とした。物流の効率化を図ることで今後も上昇する配送コストの負担軽減や、持続可能性な物流の実現を目指している。

 具体的な取り組みについては「店舗・通販倉庫内での商品行き来における配送の削減・効率化に取り組む」(バロックジャパンリミテッド)、「メーカー直送品については引き続き出荷元もしくは配送各社で伝票出票サービスの導入を推進している」(全日空商事)、「物流機能の見直し」(アサヒグループ食品)、「物流コストの削減として物流拠点の集約を実施。一部作業のロボット化などを検討している」(マガシーク)とするコメントが見られた。

アスクルは全体で効率化を推進

 アスクルは商品開発から配送までバリューチェーン全体で効率化に取り組んでいる。商品開発では外装パッケージのサイズ設計や、同じスペースでも容量を多くする商品設計を採用するなど、配送する際の物流効率を考慮している。

 AIを活用して各物流センターの在庫配置と在庫量を最適化し、注文商品が遠方の物流センターから出荷されることや、同じ注文でも複数の物流センターから別個口で出荷されることを防いでいる。

 また、独自AIを用いた需要予測・需要変動を取り込み、発注量を平準化している。実証実験を花王・コクヨと共同で行い、現在では他のサプライヤーへの展開も行う。

 共同輸送も推進。コクヨサプライロジスティクスと連携し、アスクルの物流センターへコクヨ製品を納品する輸送過程に、別拠点のアスクル物流センターでの荷積み工程を組み入れる。コクヨの納品荷物に加えてアスクル物流センター間の在庫移動商品を合積みすることで両社の輸送車両を集約する。実証実験を経て22年10月から本格稼働した。

 あわせて事業所向け通販では、注文商品を異なる配送センターから出荷する場合に、「できる限りまとめてお届け」という選択肢を表示する。顧客の了承を得た注文についてはひと箱で配達する仕組みとなる。

 個人向け通販サイト「LOHACO」では「おトク指定便」を導入。注文時に先の日程での配達日を指定するとポイントを付与するもの。特定日の荷物量増加に伴う物流負荷を分散し物流の安定化や効率化につなげている。

再配達ゼロが問題解決に重要

 再配達削減に向けた取り組みも進んでいる。ジェイドグループは置き配「EAZY」の導入や、1~4日後に発送する「急ぎません。便」を導入し、物流の効率化と再配達削減に注力する。「配送人員の確保は限界があるため、再配達をゼロにすることが重要と考える」(ジェイドグループ)とした。

 また「『LOHACO』は今年5月から置き配をデフォルトの配送方法としている」(アスクル)ほか、「再配達が不要なサービス『ネコポス』対象商品の拡大を進めている」(全日空商事)、「配送日指定ができるようにシステムを改修予定。納品予定日プラス3日以降の設定を予定している」(ロッピングライフ)など各社でさまざまな取り組みを推進する。このほかにニッピコラーゲン化粧品や、テレビショッピング研究所も再配達削減に向けた取り組みを実施している。

ドライバーの業務改善に寄与

 トラックドライバーの労働時間の改善に注力する試みも行う。「配送ドライバー向けアプリ『とらっくる』を開発した。配達コースの設計や再配達管理を効率的に行えるようDX化した。地場の配送業者にも提供している」(アスクル)。このほかにも、バース予約システムを導入し、ドライバーの待機時間の短縮につなげている。

 オイシックス・ラ・大地も22年度に配送委託先を含めた労働実態の調査を始め、ラストワンマイルにおける労働時間のコントロールを実施し、配送コースの変更や高速道路料金補助などを行った。調達物流においても納品時間や価格等の影響について主要取引先へヒアリングを行い、同様の対応を行ったという。「これにより主だったリスクに対しては現状対応できているが引き続き動向を注視する」(オイシックス・ラ・大地)とした。あわせて、配送委託先、自社の両社で業務効率化のためのオペレーションを変更した。

 このほかに、mightyやヒラキ、タキイ種苗などが情報収集をすすめる。「現状は解決策を講じられる情報はない。商品や価格の見直しを含めて多角的に対応を検討中」(タキイ種苗)などとした。

 配送業者の変更を模索する企業もある。「指定日、時間等の配送変更、運送会社の変更を模索している」(アプロス)、「新たな物流会社の導入」(マガシーク)としている。




配送料値上げへ懸念強く、応じた商品や資材の検討も

<今後の課題、各社の声>


 本紙アンケ―ト調査では、物流の2024年問題を受けて実施した対策の影響や、今後の課題について聞いた。それによると、今後の配送料の値上げへの懸念や、配送コスト増による利益圧迫といった課題が見えた。今後はコスト増に応じた商品開発や、資材の改良などによるコスト削減への取り組みの重要性が増しているようだ。

 アンケートの回答の中から、各社のコメントを見ていく。

目立ったのは、今後の配送料値上げへの懸念だ。「配送業者の課題解決には可能な限り協力する」(白鳩)としつつも、「配送料の値上げの幅は『どの程度』『いつ』いわれるのか怖いところ」(世田谷自然食品)、「配送料の値上げの上昇が課題」(テレビショッピング研究所)、「荷物の遅れ、運賃の値上げなどさまざまな問題が出てくると思うが、他社も大きく変わらないため、自分たちができることをしっかりやっていく」(プラグイン)などのコメントが多かった。

 今後、コスト増への対応が課題になりそう。「配送料の値上げを価格に転嫁すれば、購入件数が減少し、他の経費が増加する」(白鳩)ためだ。

 「配送費について顧客との認識合わせ」(アサヒグループ食品)が必要になると指摘する。また、「配送コストを下げる手段を模索していかなければならない」(アプロス)とし、まとめ売りや配送資材の見直しによるコスト削減だけでなく、「資材費以外の一般管理費のコスト削減も必要に応じて対応する必要がある」(同社)とした。

 具体策の1つが、まとめ出荷への対応だろう。「複数商品購入時に商品の入荷状況によって現在は配送が自動的に分割される。すべての入荷を待ってまとめて出荷を希望するか、用意できた商品から随時出荷するかによって、送料をそれぞれ徴収する仕組みを導入し配送回数の低減を検討したい」(全日空商事)、「まとめ売りの方法を模索。梱包資材の改良を検討する。配送費用の負担が増え利益を圧迫するので、利益率の良い商品開発が必要である」(アプロス)とした。

 また、再配達を削減するための置き配への対応では、「トラブルの対応が課題」(てまひま堂)といった新たな対応を指摘するコメントもあった。

 再配達不要のサービス「ネコポス」をめぐっては、対象の商品を拡大する中で「梱包後に配送サービスを選択する方法がなく、販売時よりネコポス専用商品として取り扱うことが必要になる。ネコポス専用商品を複数購入した場合には送料が割高になる」(全日空商事)などの声もあった。

 一方で、サービス強化のための顧客ニーズへの対応も重要になっている。「顧客が望む即配については倉庫の在庫の問題があるのでできるだけ対応する」(ロッピングライフ)、「配送にかかわる日数が課題」(八幡物産)などとする声があった。
 
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