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“囲い込み”で自社サイト強化【好調企業の販促研究e☆イヤホン②】 早期に全社売上高100億円へ

2024年 4月11日 12:00

 ユーチューブなどでの情報発信にコストをかけることで、「視聴できない」という弱点をカバーしている、タイムマシンが運営する「e☆イヤホン」のEC事業。しかし、経費をかけすぎることで損益分岐点を下回っては元も子もない。

 岡田卓也社長は「顧客に喜んでもらえる部分や、役に立つ部分に関しては徹底的にコストをかけているが、顧客から見えない部分でのコストコントロールには力を入れている。店長やマネージャーレベルまでコスト管理の意識をしっかりと持たせている」と話す。

 固定費については、マネジメント層が毎月確認できるようにすることで「お金の使い方」を逐次チェック。また、通常は月2万5000個、繁忙期は月3万5000個ほどを出荷するため、物流関連費用がかさむ。配送会社と値上げ交渉を行ったり、繁忙期には外注の物流スタッフや外部倉庫を活用したりすることで、コストの調整を図っている。

 「当社は”人”で売る会社。顧客と同じ目線で、イヤホン・ヘッドホンを楽しむというスタンスを全面的に押し出しているので、情報発信や人件費にはコストをかけている。しかし、固定費のコントロールについてはシビアにみている」(岡田卓也社長)。

 もう一つ、利益を下げる要因となるのが競合との価格競争。アマゾンや家電量販店など、大手企業との競争を強いられているだけに「単純に価格だけを追っていくと苦しい。『どこまで下げられるか』については、日々バイヤーと営業がやりとりしながら調整している」。

 また、メーカーと協力した形でのプロモーションを積極的に行うことによる効果もある。岡田社長は「単純に『仕切りを下げてほしい』とお願いするのではなく、メーカーと密な関係を築き、『もっと数を売るために動画を活用しましょう』と呼びかけるなど、メーカーと一緒に売り上げを伸ばしていけるのが当社の強みだ」とうなずく。

 仮想モールの店舗では、モールによるポイント施策などの効果もあり新規顧客の流入が続いているが、自社サイトはやや不振だ。「仮想モールの店舗はイヤホン・ヘッドホンを知ってもらうために重要だが、一方で自社サイトにしかない情報やコンテンツもある」。まず、会員戦略を強化。「e☆イヤホン」の会員だからこそ得られるメリットやサポート体制などを打ち出していく。例えば、メーカーと協力した会員向けモニターなどを模索する。

 さらに、O2O戦略も進める。「店舗の会員情報を使い、店とウェブをどうつなげていくか、という設計を進めている。イヤホン・ヘッドホンが好きな人達が、もっと制約なく『e☆イヤホン』を使っていけるようにしていきたい」。

 その鍵となるのが、店舗とのポイント共通化だ。「自社サイトでポイントを持っているユーザーに店に来てもらう、逆に店のポイントを持っている人に自社サイトで買ってもらうには、ポイントのつなぎこみが必要になってくる」。

 自社サイトにおける宅配買い取りの強化も図る。顧客情報を毎回提示する必要があるが、オンライン上で本人確認する仕組みであるeKYCを導入することで簡易化。岡田社長は「買い取った全商品を店舗とECで中古販売できるため、買い取り価格はどこよりも高い自負がある。しっかりとアピールしていきたい」とする。

 現在、自社サイトで問題となっているのがクレジットカード決済時のエラー。ユーザーが買い物カゴから決済画面に遷移する際に、ブラウザーごと落ちてしまうエラーが一部で出ているのだという。「アマゾンペイ」の導入で対処しているが、原因を突き止めて改善を図る。

 また、熱心なオーディオファンの多い同社顧客のさらなる「ファン化」を推進することで囲い込んでいく。岡田社長は「ポイントもそうだが、『この顧客には先に情報を出す』など、ユーザー個々にあわせて『その人が欲しい情報』を知ってもらえるようにしていきたい」と構想を語る。また、レコメンドの仕組みも強化する。「オーディオの『沼』を、楽しみながらぐるぐると回っていけるような仕組みを、ECでも実現していきたい」。

 「e☆イヤホン」ファンを拡大することで、早期に全社売上高100億円を目指す。実店舗出店は計画していないことから、ECを中心に売り上げを伸ばす考えだ。岡田社長は「イヤホン・ヘッドホン専門店という芯はぶらさず、単に規模を大きくするだけではなく、着実にファンとともに成長したい」と意欲を示す。(おわり)


 
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