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消費者庁の健食審議、中間整理 具体策乏しく

2011年 9月 1日 11:08

健食表示検討会の焼き直し

消費者庁「健康食品の表示に関する検討会」の論点整理を受け、継続審議していた消費者委員会が8月23日、中間整理をまとめた。だが、ここで指摘された内容は先の検討会ですでに問題提起され、十分議論しつくされたものばかり。消費者団体や弁護士が中心となる消費者委だけに、検討会では業界サイドの反対や実現可能性の観点から退けられていた意見が再度蒸し返される形で盛り込まれた。ただ、健食表示のあり方について抜本的な解決策を提示するには至らず、委員会メンバーも8月末で任期を終えることになる。

 消費者委で継続審議を求められていたテーマは、健食表示の効果的な規制や適切な情報提供の仕組みの検討について。消費者委では昨年12月以降、6回に渡り、関連する行政機関や業界団体、食品の専門家などからヒアリングを行い、議論を重ねてきた。

 今後、検討が必要な課題として中間整理に盛り込まれたのは、従来の「表示」に「広告」を加えるなど法改正を伴う食衛法の規制対象拡大や、事故情報に関する事業者からの報告義務化、薬事法や健増法違反の表示に対する消費者団体による差止請求権の付与など「健康増進法・食品衛生法と景品表示法の連携による法執行力の強化、制度の拡充」に関わる8項目、錠剤・カプセル型食品の表示規制、含有成分や錠剤・カプセル型食品の届出制の導入など「機能性表示を巡る制度の見直し」に関わる6項目など。

 だが、消費者委の審議は当初から「健康食品の表示に関する検討会」の焼き直しの感が強かった。ヒアリングに招かれたのも、検討会メンバーを出した国センや日本健康・栄養食品協会、日本通信販売強化などの行政機関や業界団体、検討会メンバーだった神山美智子弁護士など。検討会のヒアリングで呼ばれた日本医師会も再び招聘されるなど重複が目立った。「専門知識にかけるメンバーが議論の中心を担っていたという点ではむしろ、議論の内容は劣化している」と、傍聴の印象を話す健食業界関係者もいる。変わった点と言えば、消費者委の中心メンバーが消費者団体や消費者問題を専門とする弁護士であることから、検討会の論点整理で採用されなかった意見が、公然と提言に盛り込まれていることぐらいだ。

 法執行にあたり、国と地方自治体との連携や地方自治体間の連携のあり方を「早急に検討すべき」としている点や、消費者にアドバイスできる専門家の養成や適切な情報提供のあり方について「アドバイザリー・スタッフに求められる役割を明確にすべき」としている点などは、今更言われるまでもないことであり、投げやりにすら思える。

 消費者委には8月末で現メンバーの任期が終えるため、早急に一定の結論をまとめる必要があるという事情もあったのだろう。審議を行った意味があるかははなはだ疑問だが、いずれにしろ今回示された中間整理は、さらなる検討を必要とするものばかり。ここで示された提言がそのまま消費者庁の施策として反映される可能性は低いとみられる。

 消費者委では今後、新メンバーに議論を引き継ぐことを望んでいるようだが、新たな消費者委の下で改めて方針が決定されることもあり、「スケジュールや方針がどう変わるか分からない」(消費者委員会事務局)としている。

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