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全国通販 アパレル商材が業績けん引、新規顧客開拓にアクセル

2023年 6月15日 12:00

 ハルメクホールディングスグループでシニア向けカタログ通販が主力の全国通販は、改革を進めてきたファッションカテゴリーがけん引する形で業績が回復している。

 同社の2023年3月期の売上高は前年比3・7%増の70億700万円だった。アパレルを中心にオリジナル商品を増やしたことや、積極的な新聞広告投資が奏功して顧客数を伸ばした。好調なファッションカテゴリーの売上高は2ケタ増を維持し、オリジナル商品の構成比は2年前と比べて約2倍に拡大した。

 同社はこの3年間で、とくにファッションカテゴリーにおける商品力の強化や顧客の離脱防止といった改革を推進。前期もマーケットリサーチの強化や顧客理解の徹底、優良サプライヤーとの取り組み拡大などに力を注ぎ、3期連続で黒字を確保した。

 今期は引き続き商品力のブラッシュアップに努めながら、誌面提案の改善を進める。

 誌面改善の取り組みは主に「テーマ設定」と「写真の品質向上」のふたつという。

 テーマ設定については、顧客のニーズに合致したテーマ、顧客の新しい発見につながるテーマを重視する考えで、顧客インタビューなどハルメクグループのリサーチ力も活用していく。

 写真の品質は、トレンドにフィットさせることが大事だという。以前は主流だったファッション誌風の写真の撮り方に対し、「いまはSNSの発信が多いのでお客様が良いと感じる写真も変化していて、インスタの見せ方に近づけることが、顧客の利益につながる」(下川英士社長)としている。

 例えば、あえて逆光で撮影したり、パーツをクローズアップしたりと、さまざまな工夫をしている。すべてをインスタ風の写真に置き換えるわけではないが、まずはファッションカテゴリーの3割程度を占める低価格帯のトレンド感を持たせた商品でトライアル。制作中のカタログに取り入れ始めており、今後の顧客の反応を見極めていく。


 また、価格政策については、値上げラッシュで消費者の生活防衛意識が高まる中、同社も原料と人件費高騰の影響を受けているが、中国生産を縮小し、インドやバングラデシュといった南アジアに生産拠点を移すことで、「上代はなるべく維持していきたい」(下川社長)としている。

雑貨カタログで靴など強化

 一方、食品と雑貨カテゴリーも利益を確保できるようになってきたものの、高い成長軌道には乗っていない。両カテゴリーはファッションと比較するとオリジナル商品の比率が低く、独自性を十分に打ち出せていないのが課題だ。

 今後は、品ぞろえのコンセプトを明確にし、希少性の高いものを中心にバイイングするか、自社開発することで、同社ブランド「ことせ」で買い物をする価値を高める。

 加えて、先行実施したファッション商材と同様、カタログ1ページ当たりの掲載型数を半分程度に絞る。1型当たりの売り上げ拡大を目指すことで、品ぞろえのバリエーションに頼ることなく、単品の商品力を高めることに集中できるという。

 雑貨については、ハルメクと同様にインナーと靴を強化している。両アイテムは年齢や悩みに合わせた商品開発が不可欠で、訴求の仕方を含めてファッションのカタログでは展開しづらいとする。

 また、コロナ前まではカテゴリー間の買い回りは少なかったという。本来はファッション商材であるインナーと靴を雑貨のカタログに掲載することで、ファッションから雑貨へのカテゴリー横断を促す狙いもあり、実際に足もとでは雑貨カタログのレスポンスが改善傾向にある。

 同社では、ファッションカタログの利用者が雑貨カタログでインナーや靴を購入し、その他の雑貨アイテムにも興味を持ってもらえるようにしていく。

ECブランドの開発も検討

 ECチャネルについては、EC経由の注文が30%程度増えているものの、全国通販の中心顧客層はシニアのため、売上高構成比はまだ小さい。

 ただ、「将来的にはECがメインの販売チャネルになっていくだろう」(下川社長)とし、ECチャネルに特化した50代女性向けの新ブランド開発を検討しているという。

 同社の中心顧客層であるシニア向けではなく市場ボリュームのある50代に向けてECの基盤づくりを進めたい考え。
 全国通販の今期(24年3月期)の売上高は前年比14・2%増の80億円を計画する。

 同社では前期までに人材への投資を実施。評価に応じて昇給の幅を大きくし、メリハリを効かせた人事制度としたほか、事業の拡大に向けて採用を強化した。

 また、新規顧客を獲得できる強い商品の数をそろえる目的で”試売”の量を拡大して今期に備えた。加えて、カタログ事業の収益性の基盤が固まり、原資を確保できる状態になったため、新聞広告を活用した新規顧客開拓にアクセルを踏む。

 そのため、利益面についてはEBITDAベースで前期の8700万円から5000万円に減らす見込みだが、4期連続での黒字を計画している。

 
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