"消費行動の変化"を捉えよ

2011年12月15日 13:11

2011年12月15日 13:11

 本紙が行なった通販実施企業を対象としたアンケート調査によると、2011年で最も印象に残った出来事はやはり、3月に発生した東日本大震災であった。この未曾有の災害は通販業界にも様々な影響をもたらした。発生直後は物流網の混乱に伴う商品の配送などの遅延や広告および販促活動の自粛。このほか、一部では計画停電で配送および受注拠点の稼働時間が制限される事態にも陥った。関連工場が被災したために商品調達面でも影響を受けたところもあったようだ。これらにより春先は業績面では厳しい局面に立たされた通販実施企業も少なくなかった。

 震災発生直後の混乱から脱した後も、震災に伴う原発事故などから水や食品、電池などの買いだめが発生。当該商品を販売する一部のネット販売実施企業は特需の恩恵を受けられた一方で、そうした混乱に伴う弊害の方がむしろ強く、過剰に確保した当該商品が今度は余ってしまい、後になって値引き販売をする羽目となり、それが原因で赤字に転落したところもあり、混乱を見せた。

 震災は通販実施企業に様々な影響を与えたわけだが、やはり一番大きな影響として考えられるのは「震災に伴う消費行動の変化」であろう。単純に防災・節電対策商品などの売れ行きがよかったということは当然あるが、それだけでなく震災がきっかけとなり消費のベクトルが「個人」から「家族」、「便利」だけではなく「エコ」にも貢献できるものへ、と大きくシフトさせたのではないか。

 複数の通販実施企業によると、今年は例年になくダイエット関連商材やフィットネス器具の動きが悪く、逆にキッチン雑貨や調理器具、掃除用品などの売れ行きがよいという。テレビ通販ではキッチンやバスリフォーム、太陽光発電パネルも人気となっている。これまでのように自分自身の趣味嗜好に投資するのではなく、震災を経て、より絆が深まった家族の安心や快適さを担保・向上させることができるものにこそ投資しようという消費行動の変化のあらわれと言えるのではなかろうか。

 エコ関連商品の売れ行きがよいというのも震災がきっかけだと言えそうだ。無論、ここ数年間で消費者の意識もだいぶ変化してきているわけだが、やはり「エコ商品がいい」とは言っても、まずは「価格」や「デザイン」など他の要素が優先である消費者が多かったように思う。しかし、震災とそれに伴う電力問題、また様々な節電対策商品やエコ対策商品などを購入、使用しているうちに、消費者のエコ意識を恐らく平時であれば数年はかかるであろうレベルにまで一足飛びに到達させたのではないだろうか。

 これらの消費行動は今年だけの特殊なものではなく、恐らくは来年以降も継続される新しい消費のトレンドであると言えよう。市況はいまだ回復せず、円高や増税など消費に悪影響を与える事柄も多い。しかし消費者はまったく買い物をしないか、と言えば無論そんなことはない。変化する消費トレンドを見定めつつ、適切な商品選定と販促策を打つことができれば、どんな時代でもおのずとモノは売れるはずだ。来年も通販企業各社の奮起に期待したい。

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