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ライオンの浜田勝俊主任部員に聞く・有力メーカーの通販戦略

2011年10月26日 18:15

021.jpgライオンの健康食品通販事業が好調だ。通販事業(一部ギフト通販を含む)は今期(2011年12月期)50億円の売上高を目指していたが、大きく"上ブレ"する見込み。好調の背景には単品通販の常識に囚われない、徹底したデータマイニングに裏打ちされたマーケティング施策の検証力にありそうだ。成長企業が見据える今後の戦略について、ライオン特販事業本部通販事業部の浜田勝俊主任部員に聞いた。(聞き手は本紙記者・佐藤真之)

――通販事業の今期売上高は50億円を目指されていますが、達成できそうですか。
 「あと3週間ほどで超えます。今期は計画値よりだいぶ上ブレします」

――「ラクトフェリン」を主力に7アイテムを展開されていますが、個別商品の状況は。
 「売り上げの約8割は定期顧客に支えられています。今期は通販事業全体の伸びが前年同月比60%増(前期は本紙推計で37億円)で推移している状況で、全品が前年を大きく上回っています」

――今年5月には田七人参を配合した「糖質習慣」を発売しましたが、発売後の状況は。
 「現状はネットでクリエイティブを検証している段階ですが、まだ新規獲得のCPOが計画値に達していません。ただ、クロスセルが好調なこと、また、初回定期の申し込みが多いことが特徴となっています」

――商品特性により適した媒体も異なると思いますが、商材別の戦略は。
 「押しなべてしか言えませんがネットの広告費率が全体の約半分と非常に高いのは特色の一つですね。(ネットの受注比率も)約50%と、健食通販では極めて高い数字ではないでしょうか」

――各社、ウェブマーケティングは強化していますが、低コストで新規獲得が望める一方、顧客育成の観点からみると、組織上、新規獲得と育成の担当部署で連携が取れていないなど課題を残すケースもみられます。
 「当然、担当者同士が意識する目標値は異なるわけで、どの企業でも抱える悩みだと感じます。いくら初回CPOが低くても引き上げ率が悪い媒体は意味がありません」

――その辺りの対応は。
 「KPIとして定期獲得のCPOを重視し、良ければ2つの部隊を評価する。結局は連帯責任ですよね。そうしなければ(組織自体)おかしくなってしまいます」

――継続顧客育成の面でもネット周りの施策が中心ですか。
 「その点、ネットの世界だけでCRMを回すことにこだわっていません。基本は『アウトバウンド』『DM』『メール』その組み合わせになります」

――ネット経由の顧客へのアウト活用はそぐわない印象があります。
 「確かにありますが、アウトが向かないと運命論で決めてしまうのではなく、やり方次第というのが結論ですね。電話のタイミングや内容次第」

――どういった使い方をしていますか。
 「デモグラフィック属性や行動履歴、入り口媒体、注文時間など...それらマトリクスの作成から時間別にアウトをかけていくことで徐々に『このパターンの人はこの時間は駄目』『ここは一番引き上がる』といった傾向が見えてきます。マトリクス全てが駄目ならばネット経由の顧客にアウトが効かないという結論もあるでしょう。でも決してそうではありません」

――少し検証して駄目というのはもったいない。
 「そう感じます」

――いつ頃からの取り組みになりますか。
 「通販事業の開始当初からになります。健食業界の歴史から言えば参入は後発ですし、そもそも業界の定石も知りません。ですからやれることはやってみようという考えが根本にありました。また、ネット市場が拡大する中、ネット周りの施策を厚くすることも当初から志向してきました」

――長年検証される中で見えてきた。
 「そうですね。まだ事業を開始して約4年ですが、当然、最初はオーダーレートも悪かった」

――今ではCRMのプログラムもある程度確立されてきていますか。
 「まだ各々の指標を高める必要はありますし、やはり疲弊もします。組み合わせを変えつつ検証していますが、この点、アウトをしていると顧客の家庭環境の様子も伺え、マーケティングに活かせる部分もあります」

――今後の課題は。
 「一つは物量の拡大に質を落さず対応していくこと。今はアウトソーシングを活用しての事業拡大がベースにありますが、今後はリスクマネジメントの観点からも複数拠点の活用を視野に入れています。もう一つは、ウェブマーケティングを活用し、定期客の引き上げ率を高め、離脱率抑制を図ること。もっとネットでやれる領域があるだろうと考えています」

――具体的には。
 「一つはネットの起点となる『オンラインショップ』の機能拡充や、ソーシャルメディアを活用した顧客エンゲージメント(顧客との深い関係性の構築)の向上ですね。『エンゲージメント』は10年程前からブランディングの世界ではさかんに言われてきたことですが、商品の売買を行う領域でもこれを築ける施策を進めようと。市場への参入は後発ですが、この分野はまだ先を行くプレーヤーはいません」

――顧客とダイレクトのコミュニケーションを行える特性を備えている点で、社内的なプレゼンスも変わってきていますか。
 「通販に限らず『ダイレクト』をキーワードに何かできるのではないかという議論はさかんに起こってきています」

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