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ゾゾの前期業績と次の一手は? 計画未達も大幅な増収増益

2012年 5月10日 10:37

今期はイベントやカタログ発刊、正価販売を強化へ

スタートトゥデイ(本社・千葉市美浜区、前澤友作社長)の2012年3月期業績は、売上高が前年比33・6%増の318億600万円、営業利益は同31・7%増の77億400万円、純利益は同49・3%増の46億3400万円と大幅な増収増益となったが、商品単価の下落やセール販売比率の拡大が響いて、いずれも計画には届かなかった。

 同社は昨年4月から返品の受け付けを始めてサービス向上に努めているほか、テレビCMの効果もあって1年間に獲得した新客は計画を上回る154万人で、前期末の会員数は約467万人に拡大した。

 一方、デフレはアパレル業界にも直撃。ファストファッションの定着もあって消費者の低価格志向は根強く、前期に「ゾゾタウン」で扱った商品の平均プロパー価格は前年の9041円から8317円に下落した。

 また、セール品の販売比率も25・8%と約2ポイント拡大し、通年の商品単価は想定した7194円よりも4・5%低い6865円。商品単価の下落に伴い、平均出荷単価も計画値の1万3333円に対し実際は1万2886円にとどまった。

 会員の大幅増を背景に出荷件数は計画より4万件多い622万件となったものの、商品単価の下落が重く、商品取扱高は818億円(前年比43・2%増)と計画の840億円には届かなかった。

 また、既存会員のアクティブ化は、目標の90万4800人に3万人以上足りなかったことや、既存アクティブ会員1人当たりの年間購入金額が想定を約7000円下回ったため、業界内では"ゾゾ離れ"を指摘する声も出始めているが、一方で、ゲスト購入を除く新規を含めたアクティブ会員1人当たりの年間購入点数は5・6点から6・3点に、年間購入金額も4万2475円から4万2885円に拡大しており、「むしろ、ゾゾへの依存度は高まっている」(前澤社長)と説明する。

今期は新たな
チャレンジも


 今期はデフレ下での成長を前提に、正価販売比率の拡大に本腰を入れる。一環として、5月1日に人気ブランドの予約商品を掲載した「ゾゾカタログ」(画像=A4判・132ページ)をスタートした。創刊号は約100ブランドが参加。5月下旬から6月中に販売する各ブランドの目玉商品を紹介して予約を受ける。カタログ掲載の約900点に加え、サイト上ではカタログ未掲載品も含めた約1000点を特集する。

 カタログの発行部数は50万部。5月中に「ゾゾ」で買い物をした顧客に同梱して届ける。まずは半年間、毎月発刊することで予約販売比率を全体の2割に高めたい意向だ。

 9月15~16日には幕張メッセ(千葉市)でイベントを開催する。取引先の50~100ブランドが参加して秋冬の新作を店頭に並ぶ前にいち早く披露し、その場で予約できるようにする。2日間で3万人の来場を見込んでおり、成功すれば年2回のペースで開催したい考えという。

 また、百貨店など大手小売りの動きに同調し、セール期間の短縮にも着手する。今夏のセールは従来の7月1日スタートを改め、同月12日からとすることで、正価販売期間を長めに設定する。

 それでも、今期は慎重に予算を策定しており、出荷単価は前年比4・5%減の1万2301円を想定。年間購入金額も既存アクティブ会員が5万7451円(前年比2・5%減)、新規アクティブは同2万3008円(同2%減)、ゲスト購入者が同1万836円(同1%強マイナス)を見込む。出荷件数は906万件、商品取扱高は1115億円を計画する。

 また、今期はメーカーとの在庫連動などで取り組んでいる欠品対策を強化する。同社では、完売した商品が再入荷した場合にメールで知らせるサービスを行っているが、前期の再入荷リクエストは商品価格の合計で400億円強あった。

 これまで、リクエスト希望者のうち本気で購入したい顧客の割合は把握していなかったが、ブランドの協力でデータを収集。リクエスト希望者に予約注文でも商品を購入したいか聞いたところ、「イエス」と回答した顧客は半数に上った。

 しかも、購入意思のあるリクエストのうち、ブランドの店頭や倉庫に在庫が残っていたケースは8割以上で、単純計算すると200億円規模の機会ロスが生じていたことになり、今期はこの在庫の確保に注力する。

 一方、中国事業にもメスを入れる。これまでは人気ブランドの商品を日本で買い取り、関税を払って中国に輸出し販売していたため価格も高く、当初の計画どおりには売れなかったという。5月からは、中国に進出しているブランドとタッグを組み、中国で生産された商品を現地で販売する形に改め、委託販売型でブランドごとの品ぞろえも厚くする方針だ。

 また、今後の成長を見込んで、フルフィル業務全般を行う物流センター「ゾゾベース」を来年10月に現在の約4倍に拡張する。同社では、千葉県習志野市に延床面積約3万3000平方メートルの物流センターを賃借しているが、新たに物流施設開発のプロロジス社から近隣に約10万8500平方メートルの物流拠点の賃借契約を締結。新拠点の稼働後は、商品取扱高で3000~4000億円まで対応できるようにする。

 なお、13年3月期の売上高は前年比31・1%増の417億円、営業利益が同35・5%増の104億4000万円、純利益は同37・5%増の63億7000万円を計画する。

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