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コロナ後は緩やかに縮小<市場規模700億の「青汁」市場①> トレンド、主要プレーヤー変化も

2024年 3月22日 12:00

 青汁市場は、ここ数年7~800億円規模で安定的に推移する。ただ、コロナ禍を経て緩やかな減少傾向に転じている。

 青汁の通販市場は、古くはいずれも”野菜不足”のニーズに応える「栄養素」と「飲みやすさ」の訴求が市場を二分していた。栄養素が豊富なケールを原料に「まずい、もう一杯」のCMで認知を得たキューサイ、大麦若葉を原料に「ごくごく飲める」ことを売りにテレショップで認知を高めたアサヒ緑健が高いシェアを持っていた。

 近年は”機能性”により差別化を図る訴求が強まっている。トレンドの変化も早く、主要プレーヤーの入れ替わりも激しい。一方で、「青汁」という商品自体は市場に定着しており、新たな商品設計やマーケティングなどアプローチ手法で企業の参入が容易な市場でもある。

 市場に定着して以降は、キューサイやアサヒ緑健に続き、テレビ通販への積極的な広告投下で認知を得たテレビショッピング研究所、シニアに認知の高い「乳酸菌」を配合した世田谷自然食品などが台頭した。当時の青汁は、シニアをターゲットに新聞やインフォマーシャルで認知を図る展開が一般的だった。

 その市場で「若年層向け」、「ダイエット訴求」という新たなアプローチで、ウェブのアフィリエイト広告を中心に急成長を果たしたのがメディアハーツ(現ファビウス)。当時の通販市場は”ファスティング”を目的に食事の代替にする飲料を展開する企業が多く、このことも成長を後押しした。ただ、現在はブームが一巡。青汁ユーザーのすそ野が広がった市場で、これをフックに成長しているのが新日本製薬だ。

 同社は、「血中中性脂肪・体脂肪・血圧」のケアを目的とする機能性表示食品で訴求。ECを中心に新規獲得が好調に進む。今期(24年9月期)も青汁への投資を継続しており、これを含め、ヘルスケア事業は約52億円の売り上げを計画する。青汁ECで得た知見を、他商品にも生かすことで、健食関連の事業基盤を固める。

 流通卸では、コロナ以前はインバウンド需要を見据え、CMなど国内外のプロモーションを強化した山本漢方製薬が認知を得ていた。ただ、コロナ以後は、訪日外国人の動向変化などインバウンド需要の性質が変わり、新たなアプローチを模索しているとみられる。

 本紙調査で、市場のトップシェアは、「ごくごく飲める」の名称で飲みやすい青汁を展開する伊藤園。通販で「おいしい青汁」を展開する森永製菓も定期顧客数が増加している。今期(24年3月期)は3Qを終えて約23%増で推移。コラーゲンドリンクに続く第2の柱として育成を目指す。

 市場で流通する青汁は、約8~9割が「粉末タイプ」とされる。一部で「錠剤」もあるが定着しておらず、伊藤園は強みのある飲料で展開。「ドリンクタイプ」の利便性が支持を得ている可能性がある。他社とのコラボレーションで拡販を進めるキューサイなど業務用も一部にあるが、市場の形成はこれからだ。

 本紙による今回調査の売上高総計(ランキング掲載企業)は、約738億円。そのほかの調査データでは約787億円(20年)を天井に減少基調に転じている。

 健康ニーズの多様化から、免疫ケア訴求の乳酸菌飲料、機能性表示食品制度の活用など新たな需要創出の動きも活発化している。将来的に700億円前後にまで市場規模が落ち込むとの見方もあり、「すでに成熟市場で再成長は期待できない」という声も聞かれる。次回は個別企業の動向を見ていく。(つづく)


 
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