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日本郵政グループ、中期経営ビジョン策定、決済などサービス強化

2012年10月 8日 10:20

「ゆうパック」競争力維持へ

郵便局会社と郵便事業会社の経営統合による日本郵便(本社・東京都千代田区、鍋倉眞一社長)が10月1日に発足し新グループ体制になったことを受け、持株会社の日本郵政(同、斎藤次郎社長)は同日、2012年までのグループの中期経営ビジョンを公表した。それによると、全国約2万4000カ所の郵便局ネットワークを活用したサービスの展開などで郵便や銀行、保険など各事業の拡大を推進。郵便事業では、「ゆうパック」など物流分野の強化で、取り扱いの減少が続く郵便分野をカバーするとともに、新たな収益基盤の確立を目指す。

 中期経営ビジョンでは、テーマとして(1)サービス(2)マネジメント(3)社風の3点の改革を提示する。(1)は顧客のライフサイクルに合ったグループ各社の商品・サービスの提供を通じ"総合生活支援企業グループ"としての展開を、(2)は全国の郵便局ネットワークを活用した展開で競争力や収益力のある民間企業への再構築を目指すもの。(3)は、人事評価制度や給与体系の見直しなどを通じ、民営化後もはびこっていた官僚的な体質からの脱却を図ることが概略となる。

 郵便事業については、取り扱いの減少が続く郵便分野を物流分野でカバーし、安定的な経営基盤を確保するのが基本的な考え方になる。

 特に「ゆうパック」は、市場の拡大が続く通販・ネット販売関連荷物の取り込みが期待されるが、他の有力宅配便事業者が通販事業者を意識したサービスを強化するなど競争が激しいのが実情。2010年7月に発生した遅配問題の影響もあり、通販の大口荷主企業の開拓には難しさも残る。

 これに対し今回の中期経営ビジョンでは、郵便と宅配便の集配を同一ネットワークで処理するなどの効率化を進めるほか、ネットオークションなどネット販売向けのサービスの展開や決済メニューの拡充、集荷・再配達サービスの強化などで巻き返しを推進。また、DMの企画から発送までを行うサービスと合わせた展開で通販事業者の取り込みを図る考えのようだ。

 一方で、新たな収益源として物販事業にも力を入れる意向で、全国の郵便局で展開する「ふるさと小包」などカタログ販売の強化・拡充や「ふるさと小包」をイメージした海外向け物販事業の展開を計画。このほかに、郵便局などの余剰スペースを活用した宅配機能付きの貸し倉庫サービスの展開も構想する。

 郵便事業会社の前期(2012年3月期)業績は、「ゆうパック」の採算性の問題などもあり、約224億円の営業損失を計上。日本郵政では今回の中期経営ビジョンでの取り組みを通じ、今期に郵便事業全体の単年度黒字化、2016年3月期に「ゆうパック」の黒字化を目指す考え。

 07年に分割民営化された日本郵政グループだが、まだ民間企業とは言い切れないのが実情で、今回の中期経営ビジョンは、これまでの紆余曲折で不安を抱える社員に今後の方向性を示す意味合いが強い。全般的には、独自の郵便局ネットワークを活用した展開で「ゆうパック」など各種事業の拡大を図る意向だが、現場レベルでの意識改革やオペレーション品質の向上がどれだけ進められるかがカギを握りそうだ。

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