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ニッセン、上場廃止の背景は① 「ブランド戦略」実らず 

2016年 8月18日 10:40

「ニッセンホールディングス(HD)のカタログ販売やインターネット技術を高く評価しており、当社グループのリアルな店舗という強みと融合することで、新たなシナジー効果が生まれると判断し、提携した」。

 2013年12月、セブン&アイ・ホールディングス(HD)とニッセンHDによる資本業務提携締結発表の記者会見で、セブン&アイHDの村田紀敏社長(当時)はこう語り、ニッセンHD買収のメリットを強調した。しかし子会社化から2年半、ニッセンHDの業績は悪化する一方で、セブン&アイHD側が期待していたようなオムニチャネル関連における目立った成果は出ないまま、ニッセンHDは完全子会社化されることになった。

 ニッセンHDではこれまで、衣料品や家具などで「値ごろ感」を打ち出すことで店舗などへの優位性を保つ典型的な総合通販のビジネスモデルで成長してきた。消費者の間にも「安さのニッセン」というイメージは浸透していたが、SPA(製造小売業)の発展がこうした優位性を失わせた。安価で流行を取り入れた商品を随時投入できるSPAに対し、カタログ通販は商品企画から販売まで1年近いタイムラグが生まれてしまうからだ。

 ニッセンHDでは、ネット販売においても価格面での優位性を保つ戦略を仕掛けてきた。例えば04年秋には、消費税の総額表示を期に商品価格を一律5%値下げ。09年秋カタログでは前年秋カタログ比で平均10%価格を引き下げた。09年当時のニッセン佐村信哉社長は、本紙のインタビューに対し「ネットで強くなろうと思ったら、プライスリーダーにならなければいけない」などと語っていた。

 ただ、ネット販売を良く使う若年層女性からは「安っぽい」と受け止められがちだったニッセンの商品。ユニクロに代表されるSPAにはブランド価値という点で大きく引き離されていた。そこで10年からはブランドイメージの転換を図るべく、社内に戦略プランニング本部を設置。女優の香里奈さんをイメージキャラクターに起用したテレビCMなどを展開するなどの施策で「手ごろな商品を扱っている」というブランド観を確立、F1層のファン開拓を狙ったわけだ。

 だが、こうした戦略も実を結ばなかった。11年12月期決算のアパレル売上高は減収に。特にリピート率の悪化が深刻だった。ニッセンHD佐村信哉社長(12年1月当時)は、「ネットのライバルとの競争に負けている」と原因を分析。楽天市場やスタートトゥデイの「ゾゾタウン」などに「価格や品揃えで負けている」(当時の佐村社長)ことがリピート率悪化につながっていた。

 07年には投資会社のアドバンテッジパートナーズがサービスを提供するファンドを引受先に第三者割当を実施。一時は「他の大手総合通販との提携や合併を模索する動きも進んでいた」(業界関係者)という。他の大手総合通販に比べると財務体質は弱く、08年12月期には自己資本比率が14・2%まで低下。10年12月期は39・7%まで持ち直したものの、セブン&アイHDによる買収前となる13年12月期の自己資本比率は27・7%。その後は最終赤字が続き、今中間期は債務超過寸前まで追い込まれた。
(つづく)

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