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再春館製薬所、新会社でテレマーケティング事業参入へ 「LTV」重視のセンター運営で差別化図る

2017年 7月20日 10:47

 033.jpg化粧品通販大手の再春館製薬所が、テレマーケティング事業の外販に乗り出す。再春館製薬所は、1982年のテレマーケティングシステムの本格導入以来、テレコミュニケーションを軸にしたビジネスモデルで強みを発揮してきた。新事業では、累計900万人を超える顧客と築いてきた関係性の構築で培ってきたノウハウを活かし、効率性を追わず、「LTV(顧客生涯価値)」にこだわったコールセンター運営を目指す。

5年で10億円の売り上げ視野

 テレマーケティング事業は昨年10月に立ち上げた新会社、ヒューマンリレーション(本社・福岡市中央区、西川正明社長)を通じて行う。手がけるのは、「コールセンター事業」のほかにコミュニケーターや管理者の教育研修を行う「教育事業」、コールセンター体制の構築を支援する「業務支援(コンサルティング)事業」の3つ。

 コールセンターは現在、50席を展開する。コミュニケーター22人、管理者であるスーパーバイザー(SV)4人を含む従業員32人が在籍。従業員はすべて正社員として雇用しており、応対品質やカウンセリング力の熟練度を高めていく。取引先の拡大に応じて早期に100席の展開を視野に入れており、5年で10億円の売り上げを目指す。

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「再春館クオリティ」強みに事業展開

 コールセンター事業では、取引先ニーズに応じて少席数からのインバウンド、アウトバウンドの受託に対応する。対象とする商品は、再春館製薬所でノウハウを培ってきた化粧品や健康食品などリピート商品が中心。ただ、高単価、高付加価値の商品を扱ってきた経験を活かし、取引先ニーズに応じて幅広い商品を手がけていく。

 強みにするのは、再春館製薬所が独自のコールセンター運営で培ってきた「傾聴力」「応対品質」
カウンセリング力」だ。

再春館製薬所は、82年のテレマーケティングシステムの本格導入以来、これまで900万人を超える顧客と接点を持ち、これら顧客と継続的な関係を築くことを目指してきた。独自の教育研修で応対品質を高めてきたことで、リピートによる売上高の割合は年々増加。92年に83%だった割合は、14年に94%に達している(=表上)。2000年に28%程度(約6万人)だった5年以上の愛用者も今では6割(約20万人)を越えている。

 昨今、デジタルコミュニケーションは多様化し、コールセンター業界でもAIの活用などが注目されている。ただ、ヒューマンリレーションでは、高齢化社会の進展を背景に、今後も電話によるサポートに利便性を感じる層は一定数に上ると判断。声を通じて行うテレコミュニケーションでは、単なる注文といった機能だけでなく、顧客の悩みを捉えるなどの要素が重要になるとみる。

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 再春館製薬所で電話応対する「お客様プリーザー」(コミュニケーター)は、商品の受注だけでなく、個々の顧客に応じたアドバイス、潜在的なニーズや悩みを捉えるなど顧客に寄り添った応対が強み。ヒューマンリレーションでも再春館製薬所で経験を持つSVが複数人在籍するほか、コミュニケーターの研修でも一部で連携して実施。長年のテレコミュニケーションで培ったノウハウを積極的に取り入れていくことで、応対品質やカウンセリング力を高めていく。

 再春館製薬所がテレコミュニケーションを軸にビジネスモデルを構築してきた背景もあり、新会社もまずは受託する分野を「電話でのコミュニケーション」に限定。強みを最大限発揮できる分野で事業拡大を目指していく。

従来のセンターと一線画す運営

 特徴的なのは、時間短縮など"効率性"を重視しないこと。「コールセンターの代行事業では、いかに短時間で処理を行うか、効率的な運営に特化するところが少なくない」(松本隆明取締役事業統括本部長)と従来のアウトソーサーと一線を画すセンター運営を目指す。

 一般的に、コールセンターは、一人あたりの応対時間を短縮し、効率性を追求する。ただ、クレームのない正確な応対は、"事務的"なものにもなりがちだ。

 一方、ヒューマンリレーションでは運営にあたり、マニュアルやトークスクリプトに依存しない顧客一人ひとりに応じた応対品質を重視。単なる注文処理業務にとどまらず、顧客の潜在的ニーズを引き出すことで顧客満足度を高め、企業と永続的な関係を築くことを目指す。

 コミュニケーターの研修でも、一般的な企業情報や商品知識の習得にとどまらず、肌や身体の健康、老化のメカニズムなど関連する知識にまで踏み込んで習得する独自の研修で対応力を高めていく。これにより、顧客の離脱防止やクロスセルにつなげていく。顧客の性別や年代など属性ごとに潜在的ニーズを分析し、効果的なプロモーションの提案も行っていく。

教育事業、コンサル事業も開始へ

 新会社では、「コールセンター事業」のほかに、コミュニケーターやSVの育成に向けた「教育事業」も手掛ける。

 研修では、企業情報や商品知識の習得に加え、マーケティングやビジネスの基礎知識、関連する法知識や競合他社の商品を含めた知識、季節に応じた商品の使用方法の習得まで一貫して請け負う。これにより幅広い対応力を身につけることを目指す。

 応対品質でも、一般的な会話スキル、マナーだけでなく、個々のコミュニケーターの応対品質を評価することで個別指導を行う。行動心理学などの要素を踏まえ、顧客のタイプ別の応対方法も研修で身につけていく。取引先ニーズに応じてこれら「商品研修」や「トーク研修」「ロールプレイング」の実施で潜在的ニーズを引き出す質問スキルを身につけ、単なる"問い合わせセンター"の機能にとどまらず、顧客をファン化できるセンターを目指す。

 研修メニューは、1日~5日の短期コースから長期まで取引先の要望に応じて個別にカリキュラムを組むなど多様なメニューを揃える。

 また、「業務支援(コンサルティング)事業」では、数カ月から半年をかけ、取引先の要望に応じてコールセンターの立ち上げや改革などを請け負う。

 インハウスでコールセンターを運営する上で多くの企業が直面する課題が、「目指す姿」と現状のギャップ。応対品質のばらつきや業務の属人化、サービス範囲が限定されてしまうなどの課題がある。これら各センターの課題を抽出、現場調査や分析を行った上で、教育研修や評価制度の構築、業務マニュアルの整備による業務の標準化、窓口の受付時間の延長などの改善案の提案と実行までを支援する。

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新事業立ち上げの経緯と強みは

強みは「応対クオリティ」
潜在ニーズ捉え、信頼関係構築

テレマーケティング事業など通販支援事業に参入したヒューマンリレーションの松本隆明取締役事業統括本部長(顔写真㊤)と、荒木莉恵コンタクトセンター長(顔写真㊦)に、参入の経緯と自社の強みを聞いた。

参入の経緯は。

松本「再春館製薬所では外部の見学者を積極的に受け入れており、これまでもリピート率の高さや応対品質など、センター運営のノウハウに関心を持たれる方が多かっ
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た。これを事業化し、他社に提供できないかと考えた。事業化の検討を進める中で昨年4月、熊本地震でコールセンターが一時操業を停止した際、BPO対策の一環でセンター機能の分散を検討したことがきっかけにはなった」

強みは。

松本「一般的なセンターの運営では、いかに短時間で多くの処理を行うかという効率的な運営に特化するところが少なくない。トークスクリプトに沿った対応に注力し、事務的な対応になりがちだ。一方で、再春館製薬所ではこれまで、モノを売るというより『企業』と『お客様』の関係を考え、マニュアルに依存せず、潜在的なニーズを捉えるよう努めることで、お客様に信頼してもらえる応対を目指してきた。そこで培ってきた『応対品質』や『カウンセリング力』は、ほかのアウトソーサーにはない強みを身につけているのではないかと思う」

ただ、そうした部分は目に見える価値として捉えにくい部分ではある。

荒木「すぐに数値に現れる部分ではないが、再春館製薬所は9割を超えるリピーターに支えられ、5年以上愛用されるお客様が今も増え続けている。定期の継続や、顧客離脱に悩まれる企業も少なくないと思うが、お客様に寄り添った対応を心掛けることで最終的に長く続けてもらえる関係が築ければ価値を感じてもらえるのではないか」

コミュニケーターの研修も一朝一夕にはいかない。

荒木「研修でスキルを身につけることはできるが、マインドの部分を養わなければ目指す対応にはいきつかない。(再春館製薬所では)よく"誰がでても同じ対応だね"と言われるがマニュアルがあるわけではない。『対応の流れ』が同じなのではなく、お客様の話を興味を持って聞く姿勢、お客様の悩みに親身になってヒアリングするやり取りにお客様が"同じだ"と感じてもらえているのだと思う。目指す方向性があれば、個々のコミュニケーターの不足する部分を指導しつつ、応対品質やカウンセリング力は高めていけると思う。そこにお客様の性別や、タイプ別の対応などノウハウを組み合わせ、リピートしてもらえるような仕組みづくりができる」

松本「正社員雇用している理由でもあるが、商品だけでなく肌や身体の健康に関する根本的な知識まで深め習得できる体制を敷いている。必要に応じて再春館製薬所の業務も一部受託しつつ、力をつけているところだが、応対品質も再春館製薬所のきずなづくりをベースに個々のお客様に対応できる独自の研修を行っている」




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