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【松尾隆久社長に聞く カタログハウスの今後は?】 “常連さん”を大切に、新客獲得強化で赤字も手ごたえ

2019年 8月 1日 13:30

 カタログハウスが「顧客満足」に軸足を置いた事業推進を強化している。これまでも顧客政策には注力してきたが、昨春に新設した「顧客満足センター」という顧客の声を分析し、顧客の声に即した政策立案を行う専門部署を本格始動。既存顧客に対する満足度向上のほか、昨年から出向頻度を高めるなど本格的な展開をスタートさせた新聞折込チラシなどを中心とした新規顧客獲得施策で獲得した新たな顧客に対しても顧客満足の追求により、継続顧客化を図っていく考え。4月1日付で同社社長に就任した松尾隆久氏に今後の事業の方針などについて聞いた。
 
 ――今年4月から社長に就任した。改めてカタログハウスという企業の強みをどう考えているか。

 「お客様の満足を第一に据えてこれまで事業を行ってきたということが強みだろう。通販に限らず、小売業が継続していけるかどうかのポイントは結局、いかに多くのファンを作れるかだろう。つまり、その店が永続きするためには当然、”一見”のお客様だけでは成り立たず、馴染みのお客様、つまり、”常連さん”をいかに作っていけるかがキモだ。

 当社としても、そこにずっと注力をしてきたつもりだ。例えば、メーカーの設定した修理期間の延長自体は家電量販店などでもやっていると思うが、多くの場合は有償で行っている。当社は以前から無料で実施している。また、『メンテナンス通信』という施策も20年以上前からやっている。これは季節需要商品や耐久消費財の購入者を対象に、商品の手入れ方法や再使用時の注意点、消耗品の紹介といった情報をDMでお送りする政策だ。

 当社の強みはカタログ上などでの表現力、コピー力と言って頂くことが多く、もちろんそこが、営業の要であることは確かなのだが、私としてはこうした商品を購入した後のアフターサービスに以前から注力してきたことで『ここで買えば間違いない』『安心だ』と思って頂いている、つまり、購入後の満足度が高い数多くのお客様に支えられていることも大きな強みになっていると思う」


 ――多くのファンに支えられ、これまで安定した業績を維持してきたわけだが、前期(2019年3月)の決算では売上高は前年比0・2%減の260億8000万円と減収、また経常損益は1億5000万円の損失と30年ぶりの赤字となった。

 「今回の赤字の理由は明確だ。新規顧客の獲得を強化するために広告宣伝費を多く投下したためだ。ありがたいことに当社は多くのファンの方々に支えられているわけだが、その方々の平均年齢は年々、上がってきている。年齢がもっと上がっていけば、商品の購買力は下がっていくことは明らかだ。企業を継続していくためには新しいお客様を獲得していかなければいけないのは当然だ」

 ――新規顧客の獲得が必要なのはその通りだが、それはこれまでも行なってきた。なぜ、前期は赤字になるほどの予算を投じたのか。

 「当社のこれまでの新規顧客獲得策というのは基本的には新聞広告での『”通販生活”の定期購読の募集』だったが数年前からこの定期購読募集の広告をやめた。募集しても反応が悪くなったためだ。ほかにも要因はあると思うが、雑誌というメディアそのものがインターネットの発達で情報がタダで入る時代になって売れなくなってきているということが大きな要因だろう。

 とはいえ、新規顧客は獲得していかなければいけないわけで定期購読募集に代わるやり方を模索する中で、『メディカル枕』や『マキタの掃除機』などの売れ筋の雑貨もののほか、『元祖もろみ酢』などの食品や『UVカットシルクパウダー黄金まゆ絹粉』などの化粧品などリピート商品を新聞折込チラシで訴求していく方法をとるようになり、2、3年前から月1回くらいのペースで出稿を始めて、昨年の9月くらいからは全国に広く配布する前に効果検証として少部数でテストするといったことを含めて出稿頻度を週に1、2回のペースとして新規顧客獲得手段として本格展開するようになった。

 出稿頻度を大幅に増やした理由はもちろん、これからの事業継続を考えたときに、新規顧客獲得が当社にとって最も重要なテーマであると判断したということだが、当然、獲得効率の問題がある。『通販生活』の定期購読募集で獲得できた人数と新聞折込チラシで商品を訴求して当該商品を購入頂く人数を比べると当然、大きな差がある。また、新聞折込チラシで商品を販売した段階で広告費がペイできるわけはなく、あくまで新聞折込チラシで獲得したお客様にその後、DMや『通販生活』を何回か送付して、そこで何度か商品を購入して頂き、ペイするわけで、同じ新規顧客獲得としての広告出稿でも人数を集めるための効率が大きく違うわけで、一定の数の新規顧客を獲得するためには以前よりもより多くの投資が必要なためだ。

 当然、獲得した新規顧客が利益に貢献してくるまでには時間がかかるために前期は赤字になったが、獲得数や獲得後の歩留まり、引き上げ率など各指標から判断して『いける』という感触は得ており、今期も新規顧客獲得は引き続き、強化していく」


 
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