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【吉岡社長に聞く アスクルの“これから”は?】 ヤフーとの話し合い開始へ、川邉社長との面談も要請

2019年 8月29日 13:30

 運営する通販サイト「LOHACO(ロハコ)」の運営や低迷する業績の責任などを巡って、筆頭株主のヤフーと対立が続くアスクル。8月2日開催の定時株主総会でヤフーらの反対で退任に追い込まれた同社創業者の岩田彰一郎氏に代わって、代表取締役社長兼CEOに就任した吉岡晃氏に今後のヤフーとの関係性や方針、今回の騒動で争点となった支配株主からの独立性の担保についての方策、また、アスクルのこれからの方向性などについて聞いた。
 
 ――ヤフーら大株主との対立が続く中で、8月2日の株主総会で創業社長の岩田氏が退任し、新たに社長に就任した。長らく会社を率いてきた岩田氏の後任で、かつ大株主との対立関係も続く中での社長就任となった。

 「まず何よりも今回の一連のことでお客様をはじめ、取引先などステークホルダーの皆様にご心配をおかけしたことに対してお詫びしたい。また、(株主総会でヤフーら大株主の議決権行使で3人の独立社外取締役が退任し、現在、独立社外取締役がいない状態という)上場会社のガバナンス上、非常に大きな欠落を生んでしまっている状況に関しては遺憾であると考えており、この状況を早急に改善したい。今後は経済産業省や東京証券取引所、メディアに向けてきちんと適切な情報開示を行い、このようなこと(ガバナンス上、問題となる状況)が起こらないようにしていきたいと考えている。そして、これからすべきことは何よりも業績の拡大だ。お客様からの支持をきちんと得ることなど地に足をつけた施策に注力して、掲げた業績目標をきちんと達成していくことに尽きるだろう。これまでも(「ロハコ」などを統括するBtoCカンパニーの)COOとして『ロハコ』の業績拡大に取り組んできたが、経営の最高責任者になったため、当然、これまでと視点が変わってくる。そうした視点から『ロハコ』の課題、いわゆる赤字構造をどうやって脱却させていくかを考えていきたい。また、(主力事業の法人向けオフィス用品通販の)BtoB事業や物流事業についても『ロハコ』を補完するため、安定さを求めるのではなく、より強化していくことでアスクルがより強くなり、それにより、結果的に『ロハコ』を支えることにもなると思う。トップとして責任を持って『ロハコ』の赤字改善を今まで以上に断行していくとともにBtoB、物流もこれまで以上にどう強いものにしていけるのかに注力していきたい」

 ――株主総会でも株主から岩田氏の社長退任が業績に与える悪影響を懸念する声もあったが創業者である岩田氏の社長退任は社内外で大きな反応があったのではないか。

 「岩田が社長を退任した8月2日の夕方、岩田が社員に向けて最後にメッセージを送る会を社内で行ったのだが、これまで見たことないくらいの数の社員、業務委託先のスタッフのみんなが集まって社内は人で溢れ、皆、涙して最後を惜しんでいた。それだけ、岩田が皆から好かれていたのだろう。岩田が退任して取引先との関係性が崩れるのではないかと懸念する意見があるのも事実だが、私が社長に就任した後、取引先などから『岩田社長の後はすごく大変だとは思うけど、引き続き支えるよ』というメッセージをたくさん頂いている。それも岩田が皆様から信頼されていたからこそだろうとこの立場になってみて改めて感じているところだ。アスクルのDNAは岩田が1人で作り上げて来たのではなく、皆で積み上げるように作ってきたものだ。『お客様のために進化する』という当社が大切していることは岩田が退任しても変わらない。8月5日の社長に就任して最初の全社朝礼で『岩田がファウンダーとして皆で築いてきたDNAは不変だ。これを我々が守りながら、さらにより権限移譲の進めながらスピード感を持ってやっていこう』ということを社員に向けて話をしたのだが、皆、同意してくれたと思う。むしろ、(社員も取引先も)一枚岩で前を向いていこうというムードになっている」

 ――8月2日の株主総会後の記者会見では、拙速な判断は避けつつも引き続き、ヤフーとの資本提携解消に向けた協議を進めていきたいとしていた。また、株主総会にアスクルの取締役として出席していたヤフーの小澤専務からあった「ロハコのリバイバルプラン自体に異存はないが、問題は執行体制だ」という発言について真意を確認したいという話もあったが、あれからヤフーとの協議は進んでいるのか。

 「その後、申し入れや話し合いは開始した。今はまず、先ほど申し上げた不在となっている独立社外取締役について、新たに選任することを優先するための協議を進めていこうと思っている。そのためには、当社のガバナンスの規定通り、取締役会の諮問機関として取締役などの選任について検討し答申案を策定する指名・報酬委員会を組成しなければいけない。そして指名・報酬員会を通じて独立役員を選定したい。資本提携云々についても上場企業として、こうしたきちんとした装置を作ってガバナンスに乗取って進めていくべきであり、そうした申し入れはヤフー側に行っており、それに関しては(ヤフーも)きちんと聞き入れてくれた。一方で、事業の執行に関して言えば、互いに上場企業であり、特に我々は少数株主の保護を観点をベースに是々非々で『我々としてはこういう風に事業を進めていきたいんだ』と主張して、協力頂けるところはないかという申し入れについても今後させて頂くという話もしている」

 ――ヤフーとの資本提携時から月1回、開催してきたアスクルとヤフーの経営トップらとの会合「ステアリングコミッティー」も再開するのか。

 「この1カ月は先方の要望でスキップしたが、再開したい。これまではヤフー側からは(専務)の小澤氏に出席頂いていたが、(ヤフー社長の)川邊氏ともきちんと話をさせてくださいと私の方からしており、先方からもそのような方向で進めるという話はもらっている」

 
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