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ニュースの断層 「ゆうパック」遅配問題、リスク認識の甘さ露呈

2010年 7月18日 22:21

 「ペリカン便」統合直後に発生した「ゆうパック」の遅配問題。7月8日の段階でほぼ正常化したが、この間、遅配した荷物の数は約34万4000個、同月11日までにJPのコールセンタに寄せられた「ゆうパック」関連の問い合わせは1万630件にまで達した。前代未聞とも言える大規模な宅配便の遅配を巡っては、統合時期など既に様々な問題点が指摘されているが、その根底にあるのは、郵便事業会社(JP)のリスクに対する認識の甘さだと言える。

 まず、JPのリスクに対する認識の甘さを表しているのは、遅配発生直後の初動対応だろう。鍋倉眞一社長の会見での発言などによると、「ゆうパック」の遅配が目立ち始めたのは「ペリカン便」統合翌日の7月2日。この時点で荷物の仕分けなどを行う対応拠点70カ所のうち、10カ所で遅配が発生していた。

 本来なら、この時点で何らかの事態収拾策を講じるべきだが、鍋倉社長は翌3日、4日は荷物の減少する土日であったことから、この間に体制を立て直せるレベルと判断したとしている。

 しかし、現場ではJP本体が考えていた以上の混乱が生じていた。データ入力など現場担当者の細かなミスが重なり、作業に遅れをきたしていたのだ。これについて鍋倉社長は、現場担当者が作業に不慣れだったとしているが、問題は事前の準備が万全だったのかだろう。

 JPによると「ペリカン便」統合を受けた研修は統括支店やターミナルなど「ゆうパック」対応拠点の長を対象に4月中旬頃から始め、その後、6月下旬まで現場担当者の研修を実施。担当者にアンケートを行い、「不明な点などがあった場合には、再研修も実施していた」(JP広報)という。だが、結果的に一部の対応拠点でオペレーションが徹底しきれていなかったわけだ。

 2日以降、遅配を起していた拠点は減少したが、遅配自体は週明け5日も続いた。遅配発生当初に現場の状況を正確に把握し、対応策を打てなかったことが問題を長引かせた一因であることは間違いないだろう。

 さらにJPの対外的な遅配の事実公表も7月4日と遅れた。監督官庁の総務省によれば、この間、JPから正式な報告はなく、週明けの5日には、同省にも「消費者から消費者から遅配に関するクレームが数多く寄せられた」(郵政行政部)という。

 こうした状況に行政も動き出し、原口一博総務相は6日、JPの鍋倉社長に対して「郵便事業株式会社法」に基づく報告(遅配の経緯、JPの危機管理体制、遅配公表の時期を決定した経緯、郵便業務への影響)を要請。

 また、宅配便を所管する国土交通省でも、5日にJPから報告を受け、遅配の原因や対策などを報告するよう指示。同省では「利用者に影響が出ており『貨物自動車運送事業法』上問題がある」(貨物課)としており、今後の状況を見た上で改善命令等を出すかを検討する考えだ。

 今回の遅配は通販事業者にも影響が出ており、産直の生鮮品を扱うところでは商品がダメになる事態も発生。JPによれば、一部の荷主通販事業者が他社宅配便に乗り換える動きも出ているという。他の宅配便事業者がサービス品質を競う中で、JPのリスクに対する認識の甘さを露呈した遅配問題は、今後、「ゆうパック」の展開拡大を図る上で足かせとなりそうだ。

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