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「紅麹」の健康被害問題 情報収集体制も見直し、厚労省「小林製薬固有の問題の可能性」

2024年 4月11日 12:00

 政府は、機能性表示食品の健康被害報告の見直しを検討しようとしている。3月29日に行われた関係閣僚会合で、林芳正官房長官が健康被害に対する「情報収集体制」と「国よる関与のあり方」の見直しを指示。消費者庁に機能性表示食品制度の見直しも指示した。5月末をめどに厚生労働省、消費者庁が方向性取りまとめる。「紅麹」の利用範囲が広範に及ぶことから、厚労省では、小林製薬固有の問題として処理する可能性もある。
 




 立憲民主党は4月5日、「機能性表示食品の見直しに関するPT」(消費者問題など内閣部門、厚生労働部門の合同会議)を立ち上げた。座長に同党の大西健介議員、副座長に山井和則議員が就任。衆参両院で7人の議員が参加した。PTには、消費者庁の清水正雄食品表示課長、二階堂孝彦消費者安全課食品安全調整室長、厚労省の野坂佳伸新開発食品保健対策室長も出席した。

 報告体制の見直しに、消費者庁は「現時点で食品表示法改正の検討事実はない」(食品表示企画課)、厚労省は「原因究明をもとに再発防止策として何ができるか検討する」と回答した。PTで大西議員は、「今国会による審議で法改正しないといけない」との決意を示した。

 一方、会合後、厚労省官僚は、「(総点検で)小林製薬の販売している3製品以外問題がないとなれば、これに焦点を絞り原因究明できる」との考えも示した。

 食衛法は、条文に健康被害の報告義務はない。ひもづく省令の中で事業者が保健所に報告するよう求める。ただ、「努力義務」だ。

 食品表示法に基づく機能性表示食品は、届出ガイドラインで保健所や消費者庁に直接、報告するよう求める。重篤度や因果関係、症状等を報告する必要がある。ただ、PTで法律違反かを問われた消費者庁は、「法律事項ではなく、違反ではない」(同)と答えた。

 小林製薬製造の「紅麹」原料をめぐる問題は、政府が3月27日、厚労省、消費者庁、農林水産省、国税庁からなる関係省庁連絡会議を設置。厚労省は、回収命令が出た小林製薬の3製品と同じ原料を使う製品の対応について、原料の卸先・入手先のべ225社に総点検を求めた。「1日あたりの紅麹原料摂取量が同製品と同等量以上の製品」、「過去3年間で医師から製品による健康被害が1件以上報告された製品」を対象に、4月5日までに結果報告を求めている。3月29日には、卸先52社で、3製品と同じ紅麹原料配合量(100ミリグラム)の製品がなかったことを公表している。原因究明は、国立医薬品衛生研究所と、「プベルル酸」を含め、原因となりうる物質を、ロットを限定せず網羅的に検索している。

 消費者庁は、小林製薬に機能性表示食品8製品で、4月5日までに安全性の科学的根拠の再検証結果の報告を求めている。また、届出全製品(約7000件)の届出者約1700社に、4月12日までに、医師から健康被害の報告を受けたか確認・報告を求めた。

 小林製薬の健康被害は、同月4日までに受診者が1120人、入院治療は196件、相談件数はのべ約4万5000件(同社報告、相談件数は3日時点)。

 被害報告の見直しは、食衛法改正があるが、影響は一般食品に広く及ぶ。機能性表示食品制度の届出ガイドラインを改正する方法もある。ただ、消費者庁は、厚労省のように保健所など全国に出先機関を持たない。食品安全行政を厚労省が担うほか、保健所の業務も多岐にわたりハードルがある。

 そもそも、「紅麹」は、機能性表示食品だけに含まれていたものではない。これに絞り規制強化を図る意義も問われることになる。

 厚労省は20年、「いわゆる健康食品」では、製品名や成分名を含む健康被害情報の公表を検討していた。ただ、意見聴取で関係団体等から強い抵抗を受け、見送った経緯がある。

 
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